花の星座がない理由は
花のない桜の樹の下で
静かに見上げる
十二月の夜空
枝の隙間から吹く風に
舞い落ちる紅や黄の葉が
ゆるやかな曲線を描き
ラピスラズリのように
空は深い瑠璃色をして
そこに幾つもの
星たちが煌めいて
夜空にちりばめられた
八十八の星座
春は女神と牛飼いが語らい
夏は白鳥と鷲が天高く舞い
秋はペガサスが夜空を駆け
冬は狩人が犬達を引き連れ
くじらやいるかもいる
コップやコンパスに羅針盤
髪の毛や望遠鏡まで
たくさんの星座がある
けれど不思議だね
花の星座は一つもない
星を空に見上げてきた
古の人々も 私たちも
そして大切にしてきた
地上に咲く花 心にある花
花に水をやり
土をあたため
風にそよぐ姿を
見つめながら
神様は空にいるかもしれない
その力で人や動物や物も
星になり地上を照らすことが
できるかもしれない
けれど花は
大地に咲くから
地に根を張らなければ
咲くことができないから
喜びも
哀しみも
幸せも
この地上で
この心の中で生まれ
だからこそ
その土の上に咲く花は
美しく
切なく
愛おしいから
そして
星々の輝きはいつも
見る人の心の花を
やさしく照らして
明日へと向かう
光を届けてくれるから
花のない桜の樹の下で
この樹に
この心に
やがて満開の花が
舞う日を夢見て
満天の星座が見守る
ラピスラズリの夜に
星に、願いを
心には、花を
そしてその花を
大切に
育てていけたら
深い青に金色の光が輝き、まるで夜空を切り取ったようなラピスラズリは、12月の誕生石で、石言葉は「真実」「幸運」です。その夜空を彩る星座は88ありますが、花の星座が一つもありません。そのことをモチーフに詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。