二百五十二告目 黎明にはまだ暗く 1
佐島鷹翔が信岡玄と一緒に向かう道を急いでいるころ、西木千輝は二人の到着を監禁場所のモーテルで待っていた。君成歩三男には「寝たほうがいい」と言われたが起きて佐島鷹翔を待つつもりだった。
「聖さんっていうのはあいつの何なの? あたしに似てるって言ってたけど」
ベッドの上で壁に背中を預けた格好で西木千輝は君成歩三男に話しかけた。彼は入口のドアの側に椅子を置いて座っている。
「聖さんは兄貴の義理の妹さんです。父親が一緒だと聞いてます。似てる? 俺はそう思いませんが。……ええ、見た感じは特に」
言いながら観察するように見る君成歩三男の視線が胸で止まる。西木千輝は思わず胸元を隠す。
「ちょっと! 気にしてるんだから少しは気を遣いなさいよ!」
「……ああ、そういうところが似てるかもしれません」
「えっ?」
「普段は距離を取っているのに構ってもらえると分かると途端にしっぽを振って甘えてくる感じが。デレの激しいタイプというんでしょうか」
「でっ、デレって何よ! しっぽってそんな、人を犬みたいに!」
「依存体質なんでしょうね。あんたも人との距離の取り方が下手な人種のようだ。どうですか?」
「それは……うん……」
君成歩三男にそう言われれば西木千輝も反論できない。
「これからも苦労するはずだ。だから忠告です。人に殺されても、殺しても遅いですから」