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雷の女の子

掲載日:2025/10/04

初投稿です。よろしくお願いします。

あるところに雷から生まれた女の子がいました。

彼女が笑うとたちまち空には雷が轟き、人々の顔は恐怖に染まりました。

いつの間にか人々は雷の子を敬遠するようになりました。


「どうして…私だけこうなのかな。」



晴れの子が笑うと空はたちまち快晴となり、人々の表情は晴れやかになりました。


雨の子が笑うと雨が降り始め、植物たちの緑は鮮やかに生き生きしていました。


風の子が笑うとそよ風が吹いて、人々の汗を拭いました。




「私だけ…誰のためにもなれない……。」


女の子は笑うことをやめました。

毎秒毎分、無表情でいいました。


雨の子も晴れの子も風の子も、女の子を心配しました。


「大丈夫?」

ーーー大丈夫なように見える?

「前みたく一緒に遊びましょう。」

ーーー楽しんだら…雷を鳴らしてしまうでしょう。

「どうかしたの?」

ーーー言ったところで、私の辛さ理解できないくせに。中途半端に踏み込んでこないでよ。


女の子は…なんて自分は浅ましく、無価値な人間なのだろうと思いました。

彼らの心配の言葉は、彼女にとって重く、苦しいものでした。



迷惑をかけている自分が悔しくて、居た堪れなくて、とうとう女の子はその土地から逃げ出しました。




人間のいない、山の上に来ました。

ここなら、誰のことも気にしなくていい。自分の生きたいように生きられる。

女の子は、心から喜び、笑いました。

心の中の針穴のような虚しさを覆い被さるように笑い声を上げました。


「やった!やったわ!」


空には黒くて厚い雲。ゴロゴロピカっ!


その時です。山の下の方から、ドゴン!という音と悲鳴が聞こえてきました。

山を駆け降りると、大きな岩が斜面を転げ落ちているではありませんか。

そのすぐ下には、荷車を引くの父子の姿がありました。


「危ない!」


女の子が叫んだ途端、転げ落ちる岩めがけて、稲妻が走りました。

お月様がいくつも入ってしまいそうなほど大きな岩が、あっという間に粉々に崩れていきました。



「残念。ここにも、人間がいたのね。」


女の子は、高い山から立ち去りました。



女の子は長い年月、たくさんの土地を巡りました。

しかし、どの土地にも人間が住み着いていて、女の子が笑顔になれる場所は見つかりません。


ある土地につきました。

そこは、どんよりとした土地でした。

そこは、どんな場所よりも、人間の数が少ない土地でした。


「…ねえ、どうしてこんなに人が少ないの?」


ずっと人間を避けてきた女の子が気になって村人に尋ねました。


「皆、死んでしまったよ。

もう長いこと、不作でね。きっとこの場所に住む人間は、もうすぐいなくなるだろう。」


女の子は、自分の求めていたものが近くにあると気づきました。

やっと救われると安堵した反面、胸少しだけ、チクリとしました。


「ここに雨は降らないの?」


「降るよ。」


「お日さまは?」


「太陽も雨も風もある。ここは嵐もないほど穏やかな場所さ。

でもなぜか…小麦も芋も野菜も全く育たなくなった。昔はたくさん実っていたのに。

この土地は、きっと神様から見放されたんだ。」



村人の話を聞いた女の子はこの地に留まることにしました。


「こんにちは。お姉さん、どこからきたの?」


村の男の子が女の子に聞きました。


「こんにちは。ずっと、ずっと、遠いところよ。」


「どのくらい遠いいの?」


「ずーっと、ずーっと遠い場所。」


「あの山よりも?」


「あの山よりもずーっとずーっと遠い場所。」


「あの雲よりも?」


「あの雲よりもずーっとずーっと遠い場所。」


「ふうん。その遠いところに友達はいっぱいいるの?」


「いっぱいかどうかはわからないけど…人はたくさんいたよ。」


「そっかあ。僕、誰も遊ぶ人がいなくなっちゃって寂しいんだ。

お姉さん、一緒に遊ぼうよ。僕のお家にきて!」


女の子は、断ろうとしましたが、男の子について行くことにしました。

寂しそうな人間の男の子がなんだか自分と似ているように見えたのです。


男の子の家に入ると、ベットにはお爺さんが横になっていました。


「ただいま、おじいちゃん。お姉さんがね、僕と一緒に遊んでくれるって!」


お爺さんは女の子を見た途端、目からポロポロと雨が出てきました。


「ああ、ああ。

私は、小さい頃、あなた様に助けていただきました。覚えていませんか。父と荷運びをしていた時、山の上から転がり落ちる岩を、あなた様がイカヅチで助けてくださった。

まさかまた出会い、感謝を述べられる機会ができるとは…。」


お爺さんは、女の子の両手をしっかりと包みながら言いました。


「あの時、命を助けていただいたおかげで、私は妻と出会い、子どもを儲け、こうして孫の顔まで見られるようになりました。本当に、ありがとうございました。あなた様と出会えて、本当によかった。」


「私は、感謝されるほど価値のある人間ではありません。

なんの取り柄もない雷の子です。たくさん人を怖がらせてきました。

他の天気の子と違って誰かを笑顔にしたこともありません。」


「感謝に価値など関係ありません。

私たち親子が、あなた様に救われ、恩義を感じている。これは事実です。」


お爺さんは男の子の肩に手をおいて続けました。

「この子は親を亡くしました。今も不作で十分な食事はさせてあげられません。悲観してもおかしくないこの世の中ですが、この子はよく笑うのです。贔屓目だとしても、私は、この子の笑顔が可愛くて可愛くてたまらないのです。

あなた様が繋いでくれた。この子の笑顔を作ったのは、あなた様でもあるのです。」


女の子の心の中がじんわりと温かくなりました。

じんわりとした温かいものは、女の子の心の穴を埋めるには十分なものでした。


女の子は、男の子と楽しく遊びました。

お絵描きや鬼ごっこ、かくれんぼにごっこ遊び。

2人は大声で笑い、その様子をお爺さんは微笑ましく、見守っていました。


雲の中かからゴロゴロピカっ!と雷の足音が聞こえ、外には稲妻が走るようになりました。


しばらくした後、雨が降り始めました。

雨の子が迎えにきたのです。


「やっと見つけた。

雷があなたの居場所を教えてくれたのよ。」


後に続いて、晴れの子、風の子もきました。


雷の子は、初めて心から笑って言いました。

「ごめんね。

みんな、心配してくれてありがとう。」



雷が大きく轟いたその年、この土地は今までにないほど豊作に実りましたとさ。


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