二百三十告目 多門真夕貴 11
兎川橙萌の手紙を読み終えて多門真夕貴は自分の想いが通じていたことを知った。大声を上げて泣きたかったがそれはできなかった。兎川橙萌の代わりの城戸琉侍が父親に大げさに報告するからだ。番犬は必要だが機微には疎かった(そのうっとうしさに辟易して女子校に転校したくらいだった)。
何度も手紙を読み返すうちに多門真夕貴は亀津川慎児への怒りを募らせていく。
ヒーロー気取りで自分から兎川橙萌を奪っておいて、用がなくなれば釣った魚に餌は要らないとばかりに放置する。そんな仕打ちは女を食いものにする三下ヤクザと何の変わりもない。
直接的な暴力や彼の父親を巻き込んでのスキャンダル報道など仕返しの方法はいくらでもあるしいつでもできる。しかしどうせならその前に兎川橙萌のできなかったシニコクの呪いを亀津川慎児にかけてからひねり潰してやろうと多門真夕貴は思った。
しかしそれには呪いを跳ね返したものが何なのかを知る必要がある。多門真夕貴がそんなことを思っている矢先、その答えを持った人物が向こうから接触してきた。
まだ若く見えるその男は多門真夕貴に鎌波亥縫と名乗った。呪禁道を祖とする傀儡道士だと自分で触れ込んだ。