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シニコク~4259  作者: 桜盛 鉄理
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二百五十告目  悪は裁かず 33

 病院で新当絵馬と再会したのもつかの間、信岡玄も彼女の前から姿を消してしまう。それは当然予想していたことだったがやはり新当絵馬にとって信岡玄を喪ったことは大きかった。

 その後は情緒不安定になり新当桂馬や親と衝突し仕事も辞めてしまった。派遣の仕事やバイトに就いてもトラブルを起こして長くは持たなかった。

 信岡玄との思い出に浸りながらただ食いつないで生きるだけの日々を過ごした。信岡玄にもう一度会いたい、彼に抱かれるならその瞬間に死んでもいい、狂った妄執だけが募っていった。


 ……それが叶って目の前に信岡玄がいる。彼の風貌がすっかり様変わりしていることや攫われて新当桂馬と一緒にここに連れてこられたという状況も、新当絵馬にとっては全て些細なことに過ぎなかった。


 新当絵馬が再会した喜びを爆発させても信岡玄はそれを無視した。

 彼からは大学で信岡聖に起こったことを告げられ、新当桂馬はその真実に青ざめるばかりだった。しかしそれは新当絵馬にとっては今更どうでもいいことだった。むしろ信岡玄もシニコクの呪いにかかっていること、赤い影がセックスで人に伝染ることに興味が向いた。

 信岡玄は新当桂馬をシニコクの呪いで試して報いを受けさせると言った。それに対して新当桂馬は目を背けがたがたと震えるばかりだった。


 そのとき新当絵馬はこの状況が利用できるのではと脳裏にひらめきが走る。新当桂馬の代わりに自分が呪いを被る、そうすれば信岡玄に抱かれたいという願望が叶うのではないかと。

「待ってください! 桂ちゃんの代わりにわたしが呪いを受けます! わたしが玄さんに一生尽くします! それでどうか桂ちゃんを許してください!」 

 新当桂馬が言うと信岡玄はそのときようやく正面から彼女を見た。その目は冷酷そのものだったが新当絵馬には提案を了承された歓びのほうが勝っていた。


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