中編
☆約1年6ヶ月前、日本国某地方都市
私の家は自営業をしている。一昔前は千三つ屋といわれるぐらい、千の中に、本当は三つしかないと言われるぐらい魑魅魍魎たちが住まう業界だった。
「息子が難病に掛かった。緊急でお金がいるのだ。アメリカに行って手術しなければならない。だから、先祖代々の土地を手放す。保証書は後で送る。だから、買取ってくれないか?お金がすぐに必要だから相場より低くても構わない」
「無理」
「酷い。あんたに人の心は無いのか!」
・・・
コトン
「おお、お茶か。梓、有難う」
「お父さん。あそこの土地は駅前の一等地だよ。土地の権利書がなくなる例は多いから、保証書を後で送ってもらっても良かったのじゃない?」
「・・・権利書や識別情報を提示できなければ保証書だ。保証書は相続などで付き合いのある司法書士の先生が作るものとされている。行けば簡単に作ってくれる。
その保証書すら提示できない。来たのは13時だ」
「ええ、今の時間なら、銀行に行けばギリギリ大金を下ろせる・・」
「あの人は、取引の仲介ではなく、
うちで買取って現金をすぐに渡してもらうことに固執していた
そうだ。ちょうど13時だ。今から銀行に行けばギリギリ大金を降ろすことが出来る」
「今の時代でも地面士や、限界集落の孤独老人を狙って、特別縁故者になって、合法的に、家と土地を取ろうとする輩は多い」
「なるほど」
「ああ、覚えておくといい。
詐欺師は、子供など社会的に弱い立場の人を利用して同情を引き。とにかく急がせる。
母さんが亡くなってから手伝いをさせてすまないね。
この仕事、大金が動く。信用できる者が見つかるまで頼む」
後日、その男は、詐欺で逮捕された。
この令和の日本でも息を吐くように、嘘を吐く人は数多くいる。
あのライラという姫様は詐欺師だ。
そもそも誘拐しておいて、どれだけ本当のことを言うのだろうか?
だから、例え野垂れ死にしても、私は、城を出ることが唯一の正解だと思った。
城を出る前に、着替えるように指示された。
案内された一室には可愛い猫の獣人メイドがいた。
「獣人?!猫ちゃん?」
「ゆ、勇者様、この服にお着替え下さい。荷物一式はここにあります」
「有難う。可愛い」
情報を聞き出したい。
しかし、盗聴されているだろうな。いや、していると思った方がいい。
「私はアズサ・ササキ、あなたは?」
「ミーシャです、ございます」
・・・私が着替えるために服を脱ぐと、ミーシャちゃんは、まるで視線から隠すように、私を背中で隠す。
盗聴だけではなく、監視もしているのね。
「ミーシャちゃん。行ってはいけないところは?」
「・・・城を背にして右に行ってはいけません。獣人の集落があります・・」
ミーシャちゃんが、私にスリスリしてくる。可愛いが、意図は・・わからないが悪意を持ったものではない。
城門を出るとき、ミーシャちゃんの右に行ってはいけないは右に行けとの意味と確信出来た。
「お、城を出る物好きな勇者だな。絶対に右に行くなよ。捜索になったら、面倒くさいからな」
門番のこの話は本当だろう。この国の人間にとってはそうなのだろう。
私は隙を付いて、右に行った。
道行く人たちの視線がキツい。
「あれ、黒目、黒髪だ。下級精霊?お城の?奴隷に一人でお使いさせてるの?」
「一人だよ。監視役いないかな。石を投げてやれ」
ヒュン、ヒュン
・・・なるほど、私たちは奴隷の扱いなのね。
人が少なくなり、スラムにたどりついた。
ワラワラと獣人たちが、家、路地から出てくる。
囲まれた。
大きな犬型?狼の頭をした獣人が、私の顔に・・・ヒィ、ここまで?
押し倒された・・・ここで、レイプ?
と思ったが、違った。
クンクン嗅いでいる。
「おい、猫族の匂いがするぞ。城に連れて行かれた猫族の親戚はいるか?」
・・・ああ、このためにミーシャちゃんは私に匂いを付けてくれたのね。
私はミーシャちゃんの家族の家でお世話。いえ、居候させてもらった。
お母さん猫の獣人、可愛いい・・・弟妹たち猫獣人もいい。
私は、ここで、この世界の常識を教わった。
人間至上主義で、異世界人は人間に入っていない。
基本、獣人は下働きでかなり安い賃金で働いている。
そして、城のお姫様から、もらった金の身分証・・・
怪しい。金だから売れないかな。
狼の獣人のガオスさんに相談した。彼がここのリーダーだ。
「そりゃ、ダメだ。すぐに足が付く。裏組織でも引き取らないぞ」
なら、捨ての一択ね。沼地にポイ。
獣人は人族の裏組織と繋がりがある。
ガオスさんは地下闘技場で、名をはせた戦士だ。元狼族の族長の血筋。
「国・・がなくなっちまって、獣人族はいがみ合っていたが、それが原因で人族に滅ぼされちまったよ。だから、今は仲良くするのさ」
私はここで、お手伝いをさせていただいているが、私の召喚は役に立たないかな。能力を調べるべき。
「オープン!」
スキル 翻訳 等価召喚
何?パチン○の宣伝?ふざけた名だが、注意書きを見ると
日本国の物を召喚出来る。召喚に対価が必要、その代り現地にとどめおくことが出来る。
物限定
つまり、日本の商品を通販のように買える?
これって
「お母さんーお鍋から水が漏れる。もう限界だよ」
「まあ、まあ、どうしましょう・・」
これだ!
「ちょっと、お鍋を貸して」
エイとやったら、日本製の良いお鍋が出てきた。
「すごい、表面さらさら、でこぼこがないよ。ツルツルだよ」
「・・・お前、これ・・お宝だ!もっと出来ないか?」
そう言えば、古鉄は高く引き取られると聞いたことがある。なら、銀貨や、金貨は?
ガオスさんがクズ鉄を集めて持って来てくれた。
イメージして、日本の商品を召喚する。
やっぱり、この召喚術は、通販だ。
ガオスさんは裏組織に渡りを付けて、この国の商業ギルドに売ってくれた。
取り分は裏組織が半分。
更に、お金の半分を獣人族の人たちに渡した。
面倒な取引だが、商業ギルドに、獣人族や、異世界人が来ると、取り上げられるそうだ。
ミツバチが蜜を作っている。蜜を取るのに、ミツバチに対価を払うのか?
巣箱を作ってやったのは人間だ。
我等の国が保護してやっているから、お前らは生きていけるのだろうと言うことだ。
そのお金で更に召喚して、お金で、異世界の商品を召喚する。
ライト、電池、カセットコンロ、ガスポンベ。ライターなどなど
「おい、アズサ、大変だ。大人気だ。もっとないかとせっつかれている」
フン。もっと言って、と言いたいが、そうは行かない。
身バレする恐れがある。試したいこともある。
武器の召喚だ。
私のイメージで銃を召喚する。
戦争映画で見た。木と鉄で出来たあれね。弾は・・・
銀貨二十枚から召喚して、やっと三十枚で出てきたのもは、ライフル?かな。
銃は正直に言うとわからない。64式小銃と彫られている。
このようなものは、部品は付くところに付くとしかわからないが、分解も出来ない。
引き金は、動かない。あ、この小さいレバーが安全装置?「ア」が安全ね。「タ」と「レ」って何だろう?
弾はどうやっていれるかは、一時間かかってわかった。
さて、どうするか?
☆一方、城の勇者たち
「これで、皆様の契約の儀は終わりましたわね・・・皆様、指輪をはめましたか?」
「「「は~い!」」」
「ライラさん。約束の個室とメイドは?」
「あら、契約書にかいてあるのかしら。私はそうゆうことも可能よと言っただけよ」
「「「「えっ」」」」
「貴方たちは管理しやすいように大部屋よ。男女は分けてあげる。下手に子供を作って戦線離脱されてもこまるからね」
「ライラさん・・そりゃ横暴だ!約束と違う。ウワー」
ドンと護衛騎士に蹴られた。
「何を、体罰は禁止ですよ」
「以後、私の名前を呼ぶことは禁止します。王女殿下ですわ」
・・・反乱を試みようとしたが、無理だとすぐにわかった。
俺のジョブは剣聖、だから、簡単に騎士団長よりも強くなれたが
「うわ、何故、木刀を当てようとしたら、止まる」
「中々使えるではないか?気分が悪いからお仕置きだ」
バシ!バシ!バシ!
一方的に殴られる。
指輪は、外せない。
女子たちは・・・悲惨だ。
「今夜、部屋に行くからな。きっちり洗っとけよ。姫様には内緒だぞ」
「ヒィ、もうやめて・・」
どうして、こうなった。
中には取り行ってうまくやる奴もいる。
「へへへへへ、どうでござる。僕の錬金術は?」
「まあ、いい指輪ね。お前は特別に個室をあげる。気に入った女を側に置くと良い」
・・・
「ヒィ、山根君、私たちクラスメイトだよね」
「ハア、ハア、ハア、委員長、前から好きでござった。今日から一緒の部屋でござる。このメイド服を着て!」
地獄だ。
☆魔王軍との戦闘
「やあ、君たち、俺は前世日本人だったよ。トラック運転手の方で、猫ちゃんが道に飛び出てきてさ。ねえ。聞いている?」
数ヶ月、訓練をしたが、あっさりと魔王に背後を取られた。
振り向いたら・・・殺される。
今、戦闘職の、剣聖の俺と、賢者の上田さん。勇者の山田・・・聖女の山木さんは・・現地の将軍の側女にされていない。
渡された剣も名剣だったが、現場の将校に取られて、銅剣だ。
それでも、魔王兵、ゴブリン種を100体は倒した。
「う~ん。君たちの境遇には、同情するよ。だから、魔王軍に入らない?指輪しているね。
指を切っちゃおう?
契約を破棄すると叫んで指を切れば、自由になれるよ?俺が斬ってあげる。治療もしてあげるよ
ああ、殺した兵は気にしないでとは言えないけどさ。魔王軍は基本的に強い者が一番!
共に戦えば、軋轢はなくなるよ!」
「ヒィ」
ヤバイ、上田さんが、爆裂魔道具を起動させた。
任務では、これをこの先にある魔族の集落に投げ込む予定だった。
すると、何やら、陰の手が出てきて、魔道具を奪い去り、背後で大きな爆音がした!
「ウグ、さすがにこの体でもキツいな。まあ、いいや。契約を破棄したくなったら、言いなよ。でも、次、向かって来たら、殺すからね。いいね」
バサバサバサ
大きな鳥が羽ばたく音がした。
でも、後ろを振り向けない。
数時間、そのまま立ち止まっていた。
☆現地の指揮所
「ま、魔王が前線に出てきただと!嘘を言うな!」
・・・いちいち嘘鑑定をする。
俺らは信用されていない。
「嘘は・・言っていないと鑑定がでました・・将軍」
「ああ、撤退だ。こんな話は聞いていない。敗北勇者は、特訓が必要だな」
・・・だから、城に帰っても俺らより強い奴いないだろうが。
最後までお読み頂き有難うございました。