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百告目 後藤柚姫 13
「負けないよ……絶対負けてなんかやらないから」
食事を終えて二人で高台の東屋からぼんやりと雲を見つめていると、西木千輝がそう言った。バスケの試合で彼女が口癖にしていた自分を励ます言葉だ。
それを聞いて後藤柚姫は昔の西木千輝が戻ってきた、もう大丈夫だと確信した。
暮林夏凛がこれからどう出てくるかは分からない。2学期になったときクラスに二人の居場所が無くなっているかもしれない。たしかに一緒に卒業したいという思いはある。しかしそれは最優先事項ではない。
西木千輝は学校以外にも自分の生きる場所をみつけた。閉じた箱庭で人と押し合いながら窮屈に暮らさなくてもいいと知った。あの日後藤柚姫の夢を聞いたとき「あたしも何か見つけなくちゃ。先に進まなきゃね」と西木千輝は笑って見せた。
「今度はあたしが柚姫の盾になる。絶対に守ってみせるから」
西木千輝は後藤柚姫の手に自分の手を重ねてそう言った。