二百二十告目 多門真夕貴 1
動機の部分を削除。一部内容を変更。
多門真夕貴はヤクザの娘であることを隠して金持ちの令嬢というふうを装って暮らしてきた。気を許せる友人もなく周囲からは距離を置かれていた。友人がいないのは父親の都合であったり素性が知られたりで転校を繰り返したせいもあるが、「お嬢様」と呼ばれ黒塗りのベンツで学校に送迎される生活に慣れるうち彼女も普通であることを諦めた。
多門真夕貴には兎川橙萌という幼なじみがいた。彼女の父親は亡くなっていて母親と二人暮らしだった。反対に多門真夕貴は母親の姓を名乗っているが母親の顔を知らない。
はじめは兎川橙萌のことを異母姉妹かと思っていたのだが、多門真夕貴を「真夕貴さま」と呼ぶようになり転校先にもついてくるようになると彼女も兎川橙萌の立場を知ることになる。兎川橙萌と母親は父親の残した借金のカタに組に買われたのだと。そして兎川橙萌はわがままな多門真夕貴の身の回りの世話をさせるために父親があてがった奴隷なのだということに。
それを知ってから多門真夕貴は兎川橙萌をそういうふうに扱った。無茶を言って実行できなかった彼女に罰を与えた。多門真夕貴が幼いころに彼女に抱いた淡い感情はねじくれた愛情に変わっていった。