二百三十二告目 多門真夕貴 13
シニコクの呪いを跳ね返したのは人柱の呪法というらしい。人柱となった動物や人間が避雷針のように呪いを代わりに受けることで亀津川一族が呪われることはないのだという。
「その身代わりを殺すことで呪いは相手にはね返る。いわゆる呪詛返しだ。まあ誰にでもできることじゃない。秘伝だからね」
「それじゃアイツを呪うのは無理ってコトじゃない」
「だから俺が手を貸すというのさ。それが鎌波丹午を殺すことにもなる」
傀儡道士と人柱は霊的にリンクしている状態だという。そして呪いの強さが人柱のキャパシティを越えた場合、その呪いははね返されず傀儡道士を殺し本来の対象者に呪いをかけることができるという。
「それにはシニコクじゃ駄目だ。もっと強い呪いじゃないとね」
「ワタシも死ぬくらいのってコト?」
「そこまでじゃない。だったら君が直接ジジイを殺してくれてもいいよ。そのときは俺が君の代わりに亀津川慎児に呪いをかけてやる。どっちでもいいよ」
鎌波亥縫そう言われて多門真夕貴は前者を選んだ。自分のわがままで父親や組に迷惑はかけられない。
「……それで? 具体的にはどうすればいいの?」
「強い呪いを作るには準備が必要だ。君には人の恨みや悪意を集めてもらいたい。蠱毒の呪法だよ。
ああ、それにはシニコクの呪いはちょうどいいかもね。まあ詐欺師が騙した金で家を建てるようなもんだよ。簡単だろ? ははは」
「分かったわ……それにしても嫌な例えね」