二百二十五告目 多門真夕貴 6
内容を変更します。
亀多田慎児の姓を亀津川に変更。一部内容を修正。
多門真夕貴は入浴中に左胸のその赤い影に気がついた。はじめは傷かぶつけた内出血かと思ったが触れても何の感触もなく、それは見ている間に薄くなって消えていった。学校でも気になりトイレで確認していると赤い影は日に日に現れる時間が長くなっていくのが分かった。
ネットで調べるうちに多門真夕貴もそれがシニコクの呪いだということを知る。呪われるのは嘘告をした人間、嘘告で人を陥れた人間だということも。
多門真夕貴自身に嘘告をした覚えはなかったが、彼女を呪うほど憎んでいる人間がいるとするならばそれは兎川橙萌か亀津川慎児だろうと予想できた。
意に染まない「愛しています」という言葉を兎川橙萌に言わせたこと、それを嘘告と見るならば強要した多門真夕貴は嘘告を仕掛けた人間と見なすこともできるだろう。
そして亀津川慎児に対しては「告白した私に振られるとあっさり兎川橙萌に乗り換えた軽薄な男」と言いふらしていじめを誘ったこと、亀津川慎児に嘘告をされたという噂を流したことがそれにあたるかもしれない。痴漢冤罪をでっち上げたようなものだ。ただし法という表の権力を使ってくる人間がわざわざ呪いに手を出す理由はないだろうとも考えた。
結論として多門真夕貴は呪いを放置することにした。自分から恥をさらすつもりもないが元々がアウトローの世界の住人なのだからと腹をくくった。死ぬことはないようだしヤクザの娘が今更呪いを怖がることもない。場合によってはこれをネタに亀津川慎児を追い込むことができるかも、悪党らしくそんなふうにも考えた。ただし一緒にいる兎川橙萌のことを思えばそんな気は起こらなかったが。
同時にシニコクの呪いが兎川橙萌の復讐なら甘んじて受けようと多門真夕貴は思った。赤い影が浮かぶたびに彼女と繋がっていることを感じられる。それを絆と思って抱いて生きていくのも悪くない。独り寝にそんな感傷に浸った。
しかしその後多門真夕貴のもとに兎川橙萌から手紙が届く。裏に住所も名前もなかったが確かに彼女の字だと分かった。