4話 待ち合わせ
今私は駅のホームにいます。何故って?私だって聞きたい。
今日、まだ遊園地や、飲み会はまだ耐えられますよ。
でもなんで私が苦手とする人と、一緒に待ち合わせの場所まで、行かなければいけないのでしょうか。
あっまぁ多少の関わりで極小ですが、前よりはましになったかもしれないけど……。
大事なことだからもう一度。
極小ですよ!極小!!
うな垂れながら腕時計を見ると、約束の時間まであと5分。
ホームにはある程度人がいるので新宿に向かうのは少々憂鬱だ。
だってこの時間帯は確実に込むことは容易に予測できる。
特に途中駅では路線が繋がっているため、人の乗り降りが激しい所があるし、新宿が最終着駅ってことで巻き込まれることは確実なのだ。
せめて押しつぶされないことを願うのみ。
「そろそろかな……」
辺りを見回し伊達くん的人物を探すと、それらしい人を発見した。
階段から降りてくる青年。見覚えのある黒髪短髪とその高めの身長。
しかしまだこちらに気づいてないのか辺りを見回しているようだ。
今日の格好はラフな感じで決めてきているみたいだ。
伊達くんの格好を具体的言うと、白のTシャツに紺色パーカーを羽織りブラウンのカーゴパンツだろうか。
いまいちファッションに興味ない私には、よく分からんがよく似合ってると思うよ。
なんて少し観察していたら、伊達くんと目が合ってしまった。
するとこっちに来て「よう」という声と共にぶっきらぼうに挨拶する伊達くんの姿だった。
「おはよう」
不自然かもしれないけど、微笑んで答えておいた。
THE・営業スマイルって事で。
喫茶店のときや電話のときと比べるとなんだか違和感を覚える。
(なんか素っ気ない感じだな)
別に構われたい訳じゃないからいいんだけど。
「……山野。なんか普段と違うな」
「そっそうかな」
笑って誤魔化す。
そう珍しくオシャレをしてきた私。
普段はパンツものが多く、まして講義があるときは履いて行かない。
スカートも好きだが自分が履くとなると別だ。
寧ろ友達とかの方が似合っているし、今更スカートを履くってことに抵抗がある。
その私が滅多に履かないスカートを今現在着用しているのだ。
ワンピースだけど。
レースなどのフリフリ系を抑えた袖口と、スカートの裾に花柄の刺繍が施されている白いワンピース。
でも生足は見せない主義なのでレギンスと履き、普段ストレートにしていた髪もポニーテルに結ってきた。
(これで美穂ちゃんウケは間違えない!!)
そう確信して今日家を出てきたのだ。
思わずガッツポーズを作りたくなるほどの完成度。
褒めたいぞ自分などと思っていたら、
「山野。顔変だぞ」
「えっ!?」
ばっと手で顔を覆い隠す。
どうやら緩んだ表情が顔に出ていたらしい。
わぁぁ私、痛い子だ。
ガックシっと落ち込みざる負えなかった。
だが微かだが耳に、
「……そういうのも……な」
「えっ」
そっと言われた言葉は私に届くことはなくて、ただ顔を上げさせた。そのときに急にぎゅっと手を握られて。
「山野。電車が着た。乗ろう」
言われたとたんに駆け込むように電車に飛び込んだ。
手が熱い気がする。伊達くんの体温が高いのか?
伊達くんがなんかさっき言いかけたことが気になったが……。
それよりもいつの間に電車が駅に着ていたのか気付かなかった。
どれほど自分が妄想に浸っていたか。うん、笑えない。
走り出した電車は外の景色を瞬く間に通りすぎていく。
車内はまだわりと空いていたが、座席は空いていない。
新宿まで快速でも10駅以上先。ドア付近は混んでくると思うのでやはり中にいた方が利口だろう。
真ん中に入りつり革を掴もう思ったがまだ手を繋いでるままということに気が付いた。
「……あの伊達くん」
「あっごっごめん」
ぱっと離す手。
伊達くんの顔を見ればほのかに赤くなっているようだ。
「大丈夫だよ」
えへっと笑ってみせかけて、握られていた手をそっと自分の腕を掴んで比べてみたが私の手は平温のようだ。ということはやはり伊達くんが熱かったのか。
(もしかして伊達くん気が動転してかな。なーんてね)
ちらっと覗き見ればまだほのかに赤い頬が目立つ目に映る。
手を繋ぐことがそんなに恥ずかしかったんだろうか?
見てばかりは失礼だから流れる景色に目線をずらしたが沈黙が続く。
きっ気まずいなもうぅ!!
なんか話すにも話題は――――ってないな。
思考を巡らせたがこれっぽっちもない。
だってよく知らないし同じ学科ってだけだもん。
「あの……さっきはその……すまん」
どうしようかっと考えていたら伊達くんが言ってきた。
私は一瞬ぽかんとしてしまったが恐らく手を握ったことだろう。
ばつが悪そうなでも照れも入ってるような困り顔をしている。
なんだか美穂ちゃんが困ったときの顔によく似ていた。
思わず見ていて可愛いかななどと思ってしまいくすっと笑いそうになる。
「もう。気にしてないのに」
そうかっと伊達くんは苦笑をしていた。
「伊達くんって遊園地の絶叫系って平気なの?」
「えっ」
「私、あんまり得意じゃないから。伊達くんはどう?」
「俺はわりと平気かな」
ふっと柔らかい笑顔が目を惹かれた。
なぜか分からないけど。
「平気か!羨ましい~。内臓浮くふわぁって感覚が無理なんだよね」
「そっか。あの感覚は人によるからな」
「そうなんだよ。あれが平気なの私信じられないもん!!」
過去に乗った記憶を辿りながら力説する。
スピードはまだしも、あの回転はアリエナイ。。。
だってあんな高い所から落ちて上がってまた落ちる。
重力に反して内臓が浮くんですよ!!
誰が考えたアクティビティーだーーって叫びたくもなるさ。
すると、隣からくすくすっと笑う声が聞こえてきた。
見ると伊達くんが口元に手を当てて笑っている。
「ちょっと伊達くん今笑うところ違うよ!!」
「あははっだって山野。表情がころころ変わるから」
「そっそんなことないよ!私はいたって普通!」
「そうかな?さっき青くなったと思ったら、握りこぶし作って真っ赤になってたけど」
どう?って言う風に伊達くんの目線が刺さるようだ。
そう目線で訴えられても……。
今更、違うとは答えずらい。確かに思い返してみればやっていたような気もするから。
笑い声がやんだ。やっと収まったのかと、伊達くんの方を向けばまだ笑みは残っていた。
「楽しみだな」
「えっ?」
「遊園地。中学生以来だから」
「意外!高校は行かなかった。マウスランドとか有名でしょ?」
「うちの学校そういうのなかったなぁ。あってもなんか水族館だったし」
そっかなどと相槌を打っていたが、淡々だけど楽しそうに高校の話とか伊達くんは語ってくれた。
私もつい他愛も無い話で夢中になってしまったが。
意外に気兼ねなくなすことが出来たことにちょっと安心した。
途中駅で人の乗り降りも激しくもあったが、予想してたほど、ぎゅうぎゅうというわけでもなく。スペースを保ちながら、無事に新宿に着くことができた。
時刻は9時50分を指している。
「改札だっけ」
「うん」
私は大きく頷いた。
まだ待ち合わせ時間には余裕だ。
だが早く美穂ちゃんに会いたいからさっさと合流場所に足を向ける。
改札口で待ち合わせになっていたので目と鼻の先。
私はるんるん気分で待っていたのに。。。
―――――10分後―――――
何故でしょうか?
一向に現れないのは……。
ここからが泣きたくなる時間の始まりだったかもしれない。