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第七話 遊び(ある精霊視点)


 デビュタントが行われた日、デビュタントの会場にいた風の上位精霊である私は、未だ興奮冷めやらぬといった様子の人間たちを呆れて見ていた。


 あれが我が王の愛し子様だって?なんて馬鹿馬鹿しい。本物の愛し子様は、あれとは似ても似つかないというのに。

 

 一度だけ、我が王の愛し子様を遠くから拝見したことがあったが、目が眩むほどの輝きを纏っていらっしゃった。


 あの魂の輝きこそが我が王の愛し子様の証なのだ。


 人間だってそこまで愚かではないだろう。あれを偽者だとわかっていながら崇めているフリをしているのではないか?つまり、これは人間のお遊びなのだ。


 本物の愛し子様は、しっかりと四大精霊様が守っていらっしゃるし、愛し子様もまずは親に信じてもらいたいというお考えで、いきなり大々的に認知されることは望んでいらっしゃらないらしい。


 となると、これはその来るべき日に向けた予行練習みたいなものなのかもしれないな。


 それかあまりにも暇な人間たちが、国を挙げて全力ごっこ遊びをしているだけなのかもしれない。


 だとしたら、遊びに目くじらを立てて指摘をするのも野暮というものだ。


「その者は我が王の愛し子様ではない」


 そう私が指摘をすれば。


「そんなことわかっているよ。盛り下がること言うなよ」


 なんて私の契約者であるアランに言われてしまうかもしれない。私はチラッとアランを見る。


 アランは狂喜乱舞といった様子で涙を流しながら拍手をしていた。


 さすが我が契約者アラン。大人になっても子供の心を忘れず全力で遊ぶ姿、素晴らしいではないか。


 そう思った私は、アランの涙をそっと指で拭ってやる。するとアランはこちらを見てコクリと頷いた。


 わかっているよ、アラン。大人の全力の遊びに水を差すようなことは言わないよ。


 他の精霊たちの様子を窺うと、みな私と同じように見守ることにしたようだ。


 私からすれば馬鹿馬鹿しい遊びではあるが、時にはこんな遊びをしたくなるときもあるんだろう。


 アランと契約して早20年。私も少しは人間の気持ちを理解できるようになってきたようだ。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何とまあな悲喜劇面白い。 まさか人間がそんな阿保とまで精霊の方々、思って無かったのね。
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