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戦場、筋肉、魔王?


 「ビックリするぐらい……活躍してますよね、アレ」


 指さす先には、戦場を駆けまわる銀色の閃光。

 通常だったら考えられない位の速さで敵陣を食い荒らし、殲滅しながら突き進んでいる。

 相手方も“彼”という存在を重く見たのか、銀鎧の周囲にばかり追加の戦闘員を投入してきているように見える。

 もはや無双ゲーだ。

 彼がアクションを起こせば、いくつもの敵が吹き飛んでいく。

 あんなの、完全に“主人公”って奴じゃないか。


 「クロエ、私達もいかなければ」


 さっきまでリーダシップを示していた金髪イケメンが、完全装備で僕の後ろに付いた。

 おい、止めろ。

 そういうことすると、僕が決定権持っているみたいだろ?


 「討伐歴を見ましたけど、アレだけやれるクロエの後ろなら安心して魔法を使えますね」


 そういって、真っ黒いシスターさんが満面の笑みで杖を構えた。

 止めろ、本当に止めろ。

 討伐歴ってなんだ、君たちの前だとろくに活躍してないよね?

 戦場では皆に守られながら吐いただけだよね?

 全く役に立たないという評価ならまだしも、なんでこんな皆期待の眼差しを向けてるの?

 馬鹿なの?


 「一晩で三桁以上だもんな……殲滅魔法連発出来るんならまだしも、普通は無理な数字だ。 期待してるよ、クロエ」


 そんな台詞を吐きながら尖がり帽子をかぶり直す魔術師。

 おい待て、お前ら待て。

 何かおかしくないか?


 「さぁ行こう、銀鎧に負けてなどいられない! 僕たちの力を見せてやろう!」


 意気揚々と叫ぶとこ悪いんだが、嘘やろ?

 この勘違い王子だけならまだしも、残る二人はノッてるだけだよね?

 本気で戦場に突っ込んで活躍しよう、とか思ってないよね?


 「残念なお知らせです。 皆さん、ガチです」


 ラニの無慈悲な声が聞こえ、目の前が真っ暗になった気がした。

 マジか、お前らマジか。

 見るからに常軌を逸してるこの戦場に、自らの意志で中心に飛び込もうって?

 嘘だろ?

 敵の数ヤバいし、銀鎧無双してるし。

 このまま放っておけばいいじゃん。

 そんな事を思う僕の肩に、金髪王子が手を置いてほほ笑む。


 「細かい指示は私が出すから、君も暴れてくれていい。 大丈夫、君ならこの戦争を終わらせられるさ。 君には、その力がある!」


 うるせぇよ。

 この大惨事を拳一つで納められるとか本気で思ってるのか。

 僕にはこの戦争を終わらせる力どころか、そもそも有能な“スキル”がないのだ。

 “鎧”を使えば時間制限が発生し、ソレが終われば皆に迷惑を……


「ネコさん、逆に考えましょう。 ここで“魔王”を倒せば元の世界に帰れます、その為には敵陣の奥まで突っ込む必要があります。 そして今ネコさんの周りには仲間が居ます、コレは利用するくらいの気持ちで攻め込むのもアリなのでは? ネコさんの悪運を身近で見ていると、さっさと目的達成しちゃった方が良い気がします」


 最後の一言は非常に気になるが、確かにラニの言う通りだ。

 ここに居るのは殲滅魔法とやらを扱える魔導士、ソフォー。

 どこか欠損しても直してくれる、その上ボマーの爆炎さえ防いでくれるアイリ。

 そして仰々しい程のデカい盾を持って、更にタンクを務めると自ら言ってのけるスミノ王子が居るのだ。

 これは確かに“魔王”とやらを倒して、元の世界に戻るチャンスでは?


 「まぁ、ここで待っていても魔王だけ来てくれる事なんて無いでしょうからね。 数で攻め込まれる前に向こうで鎧使えばいいか……。 それじゃ、皆行きますか。 先生がある程度散らしてくれるでしょうから、正面突破です」


 グッとグローブに包まれた拳を握り、正面を睨んだ。

 正直甘すぎる考え、防衛戦だというのに行き過ぎた行動。

 それでも、僕の発言を否定する人間は居なかった。

 だからこそ調子に乗ったのかもしれない。

 いざとなれば、“鎧”を使えばいい。

 そんな事を考え、軽く考えていたのだろう。

 この選択が今後の生活、それどころか人生を左右するビッグイベントだとは知らずに、僕は戦場に向かって駆けだした。

 何も知らないクソガキが、調子に乗って“勇者ごっこ”をし始めた瞬間であった。


 ――――


 「ソフィー! 前方に向かって爆撃を!」


 「あいよっ……踊り狂え、獄炎の残り火よ! “ジライヤ”」


 呪文を唱えると、目の前に居た魔獣の集団が燃え上がった。

 オーク、コボルドくらいならまだわかる。

 それの2倍くらいデカい個体は何だ? 鬼みたいな顔してるけど。

 あ、もしかしてオーガってヤツ?

 よく分からないが、いろいろな種類の敵が一瞬にして灰になった。

 やっぱりソフィーの魔法は凄い、他の人とは一線を凌駕しているように感じる。


 「クロエ! 少し止まって、来るわよ! “障へ――」


 「バカッ! こんな所で上位魔法を使うんじゃねぇ! 魔力が足りなくなるぞ!」


 「……っ! 我らの身を、襲い来る脅威から守りたまへ。 “プロテクション”」


 ソフィーの声と共にアイリは呪文を唱え、魔法を発動させた。

 目の前に幕の様な壁が現れ、魔獣達の放った矢や魔法を全て撃ち落とす。

 これだけでも十分凄い魔法だと思うんだが……ボマーから守ってくれた時の魔法はもっと凄いモノだったのか。

なんて思っている内に、一本の矢がアイリの作った壁を突き抜けてこちらに向かってきた。


 「クロエ!」


 「問題ありません」


 飛んできた矢に横から拳を当てて、地面に叩き落す。

 これも随分練習させられた事だ。

 実際に矢じりが付いていると考えるとゾッとするが、道場の人に比べれば随分と良心的な撃ち方だ。

 この程度なら見てから回避、もしくは撃ち落とすことが出来るだろう。

 こっちはフルオートのガスマシンガンで避ける、防ぐ練習をしてきたのだ。

 獲物がデカい分払い落すのも容易い。


 「良かった……」


 やけに胸を撫でおろすアイリを不思議に思いつつも、正面を睨めば王子が魔獣の攻撃を一身に受け持っていた。


 「“ヘイトコントール!” くっ……まだダメか、なら……“生贄!”」


 何やら物騒な言葉を叫んだ瞬間、王子の周りの魔獣が一斉に彼を狙い始めた。

 いくら何でもコレは多すぎるのでは……?


 「ソフィー! やれ!」


 「あぁもう! こんな序盤で連発させやがって! かの者を中心とし、その周囲を燃やしつくせ! “フレイムウォール!”」


 彼女が叫ぶと同時に、王子の周りから炎の壁が立ち上り魔獣を一掃して見せる。

 確かに凄い、凄いけど……なんかソフィーに物凄く負担掛かってない?


 「ったく……人使い荒い――」


 「ソフィー、後ろ! 神の御手により、その者を脅威から救いたまえ。 “アイギス!”」


 アイリが叫ぶと同時に、ソフィーの背面に目で見える程度の透明な壁が現れる。

 ハチの巣の様な形が、光に反射して“そこに何かがあるのだ”と認識が出来る壁。

 それに数匹の狼がぶち当たり、情けない声を上げる。


 「任せろ! せいっ!」


 掛け声を上げた王子が、片手で持っていた剣を狼に振り下ろした。

 ついでとばかりに、周囲に居た魔獣にも剣を振るっていく。

 脳髄が飛び散り、内臓が溢れる。

 ソフィーの魔法でやられた魔獣は、真っ黒こげになっていたからまだマシだが……改めて見るととてつもない吐き気を催してきた。

 僕はコレを……平然とヘルフの森でやっていたのか。

 慣れたと勘違いして、この拳で叩き潰していたのか。

 そんな事を考える度、視界が揺れていく。

 あ、不味い。


 「しっかりしてくださいネコさん! 帰りたいんでしょう!? こんな所でへばっている場合じゃありませんよ!?」


 いつの間にフードから出て来たのか、よく知る妖精さんが僕の頬を思いっきり引っ叩いていた。

 そりゃそうだ、今更こんなことで気を失ってはいられない。

 それどころか、こんな所で意識を失えば周りの仲間にも影響を及ぼすだろう。


 「あぁもう、ほんとに……このまま突破します! “魔王”とやら倒せば終わりでしょうから、このまま突き進みます!」


 頭を何度か降って現状を再確認した後、改めて皆に指示を出した。

 本当にこれで良かったのか?

 皆に無理をさせ過ぎてないか?

 生きて帰れるのか?

 そんな事ばかりを考えるが、魔獣は絶え間なく襲ってくる。

 狼っぽい何か、多分オーガやワーウルフ。

 たまにでっかい体の獣とか爬虫類っぽい何か、アレは無理。

 その辺は無視したが、大体は首を90度以上回せば大体大人しくなった。

 他の皆に比べて殲滅速度は遅いが、確実に進んでいく事が大事だろう。


 「あぁもう、邪魔!」


 いちいち背後に回るのが面倒になり、正面からぶん殴り始めた訳だが……効果はいまいちだ。

 ゴブリンくらいならまだなんとかなるが、他の個体は一発や二発殴ったところで意識さえ刈り取れない。

 やはり体重と筋力が足りないのか……王子は一発で沈んだのに。


 「なぁ……クロエ? 本気出していいんだぞ?」


 「しっ、言わないの。 きっとまだ温存しているんでしょうから」


 「先を見越しての行動か……素晴らしいよクロエ」


 なんか、好き放題言われている気がする。

 おかしいな、失望してくれてもいいんだよ?

 違うからな? 手抜きしてるとか、力を温存しているとかじゃないからな?

 全力だよ、思いっきりやってこれなんだよ。

 むしろ君らが派手にパフォーマンス決めているだけで、これが普通の人なんだよ。


 「おーおー、随分楽しそうだなぁ」


 不穏な空気をブチ破る、楽しそうな声が上空から響いた。

 え? なんて間抜けな声を上げながら視線を上に上げると。

 そこには翼の生えた角刈りタンクトップが。

 非情にキモチワルイ。

 翼とビジュアルが全く合っていない。

 キャラクリからやり直せ、チェンジ。


 「クロエ! 下がるんだ!」


 「“障壁”!」


 僕の呑気な感想と打って変わって、以前の様に王子とアイリが真上に壁を作る。

 次の瞬間、紫色の炎が周囲を包んだ。


 「あっつ!? なにこれあっつ!?」


 直接炎に触れている訳でもないのに、サウナの2倍くらい温度が上昇した気がする。

 僕達以外にも周りには人や魔獣が溢れていたが、炎に触れた彼らは一瞬の内に炭化し、その場に倒れた。


 「お前は……“大食い”!?」


 炎が止むと同時に、王子が険しい声を放った。

 大食い……うん、確かによく食べそうな体格をしておられるが。


 「ご名答、俺の名前は“マスカ・ル・ポーネ”。 ウチの魔王の命令で、お前らを殺しに来た。 悪く思うなよ? 人間」


 ち、チーズみたいな名前ですね?

 子供の頃とか馬鹿にされなかった?

 皆からなんて呼ばれてた? おい、ル! とかチーズ! って呼ばれた事ない?


 「まじぃな……“二つ名”持ちだ」


 デザートにも使われる柔らかチーズを前に、ソフィーが舌打ちをしながら上空を睨んでいる。

 とてつもなく悪い相手を引いてしまったのは雰囲気的に分かるが、名前からしてどうしても気が抜けていく。

 どーしましょ、すっごく強そうだけど、すっごく反応に困る。


 「ネコさん! 馬鹿な事考えてる場合じゃないですよ! 相手は二つ名持ちの魔族です、強敵ですよ!」


 さっきまで引っ込んでいたラニに、渇を入れられてしまった。

 普段なら反論する所だが、今は戦場。

 気を引き締めなければ。

 けど、マルカル〇ーネかぁ……


 「一つ、今回の戦争は必ず勝つ。 一つ、王の首は取らず拘束する事。 一つ、邪魔になりそうな奴らは俺ら下のモンで片を付けておくこと。 光栄に思え、お前らは俺の目に止まる程の強者だ!」


 なんの話やねん。

 地面に降り立った翼の生えたエンジェ……じゃなかった、角刈りタンクトップに冷めた視線を送るが気づいてもらえない。

 あっ、僕は見る価値無しの雑魚扱いですかそうですか。

 見る眼がありますね、貴方。


 「くそっ! 守ってばかりでは確実にやられる! こちらから攻めなければ勝機は無いぞ! クロエ、どうする!?」


 おいこら金髪王子。

 今攻めなきゃやられるって言ってたよな?

なんで僕に確認を取る必要がある。

攻めなさいよ、最前衛でしょう貴方。


 「はっ! 悩んでる時間があると思ってんのか!?」


 見た目と名前とオプションパーツにギャップしかない角刈りが、大きく両腕と翼を広げた。

 そして何故か片足も上げる。

 何それグリ〇?

 なんて下らない事を考えている内に、彼の足元から広がる黒い影は辺り一面に広がり、転がっている死体を飲み込み始めた。


 「不味いですよクロエ……相手は死体を喰らうごとに強くなると言われています……このままでは」


 アイリが唇を噛み締めながらそんな事を呟く。

 マジか、お前そういうアレか。

 大食いってそう言う事か、もう少し美食センスを磨きなさいよ。


 「クロエ、大丈夫だ。 私達は常に君と共にある!」


 何やら訳の分からない事を叫んだ王子が、僕の前で盾を構えた。

 いや、お前はもう少し状況を見て言葉を発しようか。

 無理でしょコレ、死体を食べるごとにって言ってたよ?

 周りにどれくらいの死体があったと思ってるのよ、敵味方合わせてとんでもない数があったよ?

 今あの人のステータス跳ね上がってるんじゃない?


 「きっと何とかなる……生きて帰ろう。 そしたら私達は”自由”だ!」


 さっき値段交渉していたソフィーが、そんな事を言いながら杖を構えた。

 凄い、皆凄い。

 こんなのに勝つつもりでいるんだ。

 やべぇよ、目の前の体育会系角刈りさん。

 食べて元気になったのか筋肉がピクピクしておられるよ。

 正直近づきたくない。

というか僕らと次元が違うオーラを放ってるんだけど。

何あれボス?

あ、中ボスでしたか。

うん、無理。


 『随分と元気だなぁお前ら。 来いよ、遊んでやる。 ほら、どうした? ビビってんのか?』


 もはや筋肉の化け物に成り代わった角刈りが、楽しそうに口元を吊り上げる。

 ヤダ怖い、たんぱく質の塊が喋ってる。

なんて、いつまでも現実逃避している訳にもいかないんだが……本当にどうしよう?


 「いやだなぁ……なんで僕がこんな目に、というかコイツめっちゃ強そうなんですけど」


 多分さ、レベルとかあったら僕が10くらいで、相手は150とかだよ。

 勝てないって、逃げようよ。

 まぁ逃げ道があるとも思えないけど。


 「どーしよ……勝てる気がしないわ」


 とりあえず拳を構えてはみるが……僕の小さい拳が彼に効くイメージが全く湧いてこない。

 もういっそのこと“鎧”を使ってしまうか。

 というかココで使わなかったらいつ使うんだよ。

 そんな事を考えながらポケットに左手を伸ばした瞬間。


 「どっっせぇぇぇい!」


 やけにけたたましい声を上げながら、銀色の隕石が降って来た。

 その衝撃はすさまじく、危うくバランスを崩してコケる所だった。


 「黒江! 俺、来ちゃった!」


 土埃が風に流されれば、さっきまでチーズさんが立っていた位置に見たことのある銀鎧が立っていた。

 グッと親指を立てながら、足元にさっきの魔族を敷いている。


 「あ、はい」


 フルプレート鎧だから表情までは分からないが、多分満面の笑みを浮かべているのだろう。

 とんでもなく鬱陶しい、というかどこから飛んできたお前は。


 「とりあえず、トドメは指しておいた方がいいか……」


 そんな事を言い放ち、足元の首のない死体に向かって拳を叩き込む銀鎧。

 おいそれオーバーキルだって。

 止めてやれよ。

 ていうかグロイから止めて? ね?

 お前の良く分からない威力の拳で、大地とか割れちゃってるし。

 ね? やめよ?


 「おい黒江、こっから先はマジで危ないからお前は下がれ。 黒い方じゃ、長時間戦えねぇだろう?」


 「はい?」


 急に何を言い出すのか。

 ここまで来て下がれって、馬鹿ですか貴方。

 敵陣のど真ん中ですよ、一人で無事に帰れるわけ無いでしょうに。


 「心配するなカラスマ殿、クロエには私達もついている。 このメンバーでこのまま攻め込めば、きっと――」


 「魔王を倒せるってか? ちっと甘いんじゃないか? 何を根拠にそんな事言ってやがる」


 スミノ王子の言葉を、先生が遮った。

 え? この人どうした?

 何がどうなってこんな真面目な会話をしているんだ?

 普段は食料と筋肉の事しか気にしていないような人物が、なんでここに来て真面目ぶっているのだろう。

 馬鹿なのだろうか?


 「いや、そこまで楽観視している訳ではないが……どうしたんだカラスマ殿? 普段と雰囲気が……」


 「……なんでもない。 お前たちは早く猫を連れて帰れ、ホラ帰れ。 魔王が出たら殺さずに連れ帰ってやるから、な?」


 何だろう、凄く嫌な感じがする。

 先生が僕の事を“猫”って呼んでるし、意味不明な発言をしてるし。

 なにこれ、どういうこと。


 「ラニ、聞こえますか」


 「……はい」


 フードからゆっくりと顔を出したラニが、どこか気まずそうに顔を背けている。

 おい、お前までおかしくなるのかよ。

 止めてくれ、これ以上不安要素は必要ない。


 「今の先生の心境を読んでください、何を考えているのかさっぱり分かりません」


 そうとだけ告げて、先生に視界を戻すが……いつまで経っても答えは帰ってこなかった。


 「ラニ?」


 「ごめんなさい……お答えできません……」


 「は?」


 帰って来たのは、とてつもなく期待外れな答えだった。

 え、何言ってるのこの子。

 思考を読むくらい朝飯前だろうに。

 そもそも答えられないってなんだ、分からないならまだ分かるが、お前まで何を言ってるんだ。


 「いや、今は冗談を交わしている暇は――」


 「……守りたい、そう願っているのは確かです。 今度は守りたい、死なせたくないって、カラスさんは本気で想っています。 それ以上は、“約束”……なので」


 コイツは、本当に何を……


 「随分暴れてくれたようだな。 私がお相手しよう」


 再び上空から声が聞こえ、視線を向ければ赤いドレスを纏った黒髪少女が舞い降りて来た。

 今度は何だ、また二つ名持ちか?

 もうどうでもいいが、気になる事が多すぎ頭がパンクしそうだ。


 「私はホロ。 魔大陸、ホロ・ヨイン国の魔王。 幹部が居ない以上……私が直々に相手を務めよう」


 思った以上に大物だったようだ。

 


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