勇者達が来る、何故?
一段とはげしく体を動かし、叫び声のような声をあげてヘルは、突っ伏した。荒い息づかいの中で、快感の余韻に浸るように、体をこぎざみに震わせていた。その上に、ノブナガは覆いかぶさった。お互いに顔をよじって、
「愛しているわ、ノブナガ~!」
「俺もだ。」
互いの唇を重ねて、舌を絡ませて、互いの唾液を送りあった。長く、それは続いた。
その時、
「お義母様。ですから、今、父上と母上はですね…。」
息子の声が聞こえた。
「重要なことなのです。直接、ノブナガ様と義姉上に、直接お話ししないといけないのです。」
“フレイアか。それでは、息子には止められないな。”
ドアが開き、金髪のハーフエルフの女が入ってきた。
「せっかくのところよ。少しは遠慮しなさい、フレイア!用事なら、後にして。重大事ですって?そのために、子供達やあんたがいるんでしょ!」
だるそうに体を起こしたヘルが抗議した。
「フェンリルと相談しろ。後で、話を聞くから。」
ノブナガも、そう窘めたが、
「いいえ、直接、急いでご相談しないといけないことなのです!」
「てか、何で、あんた、そんなところで、服を脱ぎ出すのよ!」
2人の前で、フレイアは裸になった。ヘルに負けないくらい魅力的な裸身を晒して、
「私は、ずっとご無沙汰でしたのよ。」
「それは私も同じ。だから、こうして…。」
「あ~ら、戦場でなにもしなかったとでも?」
見透かすようなフレイアの視線を受けて、
「分かったわよ。それじゃあ、こっちにおいでなさい。」
とヘルはフレイアの手を強引に引いた。フレイアがベッドに倒れこむと、
「私達2人がかりでしてあげる、ノブナガもいいわよね?」
ノブナガは苦笑したが、直ぐに狂乱の時間が始まった。フレイアの喘ぎ声がすぐ漏れ出し、喘ぎ声がフレイアとヘルの二重奏になるまでには、さほど時間はかからなかった。
「何があったのよ、一体全体?」
荒い息をしながら、仰向けになったまま、ヘルが尋ねた。
「それがですね。」
やはり荒い息をしながら、あおむけになったままで、フレイアが説明しだした。その2人の間で、やはり仰向けになっているノブナガは耳を傾けていた。
勇者が何人もやってくると言うのだ。
「どうして言いくるめなかったのよ、フレイア?それが、あなたの仕事でしょうが。」
起き上がったヘルが、口を尖らせて詰った。他の魔王の侵攻を撃退、壊滅させたばかりである。決して楽な戦いではなく、色々な面で負担は大きい。さらに、戦いの後始末はかなり大変である。毎度のこととは言え、だ。そんな時に、勇者の相手、しかも複数だ、なんかしている暇なんかない、本当は。
「そんなこと言われても、ヘル姉様…。各国へはそれとなく、魔族の侵攻はないと情報を流していますし、勇者達の動向にも目を光らせていましたよ。勇者のパーティーに、手の者を忍び込ませて、こちらに来ないように、情報を流したりして…、私自身も行ったじゃないですか。ノブナガ様もよくご存知でしょう?」
2人は、ノブナガを見下ろした。フレイアの言い分は分かる、彼は思った。先日までの戦いが始まる少し前まで、彼自ら、勇者のパーティーと行動していた。その時には、このようなことになる雰囲気は感じられなかった。
それが、フレイアが女王として統治しているキヨス公国に、その周辺国、都市に西北の諸国連名で、復活した第六天魔王を倒すために、勇者達が向かうので支援法してほしいという通知があったのだ。そして、その途上にある勇者達のパーティーに、ノブナガ・フレイアの配下が接触、潜入をして、その内容を確認している。そのうち2人の勇者は、ノブナガとは旧知と言ってよい相手である。
「何かおかしいな。」
直接関係ない諸国が動き、勇者が複数差し向けられる等々。
「どうして、そこが分からないのよ?」
「ヘル。そうフレイアを苛めるな。わし自ら、赴いて調べた方がよさそうだ。」
ヘルは、嫌嫌そうだったが、一応頷いた。フレイアは、喜ぶような顔になったが、
「あんたは駄目よ!」
「え?」
「勇者を迎える女王の役割があるでしょう!」
「でも…。」
「私がノブナガと行くわ!」
ゆっくりと起き上がったノブナガに、機先を制するように、
「後は、子供達に任せればいいわ。どうすればいいか指示さえすれば、ちゃんとできるわよ!あの子達なら。」
「私も、子供達に委せれば。」
「あなたは、よく知られた女王様でしょうが。子供達が出たら、あなたの不在の理由が疑われるわよ!」
その通りではあるが、とは思ったが、ヘルの顔を見て、意志を変えられそうもないことが分かるため、
「分かった。ヘル、一緒に行ってもらうか。フレイアも後のことは任せる。」
その言葉に納得した2人は、しばし睨み合った後、頷きあって、
「そうと決まったら、その前に。」
「そうですわね。お義姉様!」
2人してノブナガを押し倒して、その豊かで形のよい胸を押しつけてきた。
“こいつらを守らなければならないからな。しかし、今度ばかりは簡単にいきそうもないような気がするが…。誰が相手でもやらなければならないな。”
ぐったりと満足そうに横たわっている2人を見下ろしてノブナガは思った。
「久しぶりね。3人で旅なんて。」
「そう言えばそうですわ。」
3人での旅とは言っても、フレイアの館までの三日間ではあるし、フレイアの家臣達も何人かいる。“たしかに、100年以上前、ここに落ち着くまでの間、3人で旅をしたな。”少し懐かしく思った。