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シニコク~4259  作者: 桜盛 鉄理
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二百九告目  悪は裁かず 16

 その後阿川飛名子もまた信岡聖に会うことはできなかった。周りの好奇の目をおそれて見舞いの機会を逃すうちに彼女は病院から姿を消してしまった。

 そのことを悔やみながらも断罪を免れたことにほっとしている自分がいることに気づき、阿川飛名子は自身の浅ましさを恥じて死にたくなった。そして信岡聖の代わりに自分を罰してくれる存在を求めた。


 大学で今度は自分がいじめの標的になっていることも甘んじて受けるつもりだった。ただし無抵抗という意味ではない。葉見契一の嘘や周りの噂に強く反論し、嫌がられているのを承知のうえでサークルに顔を出し続けた。少しでも信岡聖の名誉回復になればとひとり戦い続けた。


 しかしそれを【あの女】が黙って見ているはずもなかった。阿川飛名子の借金のことも周りに知られてしまい、それが阿川飛名子が援交をしている理由に後付けされた。電話番号やアドレスがさらされ、実際に「愛人にならないか」と誘われたこともあった。

 多勢に無勢で阿川飛名子はじわじわと悪意に侵されて追い込まれていく。


 阿川飛名子が奥村稜を訪ねたのもはじめは彼が自分を罰してくれると期待してのことだった。殴られ蹴られるのも覚悟してアパートのチャイムを鳴らした。

 しかし奥村稜が口にしたのは阿川飛名子を断罪する言葉ではなく、信岡聖への変わらぬ恋慕とあのとき彼女の手をとれなかったことへの後悔だった。

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