転生と出会い
俺はどこにでもいるゲーム大好きな高校生。最近はこの、「ドキラキッ☆マジックスクール!」。
通称ドキマジにハマっている。俺の推しは、サクラちゃん!……いや、この子を攻略するんじゃなくて、この子を操作して男を攻略するんだけど……
まず、この子のビジュがいい!!まじで心臓を撃ち抜かれたね。うん。
次に性格!!いや俺が操作するじゃんって思うじゃん?でも選択肢からして性格がいい!!どの選択肢もどの男の攻略をするかの分岐になるだけで、嫌になることは一切言ってない!!
最後に唯一の光魔法の使い手ってこと!!光魔法ってなんかあったかそうだし、聖女のサクラちゃんにピッタリだよね!!
ってなわけで、最近はサクラちゃんの幸せを願って、俺が認めた男とくっつけさせようと奮闘している。
けど……
「あーもう!まーた邪魔されたー!」
そう、中々うまくいかない。なぜかというと、このゲームの悪役令嬢、イリス•ツァオベラーが、主人公と攻略対象の恋路を邪魔してくるから。
「あーイラついてきた!……あっ!今日ドキマジのグッズ販売日じゃん!買いに行かなきゃ!」
そんなわけで、絶賛信号待ちをしている。
あー、今日もあちぃな……
そんなことを考えていると、目の前にある光景が飛び込んできた。
子供がボールを追いかけて道路に飛び出そうとしている。車も気付いてないようだ。
それを認識した時、咄嗟に体が動いた。
「危ない!!!」
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俺はどうなったんだ?確か車に撥ねられて……
「んー?」
知らない天井だ。周りを見渡してみると凄く豪華な室内。
「なんだここ……えっ、今の俺の声!?」
自分?の声が高くてびっくりする。
何かがおかしい。こんな病院ないよな……?
ふと、横をみると、さっきは気が付かなかったが鏡がある。そして、その中には見覚えのある男が写っていた。
こいつは、ドキマジの攻略対象でこの国の第2王子である、アーツ•マジック。
俺が手を挙げると、鏡の中のアーツも手を挙げる。
俺が足を上げると、鏡の中のアーツも足を上げる。
……いろいろ試して、俺は悟った。これ、もしかしてドキマジの世界に転生しているのでは?と。
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そこからは超!大変だった!まず王子としてのマナーなどなど、様々なことを叩き込まれた。俺マナーとか知らない庶民だったもんで……覚えが悪すぎて頭を心配された。
それから年月が過ぎ、なんとか王子としての振る舞いを身につけることができた俺は、もうすぐドキマジの舞台であるマジックスクールに行くことになる。
いやほんとに、超楽しみだ。この目で実際にサクラちゃんをみることができるなんて……!
そんな訳で、俺は今か今かとマジックスクールへの入学を楽しみにしていた。
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そして今日。ついにマジックスクールに入学だ!ヒャッハー!!
と、思っていたのも束の間。俺はこの国の第2王子のため、生徒たちの前で演説をしなければならない。
ハードルがたけぇよ!!緊張しまくりだよぉ!!
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なんだかんだありつつも無事演説を終えた俺は、今度は生徒たちの相手だ。やっぱ国の王子となると多くの人が繋がりを持とうと寄ってくる。
その中にサクラちゃんはいなかった。やっぱり俺に迷惑がかかると思ったのかもしれない。なんて優しい子なんだろう!!
そんなことを考えながら、その場から隙を見て逃げ出した。
ベンチにでも座って休もうと、中庭の目立たない場所にあるベンチに近づく。
そこで俺は1人、人がいることに気がついた。
うわー、人いるじゃん。場所変えよ。
そう思った後でよく見てみると、あれ?見覚えがある……
あの髪、憎き宿敵の髪だ。サクラちゃんの恋路を邪魔した、アイツのだ。
少し近づいてみる。こいつは寝ているみたいだ。
やっぱり顔だけならとてもかわいい。人形みたいだ。
……寝てるなら、ベンチ座っても気づかれないかな……?
そう考えていた時、人の気配を感じたのか。起きた宿敵と、目が合った。
「えっ……アーツ王子!!な、なんでこんなとこに……!」
ん?なんか、思ってたキャラ像と違う?
「あっ、私イリス•ツァオベラーと申しましゅ!!」
……噛んだ。
「ぅぅ……」
イリスは頬を赤らめている。
……正直、かわいいと思ってしまった。萌えた。あんなに嫌いだったのに。……いやいや、俺の推しはサクラちゃんだけだ!
とりあえず、幼少から鍛えた王子様スマイルでこの場を乗り切ろう。
「申し遅れました。僕はアーツ•マジックです。見たところ新入生の方ですかね。これからよろしくお願いします。」
キラキラ……
「はわ……」
どうだ!アーツは顔がいい!この王子様スマイルに勝てるものなどいないのだ!
「えっと、人が多くて気疲れしてしまって……少しこちらで休ませていただいてもよろしいですか?」
「あっ、ひゃい!だ、大丈夫です!私はもう行きます!すみません!」
あっ……別にいてもよかったんだけどな。
まぁ、いいか。少し休んだら戻ろ。