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渇きの獄門
お父さんや、お母さんや、喉も渇きや声も枯れ
吐く血も無ければ、啜る血も無き
わたくし徒花、奈落へ沈む
いっそ狂って消えてしまえ、ならばどれほど幸せか
焦がれたお水は、黒く濁り、中から鬼がにたりと微笑む
思いは拒むも、躰は動けし、渇きを満たせや、喉鳴らす
恋し妹、顔を歪ませ、劫火の如く、躰紅き
哭けや、お父さん、泣けや、お母さん
渇き潤えば、腹が鳴る、飢えを満たせと鬼は微笑む
一寸先の紅き芍薬、めでたき満開、てしがなてしがな
望むがままに、芍薬喰らえ、甘くも苦くも心地良き
われらは徒花、奈落へ沈む
紫水 世胤「無残歌」より