二百三十九告目 刑部秀穂 2
「鎌波? お前……畑中じゃないのか?」
城戸琉侍が畑中敬と思っていた男に声をかける。
「ああ、違わないよ。外見はね」
「傀儡道士は人と感覚を共有したり行動を操ったりできるんです。鎌波くらいになれば人に憑依することも可能です」
畑中敬の言葉を刑部秀穂が補足する。つまり今の畑中敬の中身は鎌波亥縫ということだ。
「それでこいつは何しに来たんだ? 多聞を殺すなっていうのはどういうわけだ」
「鎌波は多門真夕貴の魂を回収しにきたんです。言ってみれば彼女自体が蠱毒なんですよ。そして彼女が死ぬことで完成する。僕はそれを黙って見ていることはできなかった」
信岡玄の問いに刑部秀穂はそう説明した。多門真夕貴が狂ったのも器である彼女が飽和した呪いに耐えられなくなったからだという。
「亀津川一族の失墜に彼女は関係ありません。小出しにしたら蠱毒になりませんからね。多門真夕貴は鎌波を利用するつもりで逆に騙されて利用されたんですよ」
「鎌波……てめえ、よくもお嬢を!」
「それは俺もこいつにいいように使われたってことなのか? 聖のことも蠱毒とやらの材料にすぎなかったってことか? ふざけやがって!」
信岡玄が今度は鎌波亥縫に銃を向ける。それに対しても鎌波亥縫はへらへらと笑ってうそぶくだけだった。
「ははは! よせよせ、こいつを殺しても俺は痛くも痒くもないけどね。まあ、それで気が済むんならそうしたらいい」