00.始まりの理由
世界には天使と悪魔の能力が混在している。
「授才」と呼ばれる特殊な能力は生命という生命に宿り、宿主が死ぬまでそこに留まり続ける。
そして宿主が死を迎えた時、授才は次の生命を探し、やがて新たな体に宿る。
言い伝えの一つに、はるか昔の天地大戦によって天使と悪魔が散り散りになってしまい、その欠片たちが新たなる器を探して生命に宿ったというものがある。
他にも授才については多くの諸説があるのだが、どの説にも共通していることは「授才は人知を超えた力」ということだ。
その力は平和の象徴と同時に恐怖の対象でもあった。
悪の授才を使って悪事を働く者。力を欲しがって宿主の命を奪う者。
誰もが授才を良い事に使うわけではなかった。
ただその中でも、正義の為に生きる者達は確かに存在する。
* * *
生まれた時から"不幸の子"として生きる少年。
十六歳になった今でも、生きる幸せを感じられない少年。
今、この瞬間にも、唯一の家族が不幸の少年から離れようとしている。
――ああ、僕にはもう何もない
暗闇に投げ込まれそうなその時。
少年の目に写ったのは、体に光を宿した彼女だった。
眩しい光の中、微かに彼女の聞こえた気がした。最初で最後の彼女が残した遺言。
「幸せの為に生きて」