表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いまさら魔王の週末異世界  作者: 放睨風我
第二部: 魔王と勇者
16/56

第16話 勇者 #5

()()()……()()? あたしが?」


ルナはアイにがっしりと手を掴まれたまま、目を白黒させた。

何と答えるのが正解なのだろう。

魔王を倒そうと言われても、たぶん、あたしがその【魔王】なんだけど……。


アイはキラキラとした瞳でルナを見つめている。

ルナは戸惑いと共に空を見上げた。のっぺりとした【黒】はきれいに消え去り、いつの間にか、澄み渡る夜空へと戻っていた。


「……」


オシリスの展開した防壁のおかげで、時計塔以外の街は被害を受けていない。

だが空が急に真っ暗になったことや、時計塔の崩壊する音に異常を感じた住民が、ざわざわと集まって来ていた。

おそらくルナとアイは、時計塔の崩壊に巻き込まれた民間人に見えているに違いない。


「ま……ルナ様ぁ!」


聞き慣れたオシリスの声。

彼女はぐいぐいと人混みをかき分けて、地べたに座り込んだ姿勢のルナのもとに、スライディングしそうな勢いで駆け込んでくる。


「お怪我はありませんか!? ああああ……しっかりとお守りすべきでしたのに! いますぐ城に戻って精密検査を」

「だ、大丈夫だから。落ち着いて」


オシリスは、まるでルナが致命傷でも負ったかのように涙を流して嘆く。

大事故かと勘違いした街人が立ち止まり、それを見た別の人も輪に加わって、周りに人垣ができつつあった。


「……」


アイは、その光景をしばらく見つめていた。

そして痛む脚をかばって立ち上がり、ルナに背中を向けた。


ルナは、アイの様子が先程とは違っていることに気が付いた。


「……アイ?」

「ルナの家、ずいぶん立派な所なんだ。そっか……そりゃそうだよね」

「ううん、そんな……」


と否定しかけて、ルナは自分の服を見おろした。

どこかの姫様のような、ヒラヒラとした豪華な装い。この服装で出歩き、身を案じる従者が駆け寄って「城に戻る」などと口にしていれば、そう見られて当然であった。


「帰る場所が、あれば……」とアイは呟き、ルナに背を向けたまま、「ごめん、さっきのは忘れて」と告げた。


そのまま振り返らずに、勇者アイは足を引きずって歩いてゆく。

彼女に声をかける者はなく、アイと関わることを避けるように人垣が割れた。


「――()()()()()()()()()()()()()()……。結局、みんな……」


誰にも聞こえない小さな呟き。

風の流れによってか、それはルナの耳まで確かに届いた。


「……」


ルナは【勇者】の後ろ姿を、いつまでも見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ