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異世界人の存在意義ってなんですか?


 思った以上に身体が疲れていたらしく、シャワーを浴びたら随分と体がほぐれた。

 今日一日で随分とストレスになる出来事が増えたものだ。

 やれやれ頭をふりながら、バスタオルを身体に巻いてシャワールームから皆の元へ足を運ぶと。


 「お帰りなさい。 服は洗濯に出しちゃいましたよ? 持ち込んだ服が無い様ですので、とりあえずこちらを」


 お礼を言って、アイリさんから渡された服を広げた。

 そして同時に、言葉を失った。


 「……なんですか? コレ。 随分とごっつい……」


 真っ黒な上にゴツゴツしたジャケット、同じ色のズボン。

 そしてそこら中にベルトの巻かれた厨二病全開のデザイン。

 更に灰色っぽいインナーは、やけにぴっちりとくっ付きそうなよく分からない材質のモノ。

 一番近い素材のモノを上げるならスクール水着だ。

 小学校以来のご対面になるが、あの材質に近い。

 しかも上は服っぽい形をしているのに、下は完全にソレなのだ。

 ナニコレ変態衣装?


 「気持ちは分かるが、一応この国から支給される正規品なんだよソレ。 そんな見た目で、随分と頑丈だぞ」


 呆れ気味に呟くソフィーさんだったが、やはりデザイン的には本人も抵抗があるらしい。

 どこか視線を逸らしておられる。

 こんなの着てでっかい剣とか持ったら、神様をイートするゲームにでも登場出来そうな見た目だ。

 丁度腕輪もついてるし、完璧だね。

 ちなみに下着類も全部真っ黒だった、そこまでするかね。


 「一応ここの制服……っていうか戦闘着ですかね? その人の戦闘スタイルによって多少形は変わりますけど、どれも似たようなものです」


 さいですか、皆で真っ黒集団になるんですか。

 ラニに貰った”鎧”を着るよりマシなのかもしれないが、どうにもこうにも抵抗があるなコレ。

 まあ何も着ない訳にもいかないので、コレを着るしかないんですけどね。

 というか何故戦闘服が必要なのさ。

 奴隷同士でコロシアムバトルでもやらされるの?


 「着替え終わったら腕輪戻しておいてね? 外したまま長時間いると、刑期が延びる事もありますから」


 シャワーを浴びる際に外した腕輪。

 言われるがままにおかしな物体に手を翳したら外れた訳だが……そりゃ困った。

 今でも終身刑紛いな身分だというのに、これ以上延びたら……あれ? 本当に終身刑だった場合外しっぱなしでもいいのでは?


 「そういう無駄な事考えてる間に着替えましょうよネコさん……刑期云々の前に、いつまでバスタオルで居るつもりですか。 はしたないですよ?」


 人の思考にいちいちツッコミを入れてくるラニを一睨みしてから、渡された服を身に着けていく。

 うっわー……やっぱりすんごいコスプレ感。

 アイリさんもソフィーさんも私服だから、一緒に居ると凄い違和感放ちそう。


「まぁ、慣れるしかないだろうねぇ」


 クックックと笑っているソフィーさんを横目に、入り口付近に置かれた謎の機械に両手を翳す。

 ピッと音がすると、両手が引っ張られるような形で腕輪同士がくっついた。

 相変わらず謎技術、物自体は首と腕がないペッ〇ー君みたいな形してるくせに。


 「さて、それではネコさんが落ち着いた所で色々説明していきましょうか。 こちらのお二人にはある程度ネコさんの事情は説明済みです」


 僕のプライバシーはどこへ行ってしまったのだろう。

 とはいえまぁ手間が省けて助かるんだけど。


 「しっかし勇者ねぇ……このちっこいのが」


 ちっこい言うな、ソフィーさんだって身長は結構あるが色々ぺったんこじゃないか。


 「ネコさーん、ブーメランですよー?」


 「くっ……」


 心が、痛いです。


 「私も勇者なんて初めて会ったけど……肉体強化だけの勇者って、聞いた事ないわよね……それこそ人族なら誰でも持ってるスキルだし」


 あ、そこまで酷いんだ。

 でも先生も同じだった筈なんだけど、あんなに強くなってたしなぁ……


 「まぁとにかく、やっと時間が出来たので一つずつ説明していきますね? ラニは人族の事情にそこまで詳しい訳ではないので、そちらはお二人に説明をお願いしました」


 「それはどうも、ご丁寧に。 ありがとうございます、アイリさん、ソフィーさん」


 そう言って頭を下げると、ソフィーさんが鬱陶しそうに手を振った。


 「さん付けは止めてくれ、こっちもクロエって呼ぶからさ」


 うんうんと頷くアイリさんも、同じ意見の様だ。

 あんまり呼び捨てって慣れてないんだけど、まぁ本人達の要望なのだから頑張って慣れよう。


 「おっかしいですねぇ、ラニは最初から呼び捨て……っていうか3回に一回くらいしかちゃんと名前を呼んでもらってない気が……」


 「ではアイリにソフィー、今後共宜しくお願いします」


 「ついに無視ですか、ラニの事は放置ですか。 泣きますよ?」


 だってホラ、可愛い子ほど虐めたくなるというか。


 「可愛いだなんてそんな。 ネコさんもやっと素直に……」


 虐めたくなるよね。


 「なんで後半だけ念を押したんですか? お願いですから優しくしてください」


 「ほらほら、僕の思考とばかり会話してないで説明を始めてください。 お二人も困った顔をしていますよ?」


 「ラニが悪いんですかねコレ!?」


 はぁぁと大きなため息をついたラニは、疲れた顔をしながら勝手に人の肩にとまった。


 「それではまずラニやネコさん立場の事から話しましょう。 ラニの様な妖精は、どこにでも居る訳ではありません。 妖精は妖精達だけが暮らす聖域と呼ばれる場所から、滅多に出る事が無いのです。 大昔はそれこそ人目に触れる事なんてありませんでした、でも最初の勇者さんが召喚され、その時にたまたま最初に出会ったのが私達妖精です。 とはいえ当時出会ったのは、”はぐれ”と呼ばれる追放された妖精さんだったみたいですけど」


 「それがきっかけで、異世界から人が呼ばれる度にナビゲーターを申し出る様になった、と」


 「早い早い早い、結果に行きつくのが早いです。 はぐれ妖精が勇者さんと頑張って、色々救ったり妖精の国に帰れるようになったり、人と協力する様になったりとか色々あるのに」


 「だって長そうですし……」


 まだ語り足りなかったらしいラニはガックリと肩を落としながら、再びため息を溢した。

 目の前で座っている二人に関しては、小さな笑いを堪えている様にプルプルしている。

 退屈ではなさそうなので何よりだ。


 「まぁいいです……とにかく妖精は魔法の発現に敏感です。 なので予兆があると選ばれた一人がその場へ向かい、まず最初に勇者の方と接触する様にするのが今では当たり前になっています。 そして今回はラニが担当する事になった、という訳ですね」


 「チェンジって出来ますかね?」


 「どうしてラニにそこまで不満があるのですか!?」


 ぜぇぜぇと息を荒げてまで、大きな声でツッコミを入れなくてもいいのに。

 頑張り屋さんのラニにはご褒美をあげよう、ホラ不思議な名刺ケースだよぉ?


 「わーい、ネコさんから初めてのご褒美ぃ……って嬉しくないです! 普通に返品しないで下さい! それネコさんの最重要と行っていい程の装備ですからね!?」


 チッ、ダメか。

 これを使うくらいなら、今からでも何か違う武器に変えてほしいんだが。

 何でこんな物を目の前に掲げて、大声で恥ずかしい台詞を吐きながら鏡の世界に飛び込むような姿に変身しなければならないのか。

 誰だって人前ではちょっとご遠慮したいだろうに。


 「ちょっと鏡とか何言ってるか分かりませんけど、ソレすっごく貴重な品ですからね? 初代”製造”のスキルを持った勇者さんが作った、二つとない代物ですからね!? 他の人には作れないんですよ勇者武器の数々は! もうちょっと大事にしてください」


 「え、鎧は二つあったじゃないですか」


 「……過去の書物によると、色違いのケースが欲しかったそうです」


 初代勇者、自由だな。

 もしかしてあれか、街中走っている車とかもソイツの影響か?

 だとすると結構現代人?

 呼んでくる時代とかはあんまり関係ないのかな。

 次に呼んだら江戸時代の人がきちゃったりとか。


 「おおむね正解です。 異世界召喚で呼び出せる人間というのは、完全にランダムです。 時代、性別、年齢、それら全てがランダムですが、一つだけ正確に決まった事があります」


 「といいますと」


 「それは“日本”という国の住人である事、です。 最初の召喚は偶然が重なって出来たモノでした。 本来なら最初の一人だけで終るはずだったんです、ですが最初の勇者が帰る為に”召喚魔法”をより確かな魔法として作り変えた。 そして自らの故郷に帰る為に、おおまかな場所の指定まで魔法陣に取り入れてしまった結果、今ある勇者召喚の魔法は日本という国からしか呼べないという制限がある訳です」


 何と迷惑な話だろうか。

 詰まる話ソイツのせいで勇者を召喚する技術は確かなものになり、しかも”製造”とかいう訳の分からないスキルがあったが為に、この世界は変な所で技術力が高いのか。

 当の本人は帰れたのだからいいかもしれないが、こっちとしては大迷惑だ。

 誰だよソイツ、ちょっと表に出ろよ。


 「そんな訳で各国は勇者を何人も呼び、それぞれの国が勇者ならではのスキルや知識を求める様になりました。 その私利私欲に塗れた思考が嫌になり、妖精達は一時期人族に手を貸す事を禁止しました。 しかし、その結果が……」


 「勇者の奴隷化、人族の間じゃ有名な話さ。 こっちに呼ばれたその日に訳も分からぬまま近くの国に捕まって、スキルや技術を死ぬまで要求される。 詰まる話国にとって”勇者”ってのは、とんでもない力や知識を持った貴重な資源でしかない。 文字通り道具の様に扱われた訳だ」


 ソフィーが苦い顔で説明してくれる。

 その表情から、国の姿勢に嫌悪感を抱いている様子がありありと伝わってくる。


 「でも今ではまだマシになった方なんですよ? 以前の様に強制的に、という訳ではなくあくまで自主的に協力を促そうとする姿勢になっていますから。 まぁ求めている所は変わらないんでしょうけどね……」


 アイリも悲しそうな表情で俯く。

 これまで何人の人間がそんな扱いを受けて来たのだろう。

 直接会った事はないと本人が言っていたが、もしかしたら教科書に載るくらい有名な出来事だったのかもしれない。

 でも待てよ、それだけ強い力を持った人間が抗わなかったのか?

 僕みたいなハズレだった場合ならまだしも、アタリを引けば先生みたいに超強力なスーパーマンモドキになれたのではないか?


 「そう考えるのが自然でしょうね、でもそれをしないのが“日本人”という種族だったのですよ。 ネコさんなら出来ますか? 国の国民全てを虐殺する事が。 または王族や兵士を殺してその国が廃れていく事態を、貴女は良しとしますか? それが出来ない心優しい種族だと、ラニは聞いています」


 ごめん、多分僕ならやるわ。

 単純に圧倒する火力がないのでやらないだけです。

 一人で国を落せるなら、多分やります。

 だって全く知らない土地に勝手に呼ばれて、その上強制労働ですよ。

 普通やらないでしょ、相当報酬が良くない限り。

 僕だったら国の一つや二つ滅ぼしてでも、自由になりますよ。


 「なんというか、真剣に話しているのにこう……あぁもう。 では聞き方を変えます、城に居る人間を殺しつくさない限り自由にはなれない。 その中には良い人も、目の前のお二人だっているかもしれないんです。 その状況でもネコさんは殺しますか?」


 そういう聞き方はずるいと思うんだ。

 ラニは僕の思考と会話しているはずなのに、内容を理解した様に二人はこちらに視線を向けてくる。

 そうか、こういう状況になれば確かに戦えないかもしれない。

 しかも二人は奴隷だ。

 彼女達だけ逃した所で、上の人間から命令されれば何度でも戦う羽目になるだろう。

 では上の人間を殺せば、なんて思ったりもするがそもそも奴隷に命令が出せる立場の人間とはどういった人物なのだろうか。

 分からない事ばかりだからこそ、力を持っていても下手に暴れる訳にはいかないんだろう。

 勇者の奴隷化なんて言ったし、僕みたいに拘束されていたのかもしれない。


 「つまり勇者は道具であり、各国が力の象徴や技術発展の為に欲しているだけに過ぎないって事でいいんですかね?」


 ある種思考を切断して、ラニを睨むように会話をつづけた。

 すると気まずそうに視線を逸らす彼女に代わって、ソフィー達が会話を繋げてくれる。


 「人族の主張としてはそれで間違ってないな。 勇者が居るだけで人同士の戦争を回避出来たり、まだ見ぬ技術を持っている勇者なんか金の生る木だ。 逃がす手はない」


 「くそったれもいい所ですね、言葉は悪いですが」


 「ほんと、その通りだよ」


 乾いた笑いを上げた後、チッと舌打ちするソフィーは多分この考え方が嫌いなんだろう。

 見ているだけで分かる程不機嫌だ。

 そんな彼女にため息を溢しながら、先程まで顔を歪めていたアイリが笑う。

 悲しそうな顔で、乾いた笑顔で。


 「それでも私達の生活が、勇者達の多大な影響を受けている事に変わりはない。 今更勇者召喚を否定するのは虫のいい話なんだろうけど、それでも気分の良いものでは無いわよね。 こんな意見ですら、私の傲慢なんでしょうけど」


 彼女もまた、ソフィーと同じ意見の様だ。

 まぁ多くの人を管理するような立場にならなければ、全体の利益を優先するという思考にはならないだろう。

 彼女達の意見は人として正しいモノだが、国のトップとなればまた違ってくる。

 国民の生活水準を高め、問題を解決し、そして金を稼ぐ。

 そう考えれば、ある意味当時の王様達の行動も間違っていないのだ。

 勇者たちによってもたらされた影響を、本当に民にまで反映させていれば、だが。


 だが死ぬまで奴隷というのはやり過ぎの様に感じる。

 初代ならまだしも、その後は自分達の意思で呼び寄せたのだ。

 自らの我儘で別世界から連れ去って来た相手なのだから、先ずは相手を納得させる交渉から入るべきだったのではないか?

 帰りたいというなら返す、残りたいと言うなら交渉する。

 それが出来ないのなら、ただの誘拐に他ならない。

 世界を跨げば法律云々は関係ないかもしれないが、人として終っている。

 間違いなくぶん殴っていい相手だ。

 もしくは“そうせざる負えない”国としての理由があったのか、もしくは問題は“勇者”側にあったのか。

 それは流石に分からない話だが。


 「そういう訳で、人間の間では勇者とは非常に影響力が強い存在だという事です。 ですが妖精にとっては違います。 寄り添うべき隣人、協力しあう友。 だからこそ純粋に、今の時代に呼ばれてしまった勇者に寄り添い、この世界を初代勇者の様に楽しんで頂いた上で、協力を求める。 帰りたいと言われれば、それに協力する。 それがラニの様な、妖精の務めです」


 「最初から失敗してませんかね」


 「ネコさんは、ちょっと特殊ですからね! カラスさんは楽しそうだったでしょう!?」


 詰まる話人間の偉い人に捕まる前に異世界堪能ツアーをさせて、異世界人にこの世界を気に入ってもらいましょー的な役割が妖精って事でいいのかな。

 とはいえ、妖精も妖精で色々と求めている物がありそうだが。

 流石にコレばかりはラニに聞いたところでお話にならないだろう。

 この子純粋に言われた事だけに精いっぱいって感じがするし、相手を騙すには腹芸が下手過ぎる様に感じる。

 とはいえ流石に、そこまで“慈善事業”をする種族がいると簡単に信じられるわけではないが。


 「疑われる事は分かっていますが……それでも」


 「別にラニを疑っている訳ではありませんよ。 疑いを持つなら、もっと上の存在でしょうね。 っていうか、それよりも……」


 残念な事に、今回は初日で大失敗してませんかね。

 アルコール大国に異世界人二人が捕まった上、片方はこうやって奴隷に落ちてしまったわけだ。

 え、なにこれ最悪じゃん。

 ラニ、君妖精クビになったりしない?


 「だ、大丈夫だと思います……多分」


 「まぁそれはいいとして、話を戻しましょう。 そもそも人の街に近づかなければよかったんじゃ?」


 話を戻し、別の議題を繰り広げればラニは水を得た魚のように元気になった。

 こいつ絶対自分の失敗を思考の隅に追いやっただろ。

 思考が読めているにも関わらず、いかにも気づいていませんって笑顔で再び口を開いたし。


 「過去そうしてみた事もあったんですけどね、妖精の国に行ったりとか。 でもいざ連れて行ってみると皆飽きちゃうんですよ、何にもない森なので。 それで人の街に行きたい―って言い出す事が多かったので」


 「あぁ、そういう……」


 確かにね、飽きるかもね。

 でも首ちょんぱよりマシだと思うんだ。

 とはいえ実際来てみないと分からない事だし、こればっかりは仕方ないか……

 しかし話を聞く限りでは国は異世界人、もとい勇者は絶対欲しい訳なんでしょ?

 何で僕初日から首ちょんぱされそうになった訳?


 「あぁそれはですね、多分力の象徴としてはカラスさんだけで十分と判断されたんでしょう、一日で討伐歴が圧倒的でしたし。 そして都合よく犯罪歴があったネコさんには終身刑とかの口実を作って、牢獄でゆっくり異世界の情報を引き出そうとしていたのではないかと。 なので”処分”なんて言ってましたが、死刑になることはまず無かったと思いますよ?」


 「どっちにしろ最悪ですねぇ。 ちなみに帰る事ってどうやったら出来るんですか?」


 「出会った事に言った通り、帰るのに必要な条件は“魔王”の一人を倒す事。 今使われている勇者召喚の魔法に、条件として組み込まれているそうです。 なので一人でも魔王を倒せば魔法が再発動し、元の世界へ帰れるという仕組みになっています」


 ん? ちょっと待とうか。

 今までの話だと、結構勇者って多いんだよね?

 なのに魔王を倒したら帰れますよっておかしくないか?

 それ取り合いにならない? 勇者同士でデスゲーム始まっちゃわない?


 「あぁーえっと、結構勘違いされる勇者様が多いらしいんですが、魔王は一人ではありません。 それこそ国を治める人族の王が多数いる様に、魔族の収める国のトップが魔王。 そして魔族の国は、人族とそう変わりないくらいに存在しているんですよ」


 あぁーもう、わっけわかんない。

 魔王だ勇者だといちいち物々しい言い方をしているが、結局これって種族争い?

 向こうさんが世界征服だぁとか言っている訳でもなく、単純に戦争してるから強いの味方に付けようぜって事で、僕ら呼ばれた訳?

 そして帰れる条件が、相手国トップの首を取る事と来たもんだ。

 何それ無理ゲー。

 はぁぁと大きくため息を溢した所で、アイリとソフィーが励ます様に笑顔で声を掛けて来た。


 「ま、まぁそんな悲観した顔してないでさ。 とりあえず夕飯でも行かないか? そろそろいい時間だし」


 「そ、そうですね! 食堂に行きましょう? そこで私達が優良奴隷というものについて説明しますから。 美味しいものでも食べて、一旦思考を落ち着けましょう?」


 二人からそう言われて、新人説明会は一旦幕を閉じた。

 どブラックな世界に片脚突っ込んでしまった絶望感が半端じゃないが、今すぐ帰れないのだから仕方がない。

 とにかく情報収集して、帰れる道筋を捜すべきなのだろう。

諦めに近いため息を溢しながら、私達は部屋を出たのだった。



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