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それからしばらくの間、蒼真は煌朧の櫂の見習い修行を余儀なくされた。
龍一をはじめとする師匠たちから、霊的な力の掌握法や異能の基礎を叩き込まれた。合わせて、体術や武器の扱いも学んでいった。
「うわっ!」
「かまえが緩んでいる!気を散らすな!」
龍一の手錘の叩きつける音が空間を割り、蒼真の打ち直しの構えを崩した。
まだまだ気の散れる修行の日々が続く。
一方で、蔵書の山と向き合う勉強の時間も怠りなくこなさなければならなかった。
「異界とは一体どのようなものなのか」
「神々や精霊の世界と呼ばれる所じゃ。そこには色々な生命体が棲んでおる」
「生命体?」
「ああ、人間の認識を遥かに超えた存在じゃ」
「...わかりました」
このように、異界や異能に関わる知識を徹底的に学んでいく日々だった。
修練を重ねるごとに、蒼真の霊的感応力は確実に研ぎ澄まされていった。
「うむ、悪くない成果じゃ」
「でも、まだ及ばない所がありますね」
「その通りじゃ。だが心配すな、徐々にそなたの力は開眼していく」
「はい、分かりました」
半年が経過した頃、ついに龍一から蒼真に試練が与えられた。
それは、ひとりでに異界への入り口を見つけ、そこに足を踏み入れるというものだった。
「そこからは、すべてがおまえ次第じゃ。あの世界での遭遇をくぐり抜けるのじゃ」
「了解しました。この試練に私はしっかりと取り組みます」
蒼真は意を決し、全身全霊を傾ける覚悟を述べた。
そして龍一から大切な言葉をもらう。
「心せよ。あちらの世界は現実とは次元の異なる場所じゃ。物理法則もおかしなものになっている可能性もある」
「............」
「だが恐れるな。きっと導きの糸は見えぬ所にあるはずじゃ」
その言葉を胸に、蒼真は遂に異界への旅立ちを開始したのだった。
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