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やっぱり力が手に入ると、人間って調子に乗りますよね?


 「お前たちそこで止まれ!」


 ゴブリン達のリーダーを殴ったら上半身がどこかへ蒸発してしまい、色んな意味で落ち込んでいる僕の耳にそんな声が届いた。

 未だ脱げない黒い鎧が、重そうな金属を立てながらそちらに視線を投げる。

 すると……


 「第二のエルフっ子キタコレ!」


 銀鎧の変態が誰よりも早く反応してしまった。

 ファーストコンタクトは大失敗に終わった予感しかしない。


 「は? なんなんだお前たちは……それから肩に担いでいるそのエルフをどうするつもりだ!? 答えろ!」


 そう叫びながら第二エルフっ子は、ギリギリと音を立てながら弓を構えている。

 コレは不味い、相手が余りにも警戒しすぎている。

 ここはやはりあれか、言葉よりも行動で示すべきか。

 ——僕は悪い人間ジャナイヨ。

 人間が仲間になりたそうな眼で、エルフを見ている!


 「そこの黒鎧! 何を企んでいるのか知らんが威圧するのはやめろ! 状況がわかっているのか!?」


 効果はいまいちだったようだ。

 といかアレか、鎧が原因か。

 そりゃそうですよね、今現状ドデカイ上に真っ黒い鎧姿ですもんね。

 そんなもんに見つめられたら誰だって警戒するわ。


 「今すぐ武装を解除して……武装……えぇっと、何も持ってないようだから鎧を脱いで肩に担いだエルフを——」


 「お姉ちゃん!」


 鎧しか着てない僕らに困惑気味な第二エルフっ子の台詞を途中でぶった切り、先生の肩に担がれた愛しのエルフ幼女が声を上げた。

 そりゃもう嬉しそうにバタバタと手足を揺らして。


 「リリィ!? 貴女今までどこに!」


 リリィ、貴女リリィっていうのね。

 よく考えたら幼女とかちみっことか、エルフっ子としか呼んでなかったから名前聞いてなかったね。

 そうかリリィちゃんか、後でナデナデしてあげよう。


 「増援を連れて来たよ!」


 「……はぁ?」


 事態に付いて行けない第二エルフっ子が、顔を顰めながら首を傾げて固まってしまった。


 ————


 暗い森の中、一か所だけ開けた場所が広がっていた。

 その片隅に集まる数十人のエルフ。

 みな険しい顔を浮かべながら、前方の暗闇を睨んでいた。

 集められたのは集落に居る戦える男のみ、それ以外は既に避難させてある。

 女子供、そして数千歳を超えた老人達には、なんとか言いくるめてこの森を出て貰ったのが今さっきの話だ。

 もう、時間が無い。


 「長、時間までもうすぐです。 ……それから、レナが周囲を見に行くと言って出かけた後……帰ってきません」


 悔しそうに奥歯を噛む若いエルフ。

 若い者の交友関係はあまり把握していないが、恐らく彼女と深い繋がりをもった男児だったのだろう。


 「そうか……だが今からレナを探しに行く余裕はない。 わかっているな?」


 「はい……」


 レナ。

 弓の腕を買われ、唯一この戦場に同行する事になった集落の若い女の子だった。

 つい先日ふと居なくなってしまった妹を探し、暇があれば森の中を駆けまわっていたが……この時まで帰って来ないとなると、何かあったのだろう。

 決して敵前逃亡するような子ではなかった。

 だからこそ彼女も、彼女の妹も、無事で居るという事はまずないのであろう。


 「来ました!」


 その考えを肯定するかの如く、目の前の開けた空間に魔獣どもが足を踏み入れる。

 ゴブリン、ホブゴブリン、オーク、コボルド。

 そしてその先頭には、黒髪の魔族が立っている。

 普段協力しあう筈のない種族さえも共に行動しているその姿から、コレは戦争なのだと実感させられる。


 「全員、戦闘準備」


 それだけ呟けば、周囲のエルフ達は弓を構え、目の前の敵を睨んだ。

 しかし……


 「こんばんわぁ、エルフの諸君。 約束の時間だけど、ちゃんと見えるかなぁ? ゴブリン共! 盾を構えろ!」


 黒髪の魔族がそう叫んだかと思えば、事態は最悪の方向へ転んだ。

 最前線に居た魔獣達が、何かが括りつけられた盾を構えた。

 木製の盾、それだけなら大した事は無い。

 しかし、その盾に括りつけられていたのは……


 「あいつらぁっ!! 殺してやる!」


 小さなエルフの子供達が、その盾には手足を縛られて固定されていた。

 誰も彼も、見た事がある。

 間違いなくこの集落の子供達だった。

 全部で八人。

 魔獣達全員を守るにはどう見ても足りないが、それでも容易に矢を放つことが出来なくなってしまったのは事実だ。


 「ほら、居るのは分かってるんですよ? 撃って来てみなさいな。 エルフは弓の名手が多いと言うのだから、こんな小さな盾に臆する事は無いでしょう? 隙間でも何でも狙って来ればいい。 事故でも起こらない限りは、子供達に当たる事もないでしょう?」


 相手の言う通り、エルフは皆子供のころから弓を習い、得意とする。

 だが全てのエルフが百発百中で矢を射る事が出来るかと言われれば、そんな事は無いのだ。

 一度放たれてしまえば、後は当然止める事などできない。

 もしも誰かの放った矢が、運悪く子供達に当たったら?

 元々は敵を狙っていたとしても、奴らが予想外の動きで子供達を巻き込んでしまったら?

 そう考えると、とてもじゃないが矢を放つ許可など出せる訳も無かった。


 「下衆が……」


 思わず零れる言葉さえ、この静かな星空の下では相手の元へ届いてしまう。


 「さて、どうします? 言う通りにして頂けるなら、命までは取りませんよ?」


 とてもじゃないが信じられる言葉ではなかった。

 こちらに真っすぐ向けられた視線は、どう見ても血を求めている。

 もはやここまでか、そう思った時だった——


 「特撮でもなんでも、子供を巻き込むのはNGって決まってんだろ。 悪役も格好良くないと人気でないぞ?」


 そんな呑気な声が聞えたかと思えば、パンッ! と軽い音が数回鳴り響く。


 「エルフっ子達! 子供担いで俺に続けぇい!」


 「レナだ! いい加減覚えろ!」


 「りょーかいです、カラスさん!」


 どこか聞きなれた声が耳に届いたかと思えば、先程の子供達を担いでこちらに走ってくる影が三つ。

 月明かりを反射する美しい銀鎧に、小さな影が二つ。


 「お、お前たちそこで止ま——」


 「んな事言ってる場合じゃないだろうがじい様! ほら、子供達を安全な場所に!」


 「お、お願いします」


 「エルフっ子が……いねぇ。 男ばかりじゃねぇか」


 飛び込んできた内の二人、見間違える筈もない二人のエルフ。

 レナにリリィ、このエルフの集落で暮らす二人の女子たち。

 何故彼女達がここに……なんて思っている矢先、レナが叫ぶ。


 「全員ここから離れてくれ! 頼む! こんな所に居たら巻き添えを喰らう可能性があるんだ! 頼むから早く離れてくれ!」


 我々と合流したかと思うと、レナが真っ青な顔で叫んでいた。

 突然そんな事を言われても事態に頭がついて行かず、何を言っているんだと首を傾げる者ばかり。

 長という地位を授かった私でさえ、彼女の言葉には疑問を覚え判断が下せずにいるのだ。

 周りの男たちに混乱するなという方が無理な話だろう。

 そんな中、リリィが夜空を指さして静かに口を開いた。

 幼さが残るその声と口調が、その場に居る全員の耳に響き渡る。


 「お姉ちゃん。 ネコお姉ちゃんが、準備してる」


 彼女が指さす先、それを追って皆の視線が上空へと注がれた。

 その場に居た全員が、在り得ない光景を見て静止してしまう。


 リリィが指さす先、そこには月が輝いていた。

 そしてその月には、一点の歪な影が広がっている。

 満月を背に、やけに仰々しい見た目の”ソレ”は、まるで翼の様に大きな影を広げた。

 それが両肩に付いた大盾だと気付ける者はおらず、皆唖然として空を見あげていた。

 翼の生えた悪魔か、それとも巨大な魔獣でも攻めて来たのか。

 そんな恐怖心だけが、皆の心の中に広がっていた。


 「不味い不味い不味い……絶対今チャージしてる……」


 レナがよく分からない言葉を紡ぎながら我々に向き直ったかと思えば、真っ青な顔で再び叫んだ。


 「全員伏せろ! 死にたくなければ伏せろ! ここは今から戦場じゃ無くなる、死神の遊び場になるぞ!」


 その言葉と同時に半数以上のエルフの民が身を屈める。

 かくいう私も半信半疑のまま、小さく身を潜めた。

 そして次の瞬間。


 ——ゴォッ! という凄まじい風圧を体に感じたかと思えば、急に周囲が鉄臭い匂いに包まれた。

 一体何が起きたのか、確かめようにも風圧が強すぎて顔が上げられない。

 身を伏せなかった数人のエルフ達は、風で後方に吹っ飛ばされていく。

 本当に、この場で何が起きているというのか……なんて、思った数秒後。

 前方から聞き覚えの無い呑気な声が届いた。


 「いやぁ、なんていうか……ネコさん勇者っていうより兵器ですね……」


 「それもこれも、ラニがこんな”鎧”を渡した事から始まっているんですけど、分かってます? 僕は人畜無害な格闘家ですよ?」


 「それは人畜無害とは言わないんじゃないかなぁ」


 目の前に居た筈の敵は消え、代わりに巨大なクレーターが出来ていた。

そしてその真ん中には真っ黒な鎧が。

 肩に小さな妖精を乗せ、全身を血に濡らしながら悠然と立ちすくんでいた。


 ————


 少し前の出来事。

 相も変わらず次々と登場する魔獣達。

 なので仕方なく、そりゃもう苦渋の決断の上で、僕は未だに黒鎧を纏っていた。


 「何か、”コレ”の扱い慣れて来たなぁ……」


 ボヤキながらも、ドデカイ両手を振り回して魔獣達を押しつぶしていく。

 背中に付いたブースターに、散々な思いをさせられたのはついさっきの出来事。

 だというのに、今では強弱を使い分けてホバリングしている。

 上手く使えば、空だって飛べそうな代物だ。

 とはいえ別に嬉しくない。

 そーらーを自由に、飛びたいなぁーって言ったら「はい、ヘリコプター!」って軍用モデル渡された気分だよ。

 渡してきたのは青い狸型ロボットではなく、30センチの妖精さんだったが。

 知ってる? 空を飛ぶには免許も許可もいるんだよ?


 「いやぁ、ある意味黒い方がネコさんで良かったですよ。 カラスさんだったら最初の特攻で天高く飛び上がったまま帰って来なそうですもん」


 肩に付いた盾に隠れるように居座っているラニが、ひょこっと頭をだしながらそんな事をぼやく。

 言われている当人は、エルフっ子(小)を肩に担ぎながら「いいなぁ……俺も飛びてぇなぁ……」としきりに呟いているが。

 そっちだって跳躍だけでもとんでもない高さ飛べるのだから、そんなに恨めしそうに眺めないで頂きたい。

 見た目だけならそっちの方が正統派なのだ、贅沢言うんじゃないよ。


 「何なんだコイツら……おかしい、絶対おかしい」


 なにやらブツブツと呟いているエルフっ子(大)は、さっきから顔色がよろしくないが大丈夫だろうか?

 何だかんだで一緒に来る、というか他のエルフの元へ案内してくるという話に収まったが、彼女はずっとドン引きした眼でこちらを見てくるのだ。

 悲しい、もっと仲良くキャッキャウフフしながら歩きたいのに。

 ちなみにもう一度チャージパンチ? みたいなのを試した時には、ドン引きどころか無表情で見つめられてしまった。

 人は理解できないその上の出来事を目の前にすると、とても冷たい表情になるらしい。


 「いっその事レナさんも肩に乗せますか? そしたら距離も縮まるかもしれませんし、 物理的に」


 「ラニ、君は天才ですね」


 「絶対に断るからな! とんでもない速度で飛び回って、魔獣を蹂躙する死神みたいな奴になんか触れたくない!」


 随分嫌われてしまったようだ、悲しい。

 例えるなら初めてご対面したペットに、いきなり警戒された上全然懐いてくれないみたいな、そんな心情だ。

 グスン、と泣き真似をしながら足元に居た何とかウルフを叩き潰した。

 殺っても殺っても全然減らない、どっから湧いてくるのこれ。

 もしかして無限湧き? 経験値稼ぎスポットなの?


 「ネコさーん? そんな悲しそうな雰囲気だしながら魔獣プチプチしてるのは結構狂気ですよー? ホラ、レナさんもドン引きしてますよー?」


 「まて、そいつは今悲しそうなのか!? 見ている分には会話の途中で急に魔獣をすり潰し始めた様にしか見えないんだが!?」


 だって仕方ないじゃない、集まってくるんだから。

 どこぞの銀鎧に丸投げしようかとも思うが、残念な事にエルフっ子を肩に乗せているので前に出ろとは言えないし。

 いいですよーいいですよー、どーせ僕だけおっかない見た目してますよー。


 「ネコお姉ちゃんがんばってー!」


 後方からちびっこエルフが手を振ってる、よし可愛い頑張ろう。


 「結構単純ですよねぇ、ネコさん」


 とまぁ腕を振り回したり交通事故を起しながら進んでいたが、ふとエルフっ子(大)が片手を上げて僕たちに止まる様に指示した。

 僕にとっては彼女が後方に居たので、若干気づくのが遅れたのは言うまでもあるまい。


 「もうすぐそこだ、少し先の開けた場所に今日我々は呼び出されている」


 え、なに。

 君ら誰かから怒られる事でもしたの?


 「奴らは我々エルフに宣戦布告した上、子供達を……っておおぉい! そこの銀鎧! どこへ行くどこへ!?」


 説明の途中だと言うのに、どこぞの変態は背中にエルフっ子(小)を乗せたまま匍匐前進でグングン進んでいく。

 慌てて僕も同じ様に身を伏せ、先生の後を腹這いになって追っていく。


 「まてまてまて! 無警戒に突っ込むな! っていうかオイ黒鎧! お前伏せてもデカいから! 丸見えだから!」


 後ろからやけにデカい声の突っこみを頂いたが、彼女はその声で敵にバレる事を警戒していないのだろうか?

 いくらエルフっ子とはいえ、もう少し空気を読んで欲しい。


 「あーもう、ラニは何もいいませんよー。 そのツッコミ待ちとしか思えない思考に、ラニは触れませんからね? ホラ、そろそろ森を抜けるみたいですよ」


 ズゴゴゴゴ、ゾリゾリゾリ! みたいな、やけにデカい音を立てながら匍匐前進した結果。

 目の前には森の木々を一部分だけ切り抜いた様な、開けた空間が現れた。

 ちょっといつぞやの変態王子に会った時の事を思い出し、イラッとする。


 「気持ちは分からなくはないですが、この空間に罪はないですからねネコさん」


 ラニに耳元でため息を溢されながら左右に視線を送れば、森の一部から大群とも呼べる魔獣が姿を現した。

 その先頭に立つ男が、楽しそうに虚空に向けて言葉を放つ。

 彼は馬鹿なんだろうか、開けた場所に出た瞬間相手も居ないのに喋り始めたんだが。


 「あーえっと……彼等の丁度反対側に、多数の生命体が潜んでいます。 多分エルフでしょうね」


 そうだったのか、てっきりおかしい人なのかと思ってしまった。

 すまん、先頭の人。

 というかアレか、目の前にいる集団がチビッ子の言っていた集落に襲い掛かってきている元凶なのか。

 ならばまぁ、エルフの皆さまとどうにか協力して……

 などと考えている内に、彼等は盾を構えた。

 その盾に括りつけられているモノを見た瞬間、全員が息を飲んだ。

 あぁ、そうだ。

 ”ココ”はこういう世界なんだ。


 「黒江、お前上から行け。 俺は横から行ってあの子ら助けるわ」


 「了解です」


 短い会話だけ終え、鎧に付いたブースターを使って静かに上昇する。

 彼らはエルフ達とのお話に夢中になっているのか、こちらを見向きもしない。

 やがてそれなりの高度を保って停止すると、盾の後ろに隠れたラニが顔を出した。


 「いいんですか? お二人の嫌った戦争ですよ? 今回は規模が小さいとはいえ、わざわざ首を突っ込む必要もない事柄ですよ?」


 確かにそうなのかもしれない、関わる必要なんてこれっぽっちもないのかもしれない。

 そうすれば、僕は殺し殺されの世界なんて見なくて済むだろう。

 でも、もう関わってしまったのだ。

 助けを求められてしまったのだ。

 多分”鎧”の性能が無駄に高かったのもあって、僕が調子に乗っているのも否定しない。

 俺TUEEE! って奴をやってみたかったのかと聞かれれば即座に否定するが、今ならやれるとか思っちゃってる時点でお察しなのだろう。


 「如何せん相手のやっている行動が頭に来たもので、多分先生も同じなんじゃないですかね」


 「まぁそこはラニも否定しませんけどね。 あ、カラスさん達動いたみたいですよ? そろそろいいんじゃないですか?」


 「では」


 会話を終えたと同時に背中のブースターが唸りを上げる。

 不穏としか思えなかったこの音が、扱いに慣れてしまえば頼もしく聞こえる。

 まぁ普段は絶対使おうとは思わないが。


 「こう言う時ってアレでしたっけ。 ”殲滅せよ!”とか言えばいいんでしたっけネコさん」


 「生憎コ〇マ粒子はご遠慮願います、大人しく”勝負だ……”とかでいいんじゃないですか?」


 「あーなるほど、あのラストシーンいいですよね!」


 確信した、妖精の国では異世界アニメ流行ってるわ。

 僕からしたら現地アニメなのだが、まぁそれはいいだろう。

 などと思っている間に、両肩の盾がガシャンッ! と妙な音を立てて広がった。

 ん、まて、何がどうなった。


 「あーえーっと、それっぽい台詞吐いたから、鎧が反応したとか……そういう? みたいな? 感じですかね? ネコさんがんばってー」


 やけになげやりな台詞を吐いたと同時に、ラニは再び鎧の中に隠れてしまった。

 その間も背中のブースターは音を立ててるし、何やら盾の下でも不穏な音が聞えてくる。


 「あぁもう、なんでこうなるかな……」


 次の瞬間、背中と盾下から戦闘機のジェットエンジンの様な炎が上がり、真下に急降下した。

 今まで使ってきたチャージより数倍早いと感じられるほど、一気に迫ってくる大地。

 慌てて右の拳を構えて、彼等に向けて軌道を修正する。

 グングンと迫る魔獣に対して、どうにかこうにか構えた拳を突き出したが、果たして捉えたのは相手だったのか大地だったのか。

 状況が理解出来ぬまま立ち上がれば、視線の先には抉れたような土ばかりが見える。

 うわ、なんか嫌な感じがする。

 クレーターとかの真ん中に立ったら、きっとこんな光景なのだろう。


 「ネコさんは隕石だったんですかね」


 何も聞こえなかったことにして、僕はホバリングしながら皆の元へ向かったのであった。



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