二百二十二告目 多門真夕貴 3
亀多田慎児の姓を亀津川に変更。一部内容を修正。
「君のことは調べさせてもらったよ。それを公表してどうこうするつもりはないからそこは安心してくれていい。でも兎川さんのことは別の話だ。もういいんじゃないか? 生まれた以上人は誰でも幸せになるべきだろう? 僕はそう思ってる」
亀津川慎児の言葉に多門真夕貴は衝撃を受ける。自分がヤクザの娘だと知られたこともだが、亀津川慎児が自分より兎川橙萌を選んだということ、そしてこの男が兎川橙萌に近づくために自分を利用したのだということに気づいて。
ただそれは多門真夕貴が無意識に兎川橙萌より自分の方が上だと思っていることや、二人がいつも一緒に行動していることが原因なのだが頭に血がのぼっている多門真夕貴はそこに思い至ることができない。
そしてそれを口にする亀津川慎児が笑顔だったことも多門真夕貴の感情を逆なでした。「兎川橙萌を幸せにできるのは僕だけだ」と言われているようで自分の愛を否定された気分になった。そして同時にその笑顔が自分に向けられたものだと勘違いしていたことを思い返して過去の自分を殺したくなる。
(幸せって何よ? アンタが何を知ってるっていうのよ! 橙萌が好きなのはワタシ、ワタシも橙萌が好き。相思相愛なんだから! アンタの入る場所なんてどこにもないのよ!)
「それを決めるのはワタシじゃないわ。好きにすればいいじゃない」
そう言って多門真夕貴はその場を立ち去るが無論そんなつもりはない。