二百四十二告目 刑部秀穂 5
「はじまりは僕の友達が自殺したことでしたが、嘘告で世の中が狂って壊れていくのを止めたかった。それがシニコクの呪いを生み出した動機です」
人の欺瞞や搾取のせいで世界は自ら腐っていく、刑部秀穂は信岡玄らに持論を語った。
「話が大きすぎるだろ。坊主の説法か」
「まあそう言わずに。元々シニコクの呪いに人を殺すような力はないんです。赤い影のことも身から出たさびと本人が反省すれば、人間社会も過去を許して最後はその人を受け入れてくれる。嘘告がなくなればシニコクも忘れられて世界も本来の姿に戻る。そのはずでした」
「そんなに甘いもんじゃねえだろ。理想を語っても腹は膨れないしクーデターでも起きない限り世の中は変わらない」
俺たちがいなくならないようにな、と信岡玄は自嘲して嗤った。
「はい。それにシニコクの呪い自体が変わりすぎた。多少の犠牲は目をつぶるつもりでしたが呪いが人から人へ伝染ることまでは想像していなかった。その解決のために僕も表に出て手を貸すことにしたというわけです」
「恩着せがましく言ってるが、もとはお前が蒔いた種だろうが」
「それを言われると返す言葉もないんですが、そこは僕もお叱りを受けて反省したので勘弁してください。そのために保持者の協力を必要としているんです。聖さんや真夕貴さんのようなね」