プロローグ
「我が愛し子を直ちに保護せよ」
フェアリアル王国の精霊王を祀る神殿に、突如精霊王からのお告げがもたらされ、その場に居合わせた大司教達が困惑する日から遡ること約10年前。
あの頃までの私は間違いなくお父様とお母様に愛されていた。そう、6歳になった私が、何もわからないまま四大精霊と契約を結ぶまでは……。
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フェアリアル王国は精霊の力を借りながら発展してきた国である。人々は貴族も平民もみな例外なく精霊と契約し、その力を借りながら日々の生活を送っていた。
通常、契約を交わすことができる精霊は1人につき1人だが、例外がいる。それが"精霊王の愛し子"だ。
精霊王の愛し子だけはいくつもの契約を精霊と結ぶことができる。それゆえに愛し子は1人で強大な力を持つことになるため、その力が悪用されることのないように必ず王族と婚姻する決まりがあった。
精霊王の愛し子を見分ける方法は精霊と複数契約ができることと精霊の可視化だ。愛し子以外の者は契約した精霊を自分で見ることは出来ても他者に見える状態、つまり可視化することができない。
最後にフェアリアル王国で精霊王の愛し子が現れてから約250年ぶりとなる精霊王の愛し子として、フィリスは国中から大切にされるはずだった。
それがまさかあんな事態になってしまうとは……。
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