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シニコク~4259  作者: 桜盛 鉄理
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二百四十九告目  悪は裁かず 32

 新当絵馬の嘘も結局は信岡玄にバレてしまう。「浮気をするようなクズ女よりわたしを愛して」と訴えても彼女の想いは彼にはとどかない。

 電話越しの様子に信岡玄が病院にいるのが分かる。彼が入院している信岡聖の側にいるのを覚って新当絵馬も急ぎそちらへ向かう。

(たとえわたしが隣にいられなくなったとしても……あの女にだけは玄さんをられたくない!)

 彼女を突き動かすのは信岡聖への強烈な嫉妬だった。


 新当絵馬は信岡聖のいる病院を突き止め、信岡玄が外出した隙をついて彼女の病室に侵入した。

「あなたは妹の立場に甘えて玄さんに迷惑をかけているだけよ。どうしてそれが分からないの!」

 新当絵馬はそう言って信岡聖をなじった。通帳を証拠に見せて自分たちがもう一緒に暮らしている間柄なのだと現実・・を突きつける。戻ろうとしてももうあの家に信岡聖のいる場所はないのだと。

「嘘よ……そんなこと兄さんは言ってなかった。これからずっと一緒に暮らそうって。私のこと、ハニーなんて呼んで……」

(何がハニーよ! わたしでさえそんなふうに呼ばれたことなんてないのに!)

 信岡聖の口から漏れた言葉に新当絵馬は思わずかっとなって信岡聖の頬を張る。はっとして彼女を見る信岡聖に新当絵馬は出任せを言う。

「勘違いしてんじゃないわよ! いい? わたしのお腹にはね、もう玄さんの子供がいるのよ」

 言いながら愛おしそうに自分のお腹に目をやり両手でさすってみせる。それを見て信岡聖は嗚咽して涙をこぼしはじめた。それは新当絵馬が待ち望んでいた勝利の瞬間だった。


 ショックで茫然自失の信岡聖を急かして着替えさせ身の回りのものをバッグに詰め込む。書き置きは新当絵馬が書いた。そうして手切れ金として10万円を信岡聖のサイフに入れた。

 人目を避けて裏口から玄関に回り、信岡聖をタクシーに乗せると駅へ行くように運転手に指示した。


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