表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/86

怪我人

「あ!」

ププトが突然声をあげた。

「どうしたの?」

「聖女様。お願いがあります。村を救ってください!」

「聖女様違うから。」

しかも村を救ってください。って何事?

「ヒメカ様、今この村に多数の怪我人がいます。

生きるか死ぬかの者ばかりです。

どうかお力で救って下さい。」

「解った。怪我人のとこ案内して。」

「はい!」


たぶん力になれるだろう。怪我人を治すのは割りと得意だ。

自重したこともない。

ただ病気には無力だった。

末期ガンの老犬と向き合ったことがある。

結果はガン細胞が活性化し、死期を早めてしまった。


「待ってププト。いくらなんでも無理だ。

材料は来た。ポーションを夕刻までには作る。」

私達の行動を遮ったのはスバルだった。

「ポーションだど数人しか助けられない。

聖女様なら皆助かるかもしれない。」

「彼女は聖女様ではない。人では怪我を治せない。

迷惑をかけるな。」

「大丈夫です。私は治療できます。

スバルさん私を信じて下さい。」

二人の会話に割ってはいった。

スバルはそれ以上何も言わなかった。


ププトの後付き歩く。村は静かで人の出歩きがなかった。

しばし、行くと一つの小屋の前に着いた。

ププトはそこに立ち止まり深呼吸をした。

「ここです。ヒメカ様。お願いします。」


部屋のドアが開いた。むあっとした匂いが立ち込める。

目にみえるのは、数十人の怪我人であった。

「ププトさん一番の重傷者は誰?」

「こっちです。」

ププトに案内され近づいたさらに強烈な死臭を放っていた。

患者は足が腐っている。中年の男性だった。

「な!」

私は絶句した。何?これ?何の世界?これが現実?

吐きそうになる。生きているの?


ププトはプルプル震えている。

これが彼女を狼の森へ行かせる原因だった。

姫華もこんな経験はない。

彼女がこの世界に来た原因も

ここの治療のためだったかも知れない。


意を決し、患者に向き合う。

脈は……。ある。よし。いける。


「痛いの痛いの飛んでけ~痛いの痛いの飛んでけ~」


一度目の呪文で、腐食が止まり二度目で足が再生した。

よし。最後。

「痛いの痛いの飛んでけ~」

患者が目を覚ます。

姫華はほっと息を撫で下ろした。


「私は?貴女は?……む、村は!」

患者は突然、立ち上がる。

「父様。」

ププトがそう叫び、患者に抱き付いた。

「ププト。自己紹介はあと!次は!」

あまりの人数。時間がない。

姫華自身も全員治せるか疑問であった。

今の治療でごそっと力を使ってしまったようだ。

「はい!」

ププトにも理解されたようですぐ次の患者へ案内された。


幸い重傷患者は3名ほどで、あとの数十人は重傷ではあった。

緊急度は低い。

姫華は自分が倒れる事なく治療することが出来た。

たが、限界も近い。彼女の披露はピークに達していた。


慣れない治療。へんてこな世界。妙なテンションハイ。

残りの数十人を一気に治してしまおうと、呪文を唱える。

「痛いの、」

「待った!」


その声をあげたのは一番最初に治療した男だった。

「聖女様、無理はお止めください。貴女が倒れてしまいます。」

姫華はその言葉にはっとし、

呪文を唱えるを止め彼の方を見た。

「貴方は?」

「この村の長を務めるプラントといいます。

今ポーションを届けさせますので

その後治療をお願いします。」


彼の提案を受け入れ姫華は休憩することにした。

現状を改めて確認する。

骨折者等は存在したが、命に関わるような人物はいない。

なにより自分自身が非常に眠い。


「プラントさん少し横になりたいのですか。」

「ププト。ベッドを貸して差し上げなさい。」

「はい、ヒメカ様こちらです。」

ププトに案内され、一つの民家にたどり着く。

簡素な作りの家。その奥にベッドはあった。

「ヒメカ様ここが私のベッドです。お使いください。」

「ありがとうププト。」

直ぐに眠りに落ちてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ