完結編
「魔王軍じゃないのか?使役獣が長だと」
はい、その貴族、殺して、魔王軍商売、舐められたら終わりだよ。
パン!
「ギャアアアアアアア」
あれ、こちら側に来ようとする元クラスメイトがいる。
壇上に上がろとしてくる。
「ブシシシ、それがしは錬金術士でござる。姫、お役に立てるでござる」
あ、山根。勘違いしている。はい、蹴っ飛ばして
ドン!
「ギャアアアアア、イタイでござる!」
蹴っ飛ばされて山根は、降伏側の列に転げ落ちた。
その中には、城に残った勇者たちもいた。
クラスメイトは欺されたと言ってもあちら側だ。降伏勧告を受け入れた者もいるが、扱いは捕虜だ。
この区別はしっかりつけなければならない。
ああ、足下には裸の王がいる。シュールな光景。
まあ、適当に牢に入れて、人選ね。といっても、ほとんど処刑しなくてはならない。
私は死霊部隊の骸骨博士さんにお願いして、貴族とクラスメイトを牢にいれた。
王は裸のままだ。適当に理由を付けて、処刑しよう。
悲しいけども、これは異世界の戦争なのね。
イワンさんみたいに、善良な王ならば、そのまま間接統治も出来ただろう。
そっちの方が、お得だ。
「ヒィ、許して、私も父上に欺されたの」
「う~む。ライラ、貴方は使えるわね」
私は金貨の入った箱を、ライラに見せた。この国の悪貨ではない。ドワーフ工房お墨付きの女神圏の金貨だ。
「ねえ。ライラ、貴方のことは買っているの。貴方を王にして、魔王軍の物資供給国にするの。協力してくれる?」
「ええ、勿論ですとも、16・・アズサ様、期待に応えてみせますわ。さあ、私の縄をほどいていただけませんか?」
「ええ、その前にお聞きしたいことがありますの。貴方に間接統治してもらいたいけども、貴方に反抗する者はいますか?魔王軍に反旗を翻されても困りますからね」
「はい!前の王族のアリスが、小癪にも一部、民衆の支持があります。あの顔に欺されている村民たちです。是非、アズサ様の異世界の武器で殺して下さいませ!
魔王様の統治を万全にしてみせますわ!」
私は縄をほどき、ライラの行動をそのままにした。
「ああ、こんなに光輝く金貨・・」
ライラは醜い笑顔で、箱の中の金貨を残った左手で掴もうとしたので、思いっきり蓋をしめた。
「ギャアアアアアア、何をなさるんですか?」
「あれ、私、あげるとは言ってないよ。ただ、置いて見せただけね。やっぱり、魔王軍のお金に手をつける人はいらないわ。死刑ね」
「ヒィ、嘘つき!」
・・・ああ、嘘つきに嘘つきと言われるとは、父が聞いたら何ていうのだろう。
アリスっていうのね。
私は前の王族の子孫、アリスを探した。
魔王軍が来ると、大騒ぎになるから、人族部隊だけで、アリスの村に向かったが
「北部の寒村にいると、聞いたけど、ここは、ミーシャを見ても、珍しいと思うが、差別的な目でみないわね」
「あっ」
一目でアリスがわかった。
村人の先頭にたって、降伏を表わす白い服を着て、人がすっぽり入る穴の前にいる。
私を殺してこの穴に入れなさいという一軍の将がする降伏の慣習だ。
「全責任は私にあり・・ます。私を・・殺して、村人に・・酷い事をしない・・で」
「「「グスン、グスン、お嬢様!」」」
ああ、お涙頂戴物ね。
「あい、わかった。この村は魔王軍が接収する。契約だ。村人は殺さない。今まで通り過ごさせる。その代り、お前を殺す」
「勿論ですとも!」
顔がパッと明るくなった。
甘い。甘い。私があんたを殺した後、約束を反故にする可能性を全く考えていない。
私は刀を借りて、正座したアリスの後ろに立って、刀を抜いた。
彼女は、少し震えている。
私は、彼女の腕を少し斬った。
グサッ!
「ウグッ・・」
命乞いをしないわね。
「エミリー、この子の治療をしてあげて、アリス、命を助けたのだから、こっちの言うことを聞いてもらうわよ」
「はい、戦闘団長殿!」
「え、私は何をすればいいのですか?」
・・・私は、このアリスを精霊国の女王にした。
魔王軍に食料や生活物資の供給は命ずるが、それだけだ。
後は自治に任す。
そして、肝心なことを聞く。
「元の世界に戻れる方法・・・ございません。あちらの世界で異世界召喚の術をすれば可能かもしれませんけど・・」
「そ・・」
この世界に来て、初めて絶望した。
さて、最後に残ったのは不良債権の元クラスメイトたち。
クラスメイトを買取った貴族は殺し。
連れ戻した。
やっぱり、養子の約束を反故にしたことは許せない気持ちからか、それとも情かはわからない。
全員で29名、山根は降伏したが素行不良で死刑。
女子が山根に悲惨な目に遭わされていた。
私はクラスメイトを6名殺した事になる。
もう帰れない以上、振り向かないことに決めた。
「佐々木、聞いてくれ、俺たちは欺された。人族部隊に参加したい。俺たちも銃を持ちたい!」
お、熱血の健太君。君に言われたことは忘れないよ。
『佐々木、それ、なくねえ。お姫様困っているよ。民を見殺しにするのかよ?』
「そう、私は欺さないよ
貴方たちには、三つの選択肢があります。
1 精霊国の下級官吏として働くこと。お給金はプライスレス、民衆の笑顔がお給金だ!
2 城を出て、冒険者になること。その他の職を選んでもいい。
3 人族部隊の、下働き。銃は持たせない。信用できないから
お勧めは1だね。
今、精霊国はお金がなくて困っています。精霊国の民を助ける本当の勇者になるチャンスだよ」
「「「そ、そんな」」」
あの時、嘲笑したクラスメイトたち。
言葉だけの反省は受け取らない。
労役が必要だ。
その苦難を耐えたら、考えよう。
でも、元クラスメイトたちは全員2を選んだ。
佐々木でも出来たのだから、自分たちにも出来る!
と顔に書いてある。
まあ、3を選んだら、キツい仕事を与え。耐えてみせたら、仲間にしてあげようとしたのにね。誰も選ばないか・・
・・・その後、名をはせる元クラスメイトは誰もいなかった。私の留守中に保護を求めに来た人も沢山いたようだが、イワンさんに追い返してもらった。
人生の選択は一回きり。セーブ機能などない。
外れた選択をしたのなら、次善の策を講じるべき。
後に、健太君とは死体で再会することになる。
☆☆☆10年後、女神信仰圏と魔族領、境付近
「貴方が法王殿ね。この女神信仰の文明圏の概要を法王殿の口からお聞きしたい」
「ええ、この国々だって、獣人の差別はあります。悪い人もいます。嘘つきもいます。しかし、人工的な異世界召喚はしません。全て、女神様が、あちらの世界で亡くなった人をスカウトします。
クラス転移は行いません。
これが、我等の信仰です。如何ですかな。魔王殿」
「なるほど・・」
この日、初めて、法王と魔王のトップ会談が行われた。
魔王が人族で転移者、と言うことで、永続的な敵対関係は無益だと理解した。
何しろ、コスメが魔族領産出ということが上流階級のご婦人たちに知れ渡り、貴婦人たちは旦那を動かし、和平条約の下準備の会談が実施された。
魔王アキラ?彼は、サキュバス族の女性と結婚し、しばらくは魔族領を廻るそうだ。
一般女性と結婚しましたなんて、ふざけた物言い。
厄介事を全て私に任せて・・
私を魔王に指名して、新婚旅行に行きやがった。
『ああ、精霊国の処断よかったぞ。王都を遷都して、上級国民を殺し・・いや、影響力を排除して一から国作りをするとは、中々』
と評価してくれた。
いや、アリスさんに全て任せたのだけどもね。
遷都も何となく、差別意識が薄い北部の方が、何事も上手くいくと思っただけだ。
わずか1年で、精霊国は、ライラの王族の前の状態に戻った。
アリスさんは精霊の愛し子、正しく扱うと精霊は加護を与えるシステム。
素朴な農業国だが、ライラのような異世界召喚など、無理な投機はしない。正常な国、あれから緩やかな成長曲線を描き成長している。
魔王軍傘下の大事な食料供給国の一つだ。
・・・
「さて、魔王殿、しかしながら、戦争はなくせません・・しかし、絶滅するまでの戦争はやめにしましょう」
「それは同意ですが、この世界の勇者や、冒険者はどうしますか?」
数々の取り決めが結ばれた。
私は、新たに、『大規模部隊の展開の禁止に関しての同意書』にサインをした。
中でも、勇者や、冒険者グループが、魔族領での魔族幹部や小部隊と戦い、魔王城で魔王討伐するのはOKとの取り決めがなされた。
侵入した勇者グループに、過剰な戦力は投入しない。その代り、人族も後詰めで大軍を送らない。
まあ、つまり、試合みたいなものだ。死ぬから、死合いかな?
逆もしかりだが、ワザワザ、聖王国の法王やザイツ帝国の皇帝と戦うためにグループで旅に出る魔族は・・いないだろう。
魔族の性格はそうだ。
食べ物に困って攻めるのだ。
仲間を守る為に戦うのだ。
・・・
「ふう」
「大王様、良かったのですが?ミーシャ心配です!」
「フフフ、それで良いのよ。戦争はトップ同士ですればいい。あら、可愛いわね」
ミーシャの三つになる子供が、私の膝に乗る。
あら、ヤダ。見つめている。
「こら、ニケ、降りなさい」
「良いのよ」
こうして、少数精鋭のパーティーが魔族領に侵入することになるが
速やかに処分されたという。
勇者の聖剣も、賢者の魔法も、聖女の結界も、500m先から飛んでくる鉄ツブテで倒されている。
「大王様、直々に、討伐しなくても・・」
この死んだ勇者は、健太君、あれから女神圏に行ったのね。
あの中では一番の出世頭かしら。
「あら、四天王を作る事忘れていた。イワンさん。骸骨博士さん。人選をお願いしますよ」
「なるほど、魔族領まで、ただ殺しに来る輩を処分する役職ですね。わかりました」
こうして、人族の少数精鋭が、魔王を倒すために、魔王城まで旅することが慣習として出来上がった。
彼女の統治下では、勇者たちは返り討ちに遭い。
打倒魔王は人類の悲願となる。
最後までお読み頂き有難うございました。