二百三十八告目 刑部秀穂 1
「誰だお前。こいつはお前の仕業か」
信岡玄が男に目をやる。銃口は城戸琉侍に向けたままだ。
「すみませんが強硬手段を取らせてもらいました。撃つのをやめれば動けるようになりますよ」
男は刑部秀穂と名乗り陰陽師の末裔だと告げた。この場に後藤柚姫がいれば彼が清水郁巳と気づいたかもしれない。
「陰陽師というならお前もシニコクの関係者か。いまさら出てきて何のつもりだ」
「呪いを止めるため、そう言うと語弊がありますか。これ以上シニコクを悪用されないためですよ」
「悪用? ……どういうことだ」
「ここで多門真夕貴を殺せば彼女を媒介にしてまた呪いが変容してしまう。嘘告と関係なく人を殺せるようになるかもしれません。
でもそれは僕の望んだことじゃない。僕は世の中を変えたいのであって恐怖で縛って支配したいとかは思ってないんですよ。その点に関してはそこにいる外道とは違います」
そう言って刑部秀穂は琉星狼のうちの一人の顔を見た。全員の視線が集まる中、畑中敬というその男の雰囲気が突然変わる。
「久しぶりに会うのに好き勝手言ってくれるな。ああ、ここでは秀穂か」
「お久しぶりです。僕は会いたくなかったですけどね。鎌波の当代」