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見たな、俺の黒歴史

その日は一段と寒い日だった。

いつも雪はしんしんと降っていた。昨日とは違って大粒の雪が絶え間なく降り続けていた。

さしていた傘は大雪によって重くなり持つのすらままならない状況だった。

(さ、寒い。)

俺は体を小刻みに震えさせ、手のひらで合わせ勢いよく擦って体を温めた。


ぐぅぅぅ


俺の周りにいた人々に聞こえるほどの情けないお腹の音が鳴ってしまった。

「お腹空いた」

晩御飯について考えながら家へと足を運んでいた。すると、道端にポツンと一つのダンボール箱が置いてあった。

俺は興味本位で箱の中を覗くと、そこには子猫が一匹

こちらの方を伺って座っていた。

子猫は栗色の美しい毛並みで、ヘーゼル色の瞳には寂しさを感じさせられた。

俺は気が付いた時には子猫の頭を撫でていた。

(か、可愛い)

俺が子猫の前に手の甲を持って行くと、子猫が頬を擦り当ててきた。

「にゃっ!にゃーん……」

子猫はか弱い鳴き声で鳴くのだった。

その鳴き声からは俺に対しての助けを求めているように感じた。

俺はこれほどまでに可愛い子猫を捨てられていることが理解できなかった。

しかし、俺にはお仕事が忙しくてあまり帰ってこない6つほど離れた姉と2人暮らしをしているため勝手に飼っても良いのだろうか…

でも、このまま見なかったことにして、子猫が今日の寒さで凍え死んでいたら……なんて考えると、居てもたってもいられなかった。

「なぁ。俺と一緒に暮らさないか?」

と言いながら、手を差し伸べた。

俺の問いに子猫はきょとんとした顔をした。

(まぁ、伝わるわけないよな……)

と思いながらゆっくり立ち上がった。

「ごめんな。やっぱり俺には力不足みたいだ。」

そう言い残すと、帰路に戻るのだった。

足を一歩ずつ進めて行くと、どうしても心の中に残る蟠りが消えなかった。

俺はきっとまだあきらめきれないのだろう。

そんなことばっかり考えてしまった。

(もう一回だけ行こう)

俺はあいつのことを見て見ぬふりで自分の弱さを理由に正当化して、なんて情けないやつなんだ。

自分勝手かもしれないけど、、、

(もう一度会いたいねん)

そう、思いながら振り向くと先ほど俺が可愛がっていた子猫がいた。

きっと俺と別れた後、追いかけてきたのだろう

お前はポ〇モンかおい!ごめん。今モンスターボール持ち合わせていなくて、、、

ふと、思った俺はクスッと笑うのだった。

俺はさしていた傘をしまい、子猫を優しく抱きかかえて、首に巻いていたマフラーを使って子猫を包んだ。

その後は少し小走りで家へと帰った。

5分ほど経った頃だろうか、自分の家のドアの前に着いた。

俺はドアから視点を子猫に移すと、子猫は心地良さそうにすやすやと眠っていた。

片腕で子猫を持ち、ゆっくりとドアを開ける。

ドアを開けると、暗くて陰気臭い部屋が出迎えてくれた。

俺はリビングのソファーに子猫を寝かせ、風呂の準備をした。

久しぶりに湯船にお湯を注いだだろうか。

姉貴が帰ってこない時はいつもシャワー浴びるがけだったので、懐かしさを感じる。

俺は子猫を起こしにリビングへと向かった。

リビングに着き子猫が寝ているソファーの隣に座った。

子猫の頭にそっと手を置き、子猫が起きないように優しく撫でた。

(何回見ても可愛いな。おい!)

俺は、猫を飼う人たちの気持ちが少し分かった気がする。

こんなに可愛いのは反則や!

俺にここまで懐いた猫は初めてかもしれない、だからこそ気持ちが舞い上がってしまったのかもしれない。

正直に言うと俺は猫に嫌われやすい体質だ。

過去の出来事なんだが、いくつかの理由がある。

昨年の夏に俺は姉貴と一緒に猫カフェに行ったことがある。その猫カフェはネットでも評価の良い店で、人懐っこい猫が多いことで有名だった。

でも、いざ入店すると俺に懐く子猫は一匹もいなかった。懐くというより、俺のご飯を横取りする猫や顔を引っ掻く猫が多かった印象が強い。

姉貴には俺のときとは正反対で、かなり懐かれていたと思う。例えば、姉貴の膝の上でさぞ気持ちよさそうに丸まっている猫や、姉貴と一緒に猫じゃらしで楽しそうに遊んでいる猫ばっかりだった。

普通に羨ましかったし、猫に好かれない体質にした神を呪ったね。

でも、ここまで猫に好かれない体質だったけど、俺は今でも猫は好きだし、毎日猫の動画を見過ぎて深夜に寝ることだってあるぐらいだ。

だからこそ、今隣に猫が寝ている状況は俺にとっては奇跡ともいえることだったりするのだ。


(そろそろ起こすか)


俺は、優しく子猫の体を揺すった。だけど、子猫はなかなか起きない。熟睡しているからなのか優しくでは足りないように感じた。

次は、割と強めに揺すってみることにした。

「お、起きろ~体洗いに行くよ…」

強めに揺すったのが功を奏したようで、子猫は少し機嫌が斜めな様子で起きてくれた。

ここで俺は、あることに気づいた。

「今更だけど、名前。まだだったな。」

と、言いながら俺はこの子に合う名前はないか頭の中で考えた。思考を巡らせること数分、、、

俺は一つ良い名前が頭の中に浮かんだ。


(マ、マロンや!マロンが合う!綺麗な栗色の毛並みから、、、マロン!我ながら良い名前かと。)


マロンの名の由来は、初めて見た子猫の第一印象が綺麗な栗色の毛並みからだったからだ。

それにマロンなオスでもメスでもどっちにも合うだろう?え?俺だけ?でも可愛いから良し!


一方その頃マロンは俺の隣でソファーの背もたれでガリガリ音を立てながら爪とぎをしていた。

音を立てながらとはいえ、俺は名前決めることがけに集中していたので気付くことができなかった。

俺は名前が決まったので隣にいるマロンに優しく声をかける

「マロン。シャワー浴びるよ」

と言いながら後ろからマロンを抱きかかえると、マロンを浴室まで連れてった。


浴室に入り、シャワーの温度を確かめると、マロンの背中からシャワーを当てた。

マロンも最初は嫌そうだったで暴れたりしたのだが、慣れてきた様子でシャワーを浴びている。

じっとしていていたので、余計な手間がかかることなく浴び終えた。

俺は乾いたバスタオルを手に取るとバスタオルでマロンをゴシゴシ拭いた。

マロンから水が垂れないほど拭いたので、リビングに移動して、仕上げのドライヤーをかける。

ドライヤーの暑さを調節して、マロンの綺麗な栗色の毛並みを乾かした。

乾かし終えた俺は、マロンに夜ご飯を食べさせたいのだが、何を食べさせるのが正解なのだろうか

無知な俺はスマホ片手に、「猫。ご飯」と調べた。

抽象的だったがいくつかの検索結果が出てきた。

しかし、ほとんどのサイトはキャットフードばかりだった。

「そりゃあ猫に与えるものやからな。人間が食べるものは基本ダメみたいだな。まさか、ツナ缶もダメとは意外だわ。」

ツナ缶は3個ほど在庫があったので、ツナ缶にしようと思っていたのだが、ダメとは、、、

俺は、家の冷蔵庫を開け、中を確認した。

(食べられそうなもの……これなら)

俺が手に取ったものは、カニカマの入ってある袋だった。

確か、カニカマは食べても大丈夫って書いたあったはず!

俺はもう一度検索したが、問題はないと書かれていた。

マロンに手で千切ったカニカマを自分の手のひらに乗せ与えた。

マロンは興味本位でカニカマを見ていたが、お腹が空いていたのかペロッと食べていた。

「ごめんな。明日はまともなご飯にするから…」

そう、言い残すとマロンを抱きかかえて寝室に入り、マロンを自分のベッドに寝かせた。

マロンが寝たのを確認し終えた俺は、浴槽の中で今日の出来事を振り返った。

振り返ってみると今日は波乱万丈な一日だった気がしてならない、朝は寝坊し、朝食を食べずに登校し、放課後は帰り道で子猫を拾って、、、でもよくよく考えたら楽しい一日だったのかもしれない。

最近の俺は学校でも家でも何もやる気が起きず、つまらない生活をしていたから今日が楽しく感じたと思っている。

それに明日からも我が家にはマロンがいる。一人じゃないって思えたのは久しぶりに感じた。

今日を振り返り終えた俺はのぼせる前にお風呂から出て、寝る準備をした。

帰り道で晩御飯について考えてたのに、結局食欲がわかなかったのでご飯を食べずに寝ようと思う。俺は、ベットに入ると体を丸くして寝ているマロンを隣に目を瞑るのだった。




翌朝。俺はやけに重い瞼を開けて体を起こすと-。

俺の目の前にはびっくりするほど可愛い美少女が俺のベットの上で横座りをしている。しかも、裸で頭にはケモミミのようなものが付けられていた。

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