煎茶教室
おはこんばんにちは。
幽幻 桜です。
今回は別の小説投稿サイトのコンテストに応募した作品を、小説家になろう様でも投稿したく、投稿しました。
楽しんでいって下されば幸いです。
こんにちは、皆様。
本日は私の煎茶教室へお越し頂き誠にありがとうございます。
煎茶とは、緑茶の一つ。お茶で御座います。
お茶の香り。それは、和の香りにて御座います。
私、和の文化やお茶の香りが大好きで……この好き、をお仕事にするべく沢山学びました。
今回はその学んだことを皆様に共有出来たら嬉しい、という心持ちで、頑張らせて頂きますね。
前置きが長くなってしまいましたが、まずは……お茶の淹れ方から、お教えしたいと思う所存で御座います。
まずは、温かいお湯と急須、湯飲み……こちらはお好きにマグカップでも。を用意致します。
そしたら、急須に茶葉を入れましょう。
大体……そうですね。四グラム、ティースプーン二杯程度で御座いますね。
次に、お湯を一度、湯飲みに移しましょう。
そうしましたら、次に、湯冷まししたお湯を急須に注ぎます。浸出時間は約三十秒。
最後に、湯飲みに均等に注ぎ、最後の一滴まで絞りきれば……。
完成です。
皆様、大丈夫で御座いましょうか?
あまり難しくないように説明したつもりではありますが……大丈夫? それは良かったです。
では、頂きましょう。美味しいお茶菓子も用意致しました。御口に合いましたら幸いです。
「いただきます」
……。
はぁ。やはり、お茶の香り、味は絶品で御座いますね。この香りは、私の思い出の香りなのですよ。
あぁ、いえ、なんでもございません。
お茶やお菓子、美味しいでしょうか?
美味しい? ふふ、とても嬉しいです。
私の知識が皆様の種になること、煎茶教室を任された甲斐がありました。
ささ、皆様。どうぞどうぞ。
ゆっくり、この時間をお楽しみ下さいませね?
「ごちそうさまでした」
ふぅ……美味しゅう御座いました。
それでは、煎茶教室もそろそろお開きの時間にて御座います。
最後に何かご質問などあれば……えぇ、はい、どうぞ。
……先程の、思い出の香りというのが知りたい?
あぁ、全然お気になさらないで下さいませ……!
大丈夫です、お答えしますよ。
あれは……
あれは、私が学生の頃。
当時の学校には珍しく、煎茶部、というのがあったのですよ。
私は昔から、日本の文化が大好きで。部活は茶道部に入ろうと考えていたのですよ。
だから、本当は茶道部に入りたかったのですが……どうやら私が入学した時に、茶道部が煎茶部に変わってしまったみたいで。
でも当時の私に、茶道と煎茶の違いが判らず……煎茶部でも変わらない、等と考えて入部したのですよ。
あぁ今は! そんなこと、微塵も考えておりませんが……!
子供の甘い考えと大目に見て下さいまし……!
こほん。
さて、私は煎茶部に入部致しました。
その時に、もう一人だけ、新入生がいたのですよ。
端正な顔つきをした、男の子でした。
煎茶部は部員が少なく、その男の子と仲良くなるのに、時間は掛かりませんでした。
彼とは趣味が合い……よくペアになって作業をすることが多かったのです。
部活中の、当たり前の作業。
そんな神聖な行為中であるにも関わらず……私は、徐々に彼に惹かれていくのを感じてしまいました。
いけないこと、いけないことだと判っていつつ、私の心は、止まってはくれませんでした。
そんなある時、私はその人に問われたのです。
『どうして煎茶部に入ったの?』と。
もうその頃には、抹茶と煎茶の違いも判っておりましたし、煎茶の魅力も判っていました。だから私は包み隠さず、本当の事を話しました。
日本の文化が好きなこと、本当は茶道部に入りたかった事、抹茶と煎茶の違いを判っていなかった事……。
その人は、本当に煎茶がお好きな方でした。お家の方が、煎茶の名家だそうで。
だから、本当の事を言って、失望されてしまうかしら、嫌われてしまうかしら……なんてことまで考えてしまいました。
けれど、彼は笑って、
『最初はそれでいいと思うよ。だって君は今、煎茶が好きだろう?』と言って下さったのです。
……その時に彼は、はい、と言って、私に、一杯の、お茶を出してくれました。
それ以降、私の思い出の中に、彼の言葉と、お茶の香りが、残ったのです――――……。
以上が、お茶の香りが思い出の香りになった経緯です。
長々とお付き合い、有難う御座いました。
……その彼とはどうなったか、ですか?
ふふ、恋のお話は楽しいものですものね。
私は彼とお付き合いを始め、彼の家に嫁ぎ、こうして、煎茶教室を任せられるまでになりましたよ。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
作品のように、楽しい一時は過ごして頂けたでしょうか?
そうでしたら何よりも嬉しく思います。
ありがとうございました。
幽幻 桜