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閑話 勇者災害

 ☆魔王軍が精霊国を掌握してから数年後のとある人族の王国


「はあ、はあ、はあ、はあ」


「姫様、ここは、私とケリーが引き止めます。どうか、お逃げ下さい」

「姫様、合流地点まで、後、一キロです。この先をずっと行けば、本物の勇者と会えます」


「無理、もう走れません」


 と正直に言う。

 護衛騎士と戦闘メイドは、王女である私でも遠慮無く走らせる。

 淑女教育に走る項目は無い。


 護衛騎士団を殺され、馬車を破壊され、護衛騎士とメイドたちはものの数分で殺された。

 臣下が己の命を対価にして、時間を稼いでくれた。

 なのに、私は肉体的疲労に精神が勝てない。


「う・・・あれが、来た!」


「よっと、お姫様、どこかな~【天翔る階段!】」

 金髪の10代半ばの青年は空に向かって、ジャンプすると、空中に留まる。

 そして、階段を上るように空を上がっていく。


「ふ~んと便利だな。お姫様がいないと、ゲーム始まらないよ。ドラゴンか?魔王を退治して、お姫様と婚約、結婚と」


「お、いた。草むらに隠れていたな。悪い臣下に誘拐された姫を助けた俺。まさに、勇者じゃね?

 お~い、お姫様、今助けにいくよ!」


「ヒィ、見つかったわ」


「やむを得ない。エルザ、ここで私が引き止めるから、姫様を負ぶって、逃げてくれ」

「・・わかったわ。姫様、さあ、私の背中に・・」


 ヒューーーーーーー


 かろうじて、視認できる火を吐きながら飛ぶ何かが迫ってくる。


「あ、何だ、あれ」


 スドーーーーーーン!


 爆音が響き、空に留まっていた彼は四散した。


「・・・うわ、対ドラゴンの良い訓練になったわね。お高いから滅多に訓練できないわ。この感覚を忘れてはダメよ。もう、覚えたわね。セトル班長」


「はい、戦闘団長殿」


 アズサ率いる魔王軍人族部隊が、クズ勇者討伐で、国境を越えやって来ていた。



 ☆

「勇者様、本物の勇者様だわ!」

「ご助力かたじけない」

「有難うございます」


「・・・いや、私ら魔王軍だよ」


「ご冗談を・・なるほど、似非勇者を討伐するから、魔王軍に成りすまして、おびき寄せる作戦ですな。このロバート、感服しました」


「いや・・」

 ・・・ダメだ。人の話を聞かないタイプだ。


 ・・・魔族と人族の国境にある一国に、勇者災害が起きたとの連絡が来た。

 いわゆる、クズ勇者だ。突発的に世界転移をしたらしい。クズ勇者を倒したら、魔王軍傘下にしていいと女神圏の聖王国と取り決めをした。


 世知辛いが、自国を守れない国は、他国からどのように扱われても文句が言えないのが、この世界の慣わしだ。


 情報は聞き出さなければならない。


「はい、奴らは、突然、この国の始祖が生まれた場所、はじまりの草原に、現われました」


 ☆

「いててて、山でバーベキューしていたら、土砂崩れが起きたぜ、あの爺さん、もっと、俺らを注意しろよ。損害賠償ってやつできるんじゃね?」

「ウケる~、もしかして、転生した系?」

「おい、守、お前、ゲーム詳しいだろう?」

「オープンと叫べば・・・お、何か出た!」


 ・・・

「守が勇者で、俺が、賢者!で、静飛亜セピアが聖女?ギャハハハ、何の冗談だ!」

「ウケる~」


「城に行って、王様に会いましょう。そこで、魔王討伐の命令をもらって、王女様と結婚する流れです」

「俺は静飛亜セピア一筋だからな。守、お前、姫様で童貞すてればいいんじゃねえ?」

「やだ、飛馬ペガサス、ウケる~」


 ・・・


 3人が城に現われ、まず止めた門番を殺し、止める騎士たちを次々に殺し、私の父上に会うと強行突破しました。

 止められませんでした。


 そこで、父上は勇者モドキを客人として迎える作戦を立てました。


「・・異世界からの友人よ。良く来た。何が目的だ」

「あ、そういうの良いので、サクッと魔王討伐の依頼と報酬の話してよ」


「今、準備中だ。しばらく、城に逗留されよ」



 ・・・あれ、おかしい。

「ねえ。寝てるときとかに、襲えば良かったのではありませんか?」


「ご冗談を、勇者様ならご存じだと思いますが、勇者は傷が早く治る性質があります。夜間に一回試みましたが、暗殺者は全滅しました」


 その後、ペガサスが、マモルの指導で、夜は結界をはることになります。

「魔王軍の刺客がこの城まで現われるなんて、世も末じゃねえ」

飛馬ペガサス先輩、やつら人間でしたよ。宰相が仕組んだワナだそうですよ。だから、サクッと殺しておきました」

「ウケる~」


「危ないから、このステータスのここをやれば、結界が出来ますね」

「お、じゃあ、守と一緒の部屋か?エッチは見てみないフリをしろよ。ギャハハハーーー」

「ウケる~早くお姫様とやっちゃいなよ。4人でこの部屋にすめばいい」


「毒も・・・ダメでした。やつら毒無効のスキルがあるようで」


 ・・・


「飯マズゥ~もっと、胡椒を寄越せよ」

「鶏肉しかないの?ウケる~~」


 ・・・我国の最高の料理でもてなしても不満をいいます。1グラム銀貨数枚の胡椒を沢山使い。冬期用の豚を潰しても不満は止まりません。

 農作業用の牛を潰せとまで言い出します。

 マモルが暴走しだします。


「姫様、結婚はいつする?」


「ヒィ」


「これ、姫との婚約は・・・おい、おいな」

「早く、パーティーメンバーを揃えてよね。魔王討伐の旅にでてやるから、王様、仕事遅いっていわれない?」


「おう、マモル、俺と静飛亜セピアは城で、もう少し面倒をみてもらうわ」

「ウケる~魔王討伐頑張ってね」

「毎晩、ギシギシアンアンやられたら、たまりませんよ」




「マモルというクズ勇者が、姫に付きまとい。聖王国に逃げてもらおうとしたのです」


 ・・・


「そう、わかった。なら、簡単ね。あれを召喚します。施設班はドズル班員ね。出番よ。エミリーはドローンで偵察、操縦は覚えたわね」


「「はい!」」



「お姫様は役割があります。国を救う重大な任務ですよ」


 ☆その日の夕方


「勇者様がた、お願いがございます・・・」


「お、守はどうした。いねえんだけど」

「お姫様、やっちゃった?」


「・・・守様は、どこかの村娘さんを追いかけていきました」


「お、じゃあ今晩卒業だな」

「ウケる~~~」


「それで、城門の前に、不思議な箱があります。危険そうなので、そのままにしておりますわ。

 我国の文字ではないのですが・・・書き写しておきました。

『GS5』と『コスメセット』と書いてある張り紙が付けられている木箱です」


「何?誰も触らせるなよ。あれメルンドで、売れるんだよな」

「お姫様~ウケる。行くからそのままにしておきなよ」


 城門前広場には、

 木箱が置かれており。そこには、日本語の張り紙があった。ドラゴン宅急便、GS5とコスメセット入りと書かれていた。


「何だよ。置配かよ」

飛馬ペガサスウケる~」


 二人が箱を手にした途端。


 ドカーーーーーーーーーン


 と爆裂し、二人は肉片と化した。

 ブービートラップ。箱を動かしたら起爆するようにしていた。


「えっ」

 箱より300メートル離れた場所に狙撃で潜んでいたアズサは自分が立てた作戦ながら、戸惑いを隠せない。

 おびき寄せれば良い。箱を動かしたらめっけものと思う程度だった。

 本命は各所に配置した狙撃者による交差射撃による殺害。



 ☆国境付近


「それで、魔道記録水晶で彼らの戦いは撮れなかったと」

「聖女様、申訳ございません。まさか、初日で退治されるとは思いませんでした」

「そ、ご苦労様でした。下がって宜しいですわ」


 ・・・国一つ、魔族に引き渡して、成果なしとは。


 人族部隊の長は、そうとうの手練れね。


 聖王国はクズ勇者討伐軍、聖騎士500名と、魔導師100人、通常軍一万を派遣していたけどもね。


 ドンドンドン!

 太鼓の音と共に魔王軍が視界に現われた。

 魔王が黒い翼を出し、ひとっ飛びで、聖女の前に降り立つ。


「よぉ、聖女ちゃん。うちのお姫様アズサがクズ勇者を討伐したぜ。軍を引けや」


 ・・・『お姫様』隊長は、やはり、女性なのね。


「フフフフ、アキラ君、わかったわ。もし、失敗したら、私が倒そうと思ったのだけどもね。無用のようね」


「ふん。どうせ、偵察をしていたのだろ?」


「皆さん。約定通り、軍を引きますわ」


「おい、待て、これ、お姫様からだ」


 魔王アキラは、今作戦のために、アズサが召喚した化粧品を渡す。


「!!これは、ドルンホランの無料お試しセット!何故、この世界で!」


 ・・・しかも、お肌が荒れる年齢層のものじゃない。アキラめ~


「いらないのか?じゃあ、ダークエルフちゃんに渡すから返してくれよ」


「・・いらないとは言ってないのだからね!フン」


 この日、聖王国の聖女は、魔族領と交易できないか真剣に考えることになる。



 魔族領


 結局、あの国はイワンさんに任せることにした。

 いくら、言っても、私らを魔王軍だとは思わない。

 魔王が城に現われたが、


『な、なんと、魔王を従えている。あなたこそ真の勇者様だ!』

『ハハーーーー』


 となった。

 魔王アキラさんも乗り気で、

「姫勇者様!1日で討伐お疲れ様です!」

 と任侠映画みたいに挨拶をする。


 このノリはわからない。

 この時、魔王アキラは、アズサを次期魔王にしようと決意した。

 


 ブロロロロロ~

 発電機の音が魔王城の謁見部屋で響いている。


「魔王アキラさん。ゲームは1日二時間って約束しましたよね」

「え~、今、骸骨博士と一緒にGS5のゲームをやっている。だから二人分で四時間だよ」


 ブチン!

 とコードを抜いた。


「ああ~セーブしてねえ。お前は母ちゃんかよ!」

「あの、後生じゃ、もう少しお願いします」


「後生って、骸骨博士さんは千年以上生きているよね!」

 何故に、死霊使いと、ゾンビを倒すゲームをするの?


 召喚したゲームと、化粧品はもったいないから、箱には入れなかった。

 まさか、魔王さんがゲームに目覚めるとは厄介だ。


 結局、休みの日はオールOKとの約束が魔王と為された。






最後までお読み頂き有難うございました。

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