前編
☆冒険者ギルド
「クエスト、大量募集、1人1日銀貨三枚(3万円)だと、最低、一週間保証。1日で完了してもえ~と、1、2,3・・10,指じゃ数えられないくらい銀貨もらえるってことか?」
「はい、銀貨21枚最低補償、日が伸びれば更に1日3枚増えますよ」
「でも、危険な仕事じゃね?」
「いいえ。異世界人の16歳の女を一人捕まえるだけです。特徴は黒目・黒髪ですぐに、わかります。
手の欠損は不可。精神を壊さない程度なら、少々オイタをしてもいいですよ」
「これは・・」
「「「「やるしかない!」」」
「なら、出没地域までご案内します。兎を狩るように、お願いしますよ」
☆草原
「はあ、はあ、はあ、話が違うじゃねえか。グハ!」
バタン!
「ヒィ、何をされているのかわからねえ。どこにいるのかもわからない!」
「俺らはどんな手段で殺されている?!」
既に、半数以上の冒険者が殺されていた。
二つの名のある冒険者も
「俺は、双剣のドコン!転移者よ。姿を現し、正々堂々と勝・・ギャァアアアア腕が飛び散った!」
名のない冒険者も区別なく、殺されていた。
・・・仕草で、一騎打ちを求めていたのかな?30名以上で1人と戦おうとしていたくせに、正々堂々もないものね。
と彼女はつぶやく。
彼女は「吸う・吐く・止める・撃つ」を繰り返しているだけだ。
冒険者の後方から、観戦していた依頼者がいた。
「・・・何よ。話が違うじゃない!あれは何?ケンタ、説明しなさい!」
「・・・あれは銃ですよ。向こうの世界の武器、俺も詳しくはない」
「野蛮人の世界の武器が、優れている道理がない。魔法も使えない未開人が」
何故、あの女が、あの時、見過ごしたわ。あったときから、小癪であったが
☆☆☆1年前精霊国王城召喚の間
「異世界の勇者様たち、ようこそおいで下さいました。私は、この精霊国の王女、ライラと申します」
ガヤガヤガヤ
「異世界転生!すごいラノベだ」
「金髪に、青い目、お人形さんみたいで可愛い!」
「ライラさん。一体、何が起きてるの」
私は、跪いて懇願した。
「ウウ、グスン、グスン、魔王軍が、侵攻し、愛する民が虐殺され、危機に瀕しています!
魔王軍は子供まで無差別に殺しています。一刻の猶予もございません。どうか、皆様のお力をお貸し下さい!」
「頭をあげて、お姫様、ドレス汚れるよ」
「ああ、俺たちに任せろ。お姫様!」
いい反応ね。
各一人一人を丁寧に、スキル鑑定を行い。使える者とそうでない者を選別。
使えるものは、訓練を施し、使えないものは出荷ね。
・・・しかし、一人だけ手を挙げて質問をする者がいた。
「あの、何故、私たち高校生なのですか?自衛隊や、武道家の方でないのが不思議です」
・・・いたいこところを付くわね。
「精霊様の思し召しとしか申し上げられませんわ。しかし、どうしてもと仰るなら、戦わない選択も用意してますわ。大貴族との縁組み、養子か。市井で暮らすお手伝いをさせて、もらいます」
「わかりました。私は、市井で暮らす方でお願いします」
・・・何、一番してほしくない選択をするのよ!
「・・でも、冒険者は1年後に生き残る率は半数です。とても、異界で暮らしていた方々には、辛いところですわ」
「市井で暮らす方でお願いします」
・・・何よ。あなたは、十六番の・・ササキ、あなたにはもう買い手が付いているのよ
「佐々木、それ、なくねえ。お姫様困っているよ。民を見殺しにするのかよ?」
「健太、佐々木ってそうゆう奴だよ。陰キャで、時々何を考えているかわからない」
「佐々木さん・・・お城の人もきちんと訓練すると言ってくれているじゃない。一緒に頑張ろうよ」
「・・・ライラの選択の中で。この場合、放逐が一番いい選択。他はない」
・・・何、見抜いているのよ。それに、何故、呼び捨て!
「呼び捨ては、良くないよ。ライラさん。お姫様だから、姫とか、さんをつけなきゃ」
「だって、誘拐犯、それに、私はこの人の言うことを聞く契約は結んでいない。今は対等な立場、対等な立場は今だけ」
「何それ、あなた、いつも場の雰囲気を壊して!」
・・・何、見抜いているのよ。まあ、どうせ、すぐに帰ってくる。不慣れな異世界で、食うに困って帰ってくる。
持たすお金は一週間分で、魔道具を忍ばせて、位置だけはわかるようにしておこう。
「わかりました。異世界生活を頑張ってね」
「ライラ、頑張るのは、あなたね」
・・・ムカッ
すぐに、帰ってくる。奴のスキルは、召喚、しかも、等価召喚という、対価が必要な部類。
伝説のドラゴンも呼べない。
検査の結果、魔石を生け贄にして、出てきたものは、「あすふぁろと」いうゴミだ。
だから、貴族に出荷と決まっていた。
後35体いる。
1体くらいいなくても大丈夫よ。
この異世界召喚の術、大人はこのワナを見抜くかもしれない。
だから、あちらの平民学校を狙って、かけるのよ。
ただ、呼んだだけではダメ。
心から納得させて、契約魔法をかけて、隷属の指輪を付けさせなければ、使役出来ない。
精霊との契約を改良した術だ。
何、すぐに泣きながら帰ってこよう。
この国は異世界人にとって辛い場所だ。
☆一週間後
「王女殿下、16番ですが・・位置反応が沼です。自殺したのでしょう」
「何ですって、あいつに渡した身分証は、金で作った物だ。金を捨てる馬鹿はいない。いくら野蛮人でも金の価値はわかろうものに」
・・・買い手には、後でお金と利息を返還しなければならないが、仕方ないのう。
私名義の古代文明の遺跡の出土品と、勇者軍で、魔族の魔石鉱山を分捕れば、余裕だわ。
☆数ヶ月後
とんでもないことが起きている。私所有の古代文明の遺跡の出土品の値段が下がっている。
もはや、買い手が付かないレベル・・・
「一体、何が起きているのか?!」
「王女殿下!市場に多量に、古代文明の日用品が出回っています。オリハルコンやミスリルで出来た鍋や、かっせとこんろ、らいたー、などなど、しかも、姫殿下の古代遺跡のよりも・・
言いにくいのですが、品質が良く。最近作った物としか思えません!」
「なんですって!」
謎の商品を手に入れ調べたわ。文字が書いてある。
「・・・これは、勇者のやつらが使っている文字に似ている。いえ、そのものね」
私は、勇者に、市場に出回っている商品を見せた。
「いい。嘘を付いたら、隷属の魔法で苦痛を与えるわよ。これは、何?」
「ヒィ、王女殿下、これは、日本の製品です。日本語とローマ字、英語が書かれています」
「オリハルコン?・・・これはフッ素加工されているフライパンです。後は合金ですかね。詳しい事はわかりません」
・・・まさか、こやつらは魔法のない世界と聞く。原始人だ。
異界渡りをするときに、こちらの世界の精霊が憐れんで強力な能力を付けると聞く。
魔法無くして、これらが作れる道理がない。
しかし、隷属の魔法で契約しているからには、嘘はつけない。
本当なのだろう。
それだけなら、まだしも
「王女殿下、多量の良質な金貨、銀貨、銅貨が出回っています!女神信仰圏のものです。我国の資産は・・・ただ下がりです」
・・・
「王女殿下!勇者軍敗退!魔王が、前線に出ています。魔王も、どうやら転生者のようです」
私は、窮地に立たされた。
更に、王立研究所から報告が来る。
「姫殿下、大変でございます。あの「あすふぁると」を分析した結果、古代遺跡の地層から出るものと概ね一致しました。道の材料のようです」
「何故、それを言わぬ!」
勇者たちは、8名出陣、後方には、補欠の勇者7名、20名は出荷、そして、一名自殺した。
出荷した勇者に能力が目覚めたか。
出荷した勇者の行方
と
商品の出所を探すべき。
「王女殿下、出所は、裏組織です」
「そう、裏組織の情報屋のところに行くわ。私直々に嘘を言っていないか調べてあげる」
「ハッ」
☆王都下町
「ヒヒヒヒ、それだけじゃ、大事な商売の出所は申せませんね。もう少し、お金を頂ければ、詳しい内容をお話しできるのですがね」
ドン!
「へへへ、お、箱一杯の金貨ですね。精霊国の悪貨ですが・・・まあ、いいでしょう。うちらも、商売でして、闇の森で、交易しているのでさ。物がおいてあり、あっしらは、食べ物やお金をおいておくのさ」
・・・嘘・・は言ってないわね。魔道具に反応しない。
それに、この交易方法は、野良獣人たちとする方法ね。
読めた。転移者は逃げて、獣人の集落に紛れ込んだ。
どうやってかは疑問に残るが。
「配下の騎士団に張り込ませるわよ。捕獲よ。魔法を使える程度に壊していいわ」
「御意」
・・・
ヒヒヒヒ、あっしは嘘はいっておりやせんぜ。嘘のライラ姫に嘘を付いたらすぐにバレる。
だから、聞かれたことに対して、本当のことを言って、聞いていないことは答えていないのさ。
あそこには・・・おっと。
☆数日後
「全滅しただと!」
「はい、死体は現場にありません。燃やされたようです。鎧まで溶けています。全員、殺されているのが、魔道具で確認されました・・」
私の騎士団が全滅・・・高い装備まで溶かされた。なら、悔しいけど、陛下に頼むか。
「どうした。騎士団は全滅したのか。余の騎士団を貸そう。その代り、商品の供給元が手には入ったら、倍にして金をもらうぞ。でなければ王位継承権は考えねばならぬ」
「・・・はい、必ず戦果をあげてご覧にみせます」
・・・自分では何もしないくせに
後日、命じていた調査の結果が来た。
「王女殿下、出荷した先の勇者たちは、シロです。逃げた勇者はいません。
一日中、男の相手をしている者や、踊っている者。付与魔法をかけているものなど、どこも、商品を製造している形跡はありません」
「・・・もしや、あの16番」
調べてみた。
「ドレク神官殿・・あの日の16番の様子をお聞かせ下さい」
「あ、はい」
☆1年前
「え~ここにお集まりの皆様は、大貴族の養子になる方々です。戦闘には不向きですが、ここで第二の人生を送って下さい」
「・・私は違う。城を出ます」
ガヤガヤガヤ
「最低、そこまでこの国の人たちを疑っているの?私たちは皆と共に戦いたいけど、ジョブが踊り子や、農夫だから、仕方なく第二の人生を送るだけだよ」
「感じ悪い。折角、この世界の人が、親切にしてくれているのに!」
「皆様、お静かに、選択は自由です。しかし、自活は厳しいでしょう。今なら、選択変更は可能ですよ」
ええ、大事な商品です。何度も説得を試みました。
出荷先の貴族との顔合わせの時に
16番の出荷先の大貴族と顔合わせして、なし崩し的にしようとしましたが・・
ええ、契約魔法は出荷先で行うので、この時は、まだ紳士モードでした。
「やあ、異世界の姫、私の家に来ないか?私のところに来てもらったら、1日三食は保証するよ」
出荷先も、見目麗しい子息を寄越しましたが
16番は豹変しました。
「無理~わたしは、『オ~ホホホホ~ですわ』なんて出来ないですわ~城下町で佐○系男子を・・・ゲッチュ!」
・・・異世界の道化の真似でしょうか。
クルッと廻って、人差し指を差して、面白い拍子を付けてやりました。
正直、私は笑ってしまい。
貴族たちも大笑いしました。
「「「ア~ハハハハハハハ~」」」
「何だ、こやつは、おもしれー女ではないか?おもしれー女は鑑賞となっている。しばらく、様子を見るしかない。しばらく、城下町を散歩すればいい」
しかし、勇者たちは違います。
「最低、佐々木、おふざけをして、この人たちは真剣に私たちの進路を考えてくれているよ!」
「もう、いいよ。佐々木は冒険者になっても、どこのパーティーにも組めないよ。ドレクさん。いったん外に出して苦労させればいいよ!」
ええ、風向きが変わりました。
「・・・そう。あの部類は陰キャに分類されていると調査があったが・・・その後は?」
「はい、あの後、外に出るための着替えをさせました。その、あの世界の平民学校の服は、少々刺激的ですからね」
・・・ええ、太ももを見せるなんて、我国では考えられない。
「誰が、着替えを担当したの?」
「はい、下級種族の猫族のメイドです・・出て行く勇者の世話など、誰もやりたくないですからね」
「獣人!」
あの交易方法とつながった。
私はメイド長を呼ぶ。
「奴隷メイドのミーシャですか。そう言えば、買い取った奇特な人がいました。
下女にも出来ない獣混じりですからね」
「誰が買取った?」
「裏組織っぽい人ですね。地下闘技場で使うのではないですか?」
・・・つながった。16番→獣人→裏組織だ。
「冒険者ギルドに行くわよ。敗北勇者のケンタも連れてきなさい!」
☆現在、草原
「ヒィ、ダメだ・・・」
ドタン!
「読めたわ。あの精度、あいつはあの冒険者たちから、50メートルから100メートル以内にいる」
弓の名人でも100メートル先のマトに当てるのは、至難。
魔法でも同じ。
「包囲!」
騎士団が、森の中から出てきた。皆、盾を持ち、フルアーマー装備。
冒険者が襲われている時に、こっそり展開をしていた。
ゆっくり、近づき。後ろから魔導師がアンチ隠蔽魔法をかけていく。
「フフフフ、さあ、お宝の山ね。敗北勇者は、説得役ね」
だが
「冒険者たちから半径150メートル以内にいないだと!」
徐々に包囲を狭めた結果、最後 彼らは密集した隊形になった。
・・・
「隊長!敵が密集しました」
「うん。迫撃砲の準備ね。二発残して撃て!」
ヒュ~~~~~
「????うん?何だこの音は?」
ドカーーーーーン、ドカーーーン
黒煙が上がる。
騎士団は密集していたから、被害甚大である。
「生き残った騎士がいたら、う~ん。適当に撃って!」
「了解!」
「ずっと、同じ場所にいる訳がないし、この64式と89式小銃は300メートルなら絶対に当たる。頑張れば400~500でも可能だよ。狙わなければ、数キロ先の敵も当たれば死ぬ」
・・・
「へ?」
ライラ姫は驚愕した。
「魔導師、拡声魔法を!」
「御意」
ライラは叫ぶ。
「聞きなさい!16番、勇者ケンタを殺されたくなければこちらに投降せよ!」
何度も叫んだが
ピュシュー
ライラの近くを、光る何かが高速で飛んでくる。
「閃光弾による誘導射撃、右に3ミル、照星を3回転、下げるか?」
次第に近くなり。
「な、何これ、魔導師、結界よ!」
「既に、展開してますが、通り抜けてますよ!」
「キャアアアアアアアア」
ライラが右手を挙げて指示をしたとき、右手は吹っ飛んだ。
這々の体で逃げる事になるが王都が火の海。
「王女殿下!王都が、魔王軍に急襲されています」
「ヒィ、もう、帰る場所が・・・」
☆☆☆王城
精霊国の王都は魔王軍に占領された。
王宮王座の間に
カツ、カツ、カツと足音が響く。
(この後、如何に魔王に取り入るかが、カギだ)
貴族たちが、心騒ぐが。
入ってきたのは、人族を先頭にした魔王軍だった。
丸裸の王が引き釣り出されている。
人族は、皆、茶色と黒と緑の斑模様の服、鉄兜をかぶり、鉄で出来た魔法杖を持っている。
王座に、平然と座ったのは、16番と言われた少女であった。
ザワザワザワ
「人族・・・」
「いや、王座に座った者は、黒髪に黒目・・あれは使役獣じゃないか?」
最後までお読み頂き有難うございました。