二百二十一告目 多門真夕貴 2
亀多田慎児の姓を亀津川に変更。一部内容を修正。
多門真夕貴が兎川橙萌に対して恋愛感情を持つようになった裏には、女を物のように扱う父親やヤクザという男社会に対する嫌悪感もあった。しかし自分もまた支配する側だと知ったときに、兎川橙萌への愛情も「橙萌は自分のもので自分につくすことが彼女の幸せになるのだ」と変換されていった。夜に彼女と抱き合って眠るときも多門真夕貴を満たすのは昔のような庇護欲ではなかった。
中学に入って多門真夕貴はクラスで亀津川慎児と出会う。側に兎川橙萌を従え人を寄せ付けないお嬢様といった雰囲気の彼女にも、亀津川慎児は空気を読まずに話しかけてきた。
はじめは金持ちの家に生まれ苦労知らずで育ったボンボンという目で彼を見ていたが、真っ直ぐな優等生然とした振る舞いに押されて多門真夕貴も態度を軟化させていった。二年生の修学旅行のときも亀津川慎児は多門真夕貴と兎川橙萌と一緒の班になりお互いの距離を縮めた。
三年生になって多門真夕貴は亀津川慎児に放課後呼び出された。
どうやって断ろうかと悩みながら待ち合わせ場所に向かった彼女だったが、そこで言われたのは予想もしていなかったことだった。
「僕は兎川橙萌を救いたい。彼女を君の奴隷から解放してやってほしい」