後編
☆☆☆王都獣人族の集落
「大変だ。この集落に、逃げた勇者の捜索が来ている。隠れて、お姉ちゃん!」
ミーシャの弟妹たちと隠れた。
人族は、可愛い獣人族の子供をさらう習性があるとのこと。
耳が痛いわね。
やっぱり、ここにいると迷惑が掛かる。
だったら、出る。どこに?
「う~ん。わからねえ。裏組織の親分を連れてくるぜ!」
ガオスさんが連れてきてくれたおじさんは、明らかに怪しそうな風体。
「ヒヒヒヒ、この子が、噂の金づる。可愛いじゃないですか?おじさんと一緒に来る?おじさんと養子縁組をすれば良い暮らしできるよ。おじさん、男爵位持ってるよ」
「絶対に、無理!」
「お、即答、おじさん傷付くな~」
「ヨドムさん。ふざけてないで、相談に乗ってやりなよ」
「おお、ガオス、そうだった。相談料は無料でいいよ。儲けさせてもらったから」
おじさんから、数々のことを聞いた。
この国の他に、女神信仰圏の国々があるが、闇で国境を超えるのは、かなり厳しい。
優秀な騎士たちが守っている。
魔王軍が異世界人の受け入れを表明した?!
魔王も転生者だから・・か?
ガオスさん=信用できる。
なら、ガオスさんに、おじさんのことを聞くべきね。
おじさんが帰った後
私は、おじさんのことをガオスさんに聞いてみた。
「ああ、信用できない親父だが、情報はピカ一だ。俺が地下闘技場の戦士だったときの持ち主だ。情報だけ抜けばいい」
なら、信用できるかも、嘘だらけのこの国では、信用は商品になる。
よし、魔王軍に参加する。
その前に、やることがあるわね。
「ミーシャ!」
「「「お姉ちゃん!」」」
私は、あのヨドムというおじさんに頼んで、ミーシャちゃんの身請けをしてもらった。
せめてもの恩返しだ。
小さい頃、可愛いと貴族に連れ去られ、子供の遊び相手にされ、子供が学院に入ったと同時に、奴隷として売却。
人間よ。何をしているのよ。
「「「有難う、有難う、有難う・・あれ、お姉ちゃんいない」」」
(有難う言うのは私の方だよ)
私は獣人族の集落を去った。
☆☆☆魔王軍出没地帯
ガサガサガサ
魔王軍のいる森の中で、緑の肌の魔族兵たちに囲まれた。
私は、銃を両手で持ち掲げ。敵意はない。私は転移者だと大声を出した。
ザワザワザワ
ヨドムのおじさんの話が本当ならここで保護されるハズ。
銃は使いたくない。そもそも上手く使えない・・・
☆
「よおおお~~~~~く、来たね!嬉しいよ。俺の言うことを信じてくれたんだね。君が投降勇者第一号だよ!」
嫌な言い方。でも事実。
しかし、魔王はすぐに、私が持って来た銃を見て、顔色を変えた。
「へえ、何で、お嬢さんが64式小銃を持っているの?」
私は、能力のことを話した。
驚いた事に、魔王は元日本人で、自衛隊出身。
あら、銃を取って、分解し始めた。
「おお、覚えているものだな。昔は、目隠しして、銃の分解と結合を練習させられたよ」
道具を使わずに、手で分解する。一つだけ道具を使う。細い棒を使って、小さなピンを取る。
細かい銃、銃ってもっと、バン!と大雑把なものだと思った。
「へへへ、お嬢さん。いや、アズサ・ササキ、魔王軍へようこそ。君は魔王軍人族部隊に配属だ。これから作る部隊だよ。君の安全と生活は保障する!」
「へ、人族部隊?」
・・・
魔王軍は、様々な種族の共同体だ。その中には、人族もいるとのこと。
「私はイワンと申します。人口三万人程度の国の王でした・・・」
「宗主国の精霊国に魔族の魔石鉱山の攻略を命じられて、渋々出兵しましたが、宗主国の精霊国は不利になると勝手に撤退して、やむなく降伏を決断しました」
しかし
「ええ、魔王アキラ様の恐ろしいところは魔王軍なのに、軍律がきっちりしているのです。ええ、財産は取られました。国は生産拠点として、残った農民はそのまま畑を耕し、牛の放牧をしています。上前は取られます。
それが、どれだけ恐ろしいことか、精霊国の人族よりも、知性は上と証明しています。知性でも敗北したのです」
・・・その感覚は経験しなければわからないのだろうな。
そもそも私は戦争を経験していない。
やっぱり、ライラの話は嘘だった。
魔王アキラに命じられたのは
「まずは交易だ。この国の金は質が悪くて評判が悪い。インフレーションを起こすぞ!」
私は、様々なものを召喚した。
そして、召喚した商品は、イワンさんたちの人族部隊が、他国で交易をする。
召喚はイメージできたものしかできない。
試しに、コスメ関係。
それが爆当たりで、上流階級を席巻した。
「ヒヒヒヒ、魔王様、言った通りでしょう」
・・・ヨドムさん。やっぱり信用できない。魔王軍と通じていたのね。今、考えたら、女神信仰圏に行って、保護してもらう手段もあったが、誘導されたのね。
しかし
「へへへ、この国に女神圏の良貨で、精霊国の重要資産を買取ります。
獣族は女神信仰圏とのキャラバン隊の運び屋で雇います。彼らは体が丈夫だ。あそこは獣人族でも廃除しませんからね」
なるどほ、獣人族に仕事を与えるわけね。
後で調べたが、この男、獣人族にもお給金をきっちり払っていた。
お金の誤魔化しだけはしていない。
「へへへ、信用は商品になりますからね」
やっぱりね。
その後、収益を使って、武器の召喚を命じられた。
私ではイメージできない。
魔王が絵を描いて説明してくれる。
64式よりも新しい89式小銃、迫撃砲、カールグスタフ砲、ロケット発射筒?などなど、
高機動車も召喚した。
これは高い。大金貨を何十枚も使った。次からは白金貨を使おう。ええ、この世界に数百枚しかなく、城の取引に使われるものだから、手に入らない?ということは
軍隊はお金が掛かる。
この世界の経済力では、現代的な装備の大軍は養えない。
せいぜい、一個小隊だと魔王から言われた。
後方で使う自動車は中古車ね。軽トラがお勧めね。
これだけ召喚をして、一個班10人の戦闘員がやっと、後方支援や予備も含めて、40人ね。
「一個小隊の戦闘団だ。ハハハハ」
魔王は笑うが何がおかしいのかわからない。
小銃は40名、全員に渡すことが出来た。
小銃班10名に、迫撃砲や対戦車ロケットを使う者10名、施設班10名で地雷や爆破を行う者など。後の10名はお食事係や医療関係者、通信、補給関係者で構成した。
「さて、武器はそろったな。訓練だ。銃は訓練すれば、いや、勘の良い者ならその日に使う事ができるが、それではだめだ。戦闘中に故障を自分で廃除出来き。自分で整備出来る知識が必要不可欠。何よりも信用できる者でなければならない。
銃を信用できない奴に渡せるか?」
魔王自ら、人族から選抜をした。
集まった人々は、どちらかというと、戦場で剣を振り回すというよりは、事務関係が得意そうな人?
亡国の騎士団の事務員だった人もいる。
医療班として、回復術士の女の子もいた。
魔導師はエリート、プライドは高かった。
「これが、異世界の武器?何それ、こんなので戦えるの?」
魔王自ら訓練をしたが、そのプライドも吹っ飛んだ。
カンカンカンカン
「敵襲だ!敵襲!」
夜中でもすぐに起こされて、非常事態の訓練だ。
時間をせっつかれる。
詰め込まれる。
分単位のスケジュール
この教育で得られる成果は、いわゆる。一般社会で言われる頭の良さ。
瞬時での判断能力
正解ならそれでよし。間違いなら、正解になるように次善の行動に即移さなければならない。
「はあ、はあ、何で私まで、私は回復術士よ!」
戦闘に直接に関係ないものにまで訓練を施すのは、ただ、同じグループとして仲間意識を植え込ませるためだと後でわかった。
「おい、エミリー、お前、0点だ。武器の部品の名前を一つも覚えていないじゃないか?」
「連帯責任、腕立て伏の姿勢を取れ!」
「「「「一、二、三、四・・・」」」
「ヒィ、皆、ごめんなさい」
「「「良いってことよ」」」
「エミリーさん頭が良いから考えすぎよ。丸暗記をすれば、後で意味がわかってくるよ。最初に理解しようとしない方がいい」
「アズサ・・・さん。有難う・・」
こうして、数ヶ月が過ぎた。
☆訓練終了の日
パチパチパチパチパチパチ!
「「「おめでとう」」」
骸骨博士や緑の人、鬼の人や、豚頭の人まで拍手で訓練の終了を祝ってくれた。
これって、何かの怪しいセミナー、しかし、嬉しいね。
「エミリー頑張ったな」
「グスン、グスン、有難うございます」
あれだけプライドの高かったエミリーさんが泣いている。
私は召喚術者として後方支援ねとのんびり構えていたら。
「お前は小隊長だ。お世話係も用意したぞ。この子は、人族から文字を学んでいる。秘書官にも出来るぞ」
「・・・お久しぶりです」
「ミーシャちゃん!」
私はミーシャちゃんにつられて小隊長の職を受ける事にした。
☆
「へへへ、魔王様、ライラが私の配下の情報屋に来ましたぜ。闇の森に騎士団が来ます」
「魔王軍人族部隊の初陣だ!」
最初の戦闘はあっけなく、我が方の勝利に終わった。
簡単だ。密集していたので、ただ銃を撃つだけだった。
さすがに、まだ、こちらの手の内を晒すわけにはいかない。
魔王軍に連絡して
死体数百を燃やした。
魔王自ら燃やしてくれた。
「黒炎のなんとかーーーーー」
ええ、詠唱必要じゃないの?
「おお、頭の中でイメージするために詠唱をするものさ」
魔王はすごいのかわからないが、すごいのだろうね。
そして、草原の戦闘で確信した。
まだ、ライラは私が一人だと思っている。
騎士団で包囲しようとしているが、違うね。
射程を間違えている。
まさか、ここから、500m離れているとは思いもしない。
私の腕ではギリギリ狙える位置だ。
さて、密集したね。
「うん。迫撃砲の準備ね。二発残して撃て!」
「生き残った騎士がいたら、う~ん。適当に撃って!」
「了解!」
・・・
「全滅したわね。車に乗って、魔王軍の後を追うわよ」
「「「乗車!」」」
そして、この戦いの隙に、魔王軍が王都を急襲した。
長いこと、この国は魔族との戦いは異世界の勇者たちに任せていた。
勇者軍が出たら、私たちの出番。
「何だ、佐々木か、お前を倒せば、奴隷身分から貴族にしてくれると言ってくれた!」
・・・ああ、また、欺されて
パン!パン!
「ウグ、銃を本当に撃つなんて卑怯・・・」
クラスメイトを初めて殺した。
一応、降伏勧告はするが、降伏しても舐めきっているものもいた。
「おい、佐々木、早く助けろよ。指輪を外す術は持っているだろ。助けに来るのが遅いよ」
「あ、はい。指を出して」
パン!
「ギャアアアアアアアア」
こうして、王城を占拠。主要幹部は降伏を表明。
王は逃げたか?と思ったが
その時、王様は、お風呂に入っていた。
ダダダダダダ
「何だ。余は入浴中だぞ!」
・・・知らんがな。
裸のまま連れだし、王座の間に引きづり出して敗北を悟らす。
「ヒィ、騎士団はどうした。余を守れ」
「さっき、精霊国の最後の騎士団を全滅させたよ」
「嘘を申すな。嘘を、余は国王であるぞ!」
バシ!バシ!
銃床で殴って黙ってもらった。
事実を見せれば理解出来るだろう。
最後までお読み頂き有難うございました。
後一話、完結編があります。
よろしかったらお付き合い下さい。