表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの王女と真の王女   作者: ありま氷炎
第四章 真の王女
16/23

15


「シアラやボベクさんは大丈夫なのですか?」

 

 落ち着きを取り戻したリーディアはまず最初にそれをエリアスに確認した。

 

「大丈夫だ。怪我をしているものもいるが、命に別状はない。リーディアが一番重症なんだ」

「そうですか。よかった……。私のせいで皆さんにご迷惑をかけてしまいました。怪我が治ったら出て行きますから」

「リーディア。なんでそんなことを言うんだ。君は俺らの家族同様だ。迷惑なんてとんでもない」

「でも、私のせいで……」

「リーディア。気にするな。頼むから」


 エリアスが悲しい目をしてそう言うがリーディアの気持ちは変わらなかった。

 狙いは自分自身であり、犯人はボフミルだと彼女は気がついていた。

全てを思い出したことで、あの通りであった隣国の騎士がボフミルであること、彼女の顔を見て酷く驚いたこと。そのことから彼が彼女の命を狙って、フラングス男爵の屋敷を襲撃したと考えた。

 王女アレナは、ラウラであろう。

 姉が幸せなら、リーディアは名乗るつもりはなかった。けれどもあのボフミルは許せない。ラウラの両親を殺した上、彼女自身を狙うためにまた他の人を巻き込むなんて……。


「リーディア?」


 黙ってしまった彼女にエリアスが訝しげな視線を投げかける。

 彼女は彼に思い出したことを伝えるつもりもなく、ただ屋敷を去ろうと思っていた。


「エリアス様。この度はご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません」

「リーディア!」


 彼にしては珍しく大声を出され、リーディアは目を剥く。


「謝らないでくれ。頼む。詫びをいれたいのは俺だ。気をつけるように父上に言われていたのに。まさか、こんなに早く気づかれるなんて」

「……エリアス様。何を言って、もしかしてご存知なのですか?」

「リーディア……。思い出したのか?」


 咄嗟に聞いてしまったが、エリアスのほうも驚いて逆に質問される。


「思い出したんだな。……いえ、思い出されたのですね。アレナ王女」


 答えないリーディアに対して、エリアスは片膝を付き、礼を取る。


「エリアス様、やめてください!っつ」

 

 止めさせたくて体を起こしたリーディアは痛みの余り、再びベッドに横に倒れこむ。


「リーディア!」


 そうなるとエリアスはすぐに立ち上がり、彼女に駆け寄った。


「……大丈夫です。エリアス様。そのような態度やめてください。私はリーディアです」

「だけど、思い出したのでしょう?」

「その言葉使いも止めてください。私はリーディア。あなた方に名を貰い、拾っていただいた娘です」

「しかし……」

「エリアス。リーディアがそう望むのだ、そうしなさい」

「そうよ」


 エリアスの背後から、フラングス男爵夫妻が姿を見せた。二人とも幾分疲れた顔をしていて、リーディアは申し訳なくなってしまう。


「旦那様、奥様」

「すまないね。今回のことを、事前に予想はしていたのに後手に回ってしまった」

「そんな……ご迷惑をかけてしまったのは私です」


リーディアはドミニクに謝れられ、どうしていいかわからなかった。


「エリアス、心配しているのはわかっているけど、そろそろ解放してあげなさい」


 重苦しい雰囲気が流れたが、それを壊したのは年長者のドミニクで、まずは必死の形相の息子の肩に手を置きなだめてから、彼女に語り掛ける。


「とりあえず今は何も考えずに、ゆっくり休みなさい。リーディア」

「お心遣いありがとうございます。けれども旦那様、一つだけ確認してもよろしいですか」


 以前の彼女であれば、こうして主人に食い下がることはなかった。けれども、リーディアは自身の素性が明らかになっていることから、姉のことが心配になった。これだけは聞かなければならないとドミニクに尋ねる。


「隣国の王女様はまだこちらにいらっしゃるのですか?」


 彼女の質問に彼は眉を顰めて考える仕草を見せた。

 それはリーディアを不安にさせ、幼い時に見た綺麗な姉の顔が思い出される。


「教えてください。どうなったのですか。私が……本当のアレナと旦那様たちが知っているということは、隣国の王女……いえ、姉はいったい……」

「彼女は隣国ハランデンに連れ戻された。安心しなさい。ボフミル・アデミツも一緒だ。本当ならこちらで裁きたいところだけど、隣国の問題になってしまったからね。君のこともハランデンの国王は知っている。書簡が届いているが、もう少ししてから読むといい。今は……」

「旦那様!姉はボフミルに連れ去れられて操られていただけなんです。罪は問われないですよね。罪を負うのはボフミルだけですよね!」

「リーディア、落ち着け」


(そんなの、お姉ちゃんは利用されただけなのに!)


 頭痛が激しくなる。

 蘇る記憶、あの馬車の……。

 ボフミルによって連れ去られた姉の顔は驚きでしかなく……。


 興奮して再び体を起こそうとしたリーディアは眩暈を覚え倒れこんだ。


「リーディア、リーディア!」


 必死に自身を呼ぶエリアスの声を聞きながら、彼女の意識は遠のいていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ