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シニコク~4259  作者: 桜盛 鉄理
259/260

二百五十九告目  黎明にはまだ暗く 8

 西木千輝は救急車で病院に運ばれどうにか一命を取り留めた。信岡玄からの連絡で病院に後藤柚姫が駆けつけた。佐島鷹翔が彼女に会うのは5年ぶりだった。

 2人が完全優性種であることが伝わり、西木千輝と佐島鷹翔の身柄は即刻『黎明の灯火』の保護下に置かれた。手術後の西木千輝の容態が予断を許さなかったこともある。


 変異したシニコクの呪いは多聞真夕貴の事件をもとに検証がなされ、受動者キャリアーの発生は強い情動を伴う血液もしくは体液等を介した接触によると分かった。その後は後藤柚姫や刑部秀穂が中心となり対抗策が練られていく。

 同時に完全優性種の保持者ホルダー受動者キャリアーに対する有効性の検証も進んでいく。検証の過程でのセックスやプライベートにまで踏み込んだ質問に2人は閉口したが、シニコクの呪いの悲惨さを知っているため無下には断らなかった。回復途中の西木千輝も協力は惜しまなかった。その甲斐もあって祓い流しの儀式の原型ができあがった。

 しかしそれを喜んだのもつかの間、容態が悪化し西木千輝は再び入院を強いられることになる。



 西木千輝の容態は一進一退を繰り返し回復の兆しが見えなかった。

 手を尽くす一方で同時に後藤柚姫は彼女の代役を探しはじめた。完全優性種が望ましいのはその通りだが保持者ホルダーが儀式を行った場合でも、相性等で成功率は劣るものの祓い流しは可能だった。それでも西木千輝の代役となれば誰でも務まるものではない。


 はじめに後藤柚姫は荻野海渚に不起訴を持ちかけそれを取引材料にした。しかし荻野海渚には人を救う信念などなく、体に赤い影が増えていくことに耐えられず精神を病んだ。

 それを知ればなおのこと多聞真夕貴と兎川橙萌の協力は城戸琉侍が強行に反対した。信岡聖についても信岡玄との約束がある。阿川飛名子は受動者キャリアーのため対象外だ。

 暮林夏凛はすでに儀式を受けてシニコクの呪いを解いている。



 ある日西木千輝は病室に後藤柚姫を呼んだ。佐島鷹翔の隣に彼女が立ったのを見て、西木千輝は2人に滝村涼香の名前を告げた。

「今の柚姫なら『黎明』に頼んで探せるでしょ?」

「ええ、できると思うけど……」

「涼香なら引き受けてくれそうな気がするんだよね。『何よもう、本当にしょうがないわね』なんて言ってさ、あはは」

「お前はいいのかよ? それに何で今さら……」

「今、だからかな。人を恨んだまま死にたくないから」

「おい!」

「何バカなこと言ってるの!」

「ごめん、でも本当に分かっちゃうもんなんだね、こういうの……それに涼香も、もう十分苦しんだと思う。だからもし涼香が引き受けてくれなくても、そのときはシニコクの呪いを解いてあげて。お願い」

 そう言って話を終わらせるように西木千輝は目を閉じた。


 ……その数日後、西木千輝は静かに息を引き取った。


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