ご飯は美味しいですが、この国どれだけお金とるんですか?
食堂に来てから思い出した、僕はいま身分証持ってない上にお金もないどうしようもない人間だという事に。
食堂に移動した所で、僕は水くらいしか飲むことが出来ないんじゃ……なんて不安はがあった訳だが、コレと言って問題は無かった。
奴隷が身分証を所持していないのは当たり前らしく、ここには金銭の持ち込みは禁止。
ではどうやってご飯を買うのかと思えば……全てが無料だった。
なにこれ天国。
「この朝鳴鳥? の唐揚げと、サラダ。 それからこのミノステーキってやつと、あとは……」
学食のカウンターみたいなところで活き活きと注文していると、周りからはドン引きされた目で見られてしまった。
いいじゃないか無料なんだから。
普段はスーパーのタイムセールを狙った上、更に自分で作る。
そしてどっかの大食らいと戦うように食事を取っているのだ。
落ち着いた環境な上にいくらでも食べられるなんて、この上ない天国だろう。
タッパーとかで持ち帰ってもいいですかね?
「クロエ……食堂はいつでもやってるから、そろそろいいんじゃないか? 食べきれるのか? ソレ」
ソフィーの声で我に返り、一旦注文を止める。
足りない様だったらまた注文すればいいや。
「ネコさんの家の家庭事情が凄く気になってきました……っていうかカラスさんとの関係も教えてくださいよ。 師弟、親子とかは大体分かっているんですけど、お二人共似てないですし、話からすると本当の親子って訳じゃないんですよね?」
「気が向いたら」
「気が向いたら!? 結構重要事項な気がするんですけど!?」
「ラニうるさい、僕は今飢えているんです」
なんて適当な会話をしている内に、注文を受けていたメイドさんらしき女性が静かに笑い声を上げた。
ほら見ろ笑われちゃったじゃないか。
なんて考えながらラニを睨もうとした所で気が付いた。
「あれ? ルシュフさんだ」
メニューばかりを見ていた為、注文を受けてくれていた相手を確認していなかった。
そこに居たのは僕を部屋まで案内してくれた、クールビューティなメイドさん。
ショートヘアーを揺らしながら、口元を抑えて静かに笑っている。
「覚えて頂けた様で何よりです。 それにしても、こんなにたくさん食べられるのですか?」
案内してくれた時は結構無表情だったが、今は微笑ましいモノでも眺めるかの様に顔をほころばせている。
珍しいモノを見られた時の様な気分ではあるが、さっきみたいなやり取りを見られてしまったのはちょっと恥ずかしい。
「大丈夫です、まだギリギリ成長期なので。 今日は誰かと取り合いになる事もなさそうですから、競り負けて飢える事は無さそうです」
「今まで大変だったのですね……本日はたくさんお召し上がりください。 それではお料理はお席までお持ちしますので、どうぞお座りになってお待ちください」
やっぱり凄いVIP待遇だ。
なにこれ本当に奴隷? こんな待遇味わった事ないんだけど。
「ありがとうございます、ルシュフさん」
「ルーシュ」
はい? と思わず首を傾げてしまった。
「友人は皆私の事をルーシュと呼びます。 そっちの方が呼び易いそうなので、よろしければクロエ様もその様にお呼びください」
そう言ってほほ笑む彼女は、伝票をもってキッチンの方へと引っ込んでしまった。
ルーシュ、ルーシュか。
確かにそっちの方が呼び易いかも。
というかこれはお友達認定されたという事なのだろうか。
クールメイドが初日でデレた。
やったぜ。
「ネコさんって結構人に好かれやすいですよね。 容姿のおかげでしょうか? 中身は残念ですけど」
おいお前、それは見た目が子供っぽいって言ってるのか?
Gジェットプシューするぞ。
「ほらほら、行きましょう。 お二人ともお待ちですよ」
そんな事を言いながら飛んで行ってしまうラニを追いかけ、二人の待つ席に向かった。
こっちのご飯どんな具合なのか、ウキウキわくわくが止まらない。
ニヤニヤしながら席に腰を下ろすと、目の前のソフィーに疲れた顔でため息をつかれてしまった。
「あれ、二人のご飯はもう来てるんですね」
「当たり前だ、お前頼みすぎ」
お先に、とだけ言ってから二人は食事を取り始める。
ソフィーはオムライスっぽい何か。
中身はチキンライスとかケチャップライスではなく、チャーハンみたいな匂いをしているけど……なんだろうコレ。
そしてアイリはパスタ。
海鮮パスタの様だが、貝とかエビが微妙に向こうと違う。
貝がちょっと攻撃的な形していたり、エビも角みたいなの生えている。
エビなんて殻ごと食べ始めたのでびっくりしたが、どうも素揚げされている上にチップスみたいな触感だとか何とか。
匂いはどっちも美味しそう、追加で頼もうかな。
というかこう人の食事を見てると、自分も食べたくなってくるよね。
早く来ないかな……
「ネコさんって結構と食欲旺盛ですよね……どこに入るんですかさっき頼んだ食料が、絶対残しますよね?」
失礼な、これでも注文した料理を残した事なんてないぞ?
日々食材に感謝しながら頂いているのですよ。
ただ普段だとどこかの筋肉お化けに取られてしまうので、食べられるときに食べるという癖がついただけだ。
「なんかもう……いいです、突っこみません」
そう言って首を振るラニを眺めていたアイリが、苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「それじゃえっと、優良奴隷の説明しましょうか」
食事が終わってからでもいいのに、目の前の海鮮パスタが冷めてしまっては勿体ない。
やれやれと呆れた瞳をこちらに向けてくるラニを無視しながら、とりあえず頷いておいた。
それではと前置きしながらアイリは口元を拭ってから語り始める。
「まず”奴隷”そのものについてね。 奴隷には優良奴隷、奴隷、犯罪奴隷の三種類があるの。 犯罪奴隷は言葉通りなんだけど、罪を犯した者が堕ちる奴隷ね。 主人の命令に対して絶対服従、主人の言葉全てが逆らえない命令となるの。 死ねと言われれば死ぬしかない上に、犯罪奴隷を主が殺したところで罪には問われない。 ただこれは身分のない盗賊とか、もしくはかなり大きな罪を侵した人間しか落とされることはほぼないわ」
一般的なイメージの奴隷はこの”犯罪奴隷”に近いのかな?
王子様ぶん殴った訳だけど、そこに堕とされなくて良かった……
「勇者じゃなかったら、先ず間違いなくネコさんはソコでしたねぇ。 もしくは死刑」
「ラニ、本気でビビるんで止めてもらっていいですか?」
ゴホンッと咳払いしたアイリさん。
肩にとまる妖精共々口を閉じ、大人しく続きを聞いた。
「それから”奴隷”、これは本当に一般的な労働力として使われるものですね。 労働に必要な人手を揃えたい時なんかに購入されるわ。 主に借金なんかで売られたり、どうしても食いぶちが無い人達、そして軽犯罪者がなるのがコレ。 犯罪奴隷の様に絶対服従という訳ではないけど、持ち主には魔術を使った命令権が与えられる。 とは言え死に直結するような命令は出来ないし、奴隷の持ち物を奪ったり、殺したりすれば罪に問われる。 だから基本的に人を雇うのとあまり変わらないわ。 逃げだす事もサボる事も、盗みを働くことない従業員って感じかしらね」
通称それを社畜という。
おい聞いたか、間違いなく奴隷だぞ。
日本の皆さま聞こえますか……? 今私は頭に直接語り掛けています……貴方達は奴隷だそうです。
「誰と喋っているんですかネコさん……」
遠い目をしながら、もはや聞きたくないとばかりに椅子に寄り掛かる。
あぁやべぇ、本当にとんでもない世界に来てしまった。
人が道具の様に扱われる世界だ、前とあまり変わっていない気もするが、それでもここまで表だってこき使っていなかっただろう。
裏では知らんが。
「それじゃ奴隷各種に落ちたら一生自由になれないでコキ使われるって事なんですかね」
はぁぁとため息を溢しながら天を仰げば、アイリから意外な言葉が聞こえてくる。
「そんな事ないわよ? 犯罪奴隷は無理だけど、奴隷は自身を開放する為の金額が定められているの。 稼ぐ手段を与えられるか、もしくは主人が支払ってくれれば晴れて自由の身になるって訳」
「稼ぐ手段って……そんな都合よく与えてくれるものなんですか? それに買い手が自ら使い勝手のいい奴隷を開放するとはとても思えないんですけど」
「まぁ確かに、誰しもが良い主人に買われるとは言い難いからね……」
ですよね。
そんなのお金の有り余っている人のご機嫌を取るか、奴隷堕ちした家族の為に残された者が支払うくらいしか考えられない。
やっぱ希望はかなり薄いとしか言えない状況のようだ。
「そう悲観する事でもないさ、言ったろ? 主人は奴隷の物を奪えない。 そして金を稼ぐなという命令を出されなければ、奴隷だって働けるんだ。 そこんところまぁ主人との交渉次第だろうけどね」
スプーンをクルクルと器用に回しながら、ソフィーがそんな事を言い始めた。
んん? 更に良く分からなくなってきたぞ。
奴隷だけど働けるの? そもそも雇ってくれる所があるのか?
というかそんな事をさせてしまったら、買った側としてはメリットがまるで無いような気が……
「そもそもお前勘違いしてるんだよ。 あまりにも残酷に扱われるのは犯罪奴隷だけだ。 アイリも言った通り、奴隷ってのは雇うに近い。 奴隷を買う時にはお互い交渉するのが一般的なんだ。 例えば10年お貴族様の家で働いたら解放してやる、とか。 他にも期間的に働かせて奴隷商に戻す、これくらいの給料を出してやるから解放金の足しにしろとかな。 あとは女ので多いのは性奴隷ってヤツだ、一発いくらって具合に」
「ソフィー……」
明け透けな言い方にアイリが眉を顰めるが、確かに分かりやすい説明だった気がする。
詰まる話、一度買われたら一生自由がないのが犯罪奴隷。
奴隷と聞くとこのイメージが強かったが、それは重罪を犯さない限りなることはない。
そして奴隷は従わされるというより、企業からのスカウト待ちをする人間という事なのだろうか。
ただしその身が担保になっているからには、手を抜くことは許されない。
よほど酷い主に雇われない限り、いつか自由になれる。
借金によって奴隷になった人間などは、多分解放される為の金額がその分高くなるというイメージでよさそうだ。
「話を続けるわね? そして優良奴隷、つまり私達ね。 コレに関しては、だいぶ曖昧な事が多いわ。 基本的にここに留まるのが貴族のボンボンかお嬢様、お金を払えば解放される上に前科まで消される奴隷とは言えない奴隷」
え、何それ。
保釈金? でいいんだっけ?
お金払って解放ってのは普通の奴隷と変わらないが、前科まで消えちゃうの?
「だから大体はお金に余裕のある貴族たちは、何かあった時にこの優良奴隷に堕とされる事を願う。 でもそれ以外の者達がこの優良奴隷に堕ちた場合には、とてもじゃないけど払い切れない程の金額が必要だから、すぐに開放される人は本当に一握りだね」
現実はそう甘くなかったらしい。
何この国、どれだけお金とるの。
というか聞いている限りだと、お金ないと一般の奴隷より扱い酷くない?
あ、でもこうして無料でご飯食べられるし寝床も豪華だ。
つまりどういう事だろう。
「そして”それ以外”というのが、私やソフィーみたいな存在だね。 解放される為のお金が支払えないのに、こうして贅沢な暮らしをさせてもらえるには理由があるの。 国にとっては負債でしかない筈なのに、孤児で協会育ちの私達をこんな所に置く理由。 何だ思う?」
「ちなみに私達は犯罪は犯してないよ? 本来は借金奴隷、つまり”普通”の奴隷に落ちるはずだった。 協会の維持に金が足りなくなってね、借金の代わりに国が要求したのが私達二人って訳だ。 元々国の税金だなんだで借金がかさんだってのに、まったくふざけた話だよね」
困った様に笑うアイリと、顔を顰めるソフィー。
国が貸したお金の肩代わりを同じ国がして、そして返済代わりに二人を要求。
思いっきりアレね、最初からお二人狙いの闇金みたいだねこの国。
「能力とか知識、でしょうか? あ、もしかして買い取ってお嫁さんに、とかですか?」
「ないない、こんな芋くさい女達を誰が大金払って嫁にしようっていうんだよ」
どうやら外れだったらしい。
っていうかマジか、この二人で芋くさいとか言われちゃうのか。
じゃあ僕は? あ、ガキですかそうですか知ってました。
「半分正解かな、私達が求められているのは能力のみ。 私は欠損した身体も直せるくらいの回復魔術が使えて、ソフィーは殲滅魔法が使えるからね。 主に戦争に使おうっていうお話だよ」
聞いただけでとんでもないと分かる能力が飛び出してきた。
腕取れても直るの? じゃあガンとかになっても内臓取り出して回復魔法掛けて貰えば完治じゃん。
お医者さんが皆廃業しちゃうレベルで凄い。
そして殲滅魔法ってなんや、もう文字列が恐ろしいんですけど。
もうソフィーが勇者でいいじゃん。
「ん? ていうか戦争と奴隷がどう関わってくるんですか? 戦争前に国が奴隷を買い漁って肉壁にするとか?」
「まぁある意味間違ってないかな? この国の売れ残り奴隷は全て国の所有物、そして主人のいない奴隷は皆戦争に強制参加なの。 そして参加を辞退する場合には、違約金として結構なお金が必要になる。 私達みたいな権力もお金もないけど、突起した能力がある人間は特に優良奴隷にされて飼殺される事が多い。 だからホラ、周りに貴族っぽい格好をしている人いないでしょう? そういう人たちは、皆戦争前に家族に買い戻されちゃうから」
そう言われて見回してみれば確かに居ない。
皆普通の……と言ったら僕としては語弊があるが、ファンタジーゲームなんか出てきそうな格好をしている。
つまりここに居る優良奴隷達は皆、戦争の為に集められた人たち。
二人の話を聞く限り、結構横暴なやり方でここに落とされた人も少なくないのだろう。
お金が無くなったら奴隷になってスカウト待ち、なんて感じで思っていたが……コレは誰しも必死になってお金を稼ぎそうだ。
買い手がつかなければどう足掻いても戦場行きなんて、いくらなんでも無謀すぎる。
日本で言えば徴兵制だとか騒がれそうな事案だが、ここでは王様が全て。
うわ、やっぱりどっちにしろ最悪じゃん奴隷って身分。
周囲に視線を向ければ、そこにいるのは普通の人たちだ。
どうみても戦闘など出来そうにない女の人や、お祖母ちゃんと言えそうな年齢の人だっている。
多分ここは女性のみの建物なんだろう。
男性の姿が見えないので、余計に戦争に参加させる面々とは思えなかった。
そして何より一番目を引くのが……カートを押しながらこちらに向かってくるメイドさん。
「ネコさん、今ちょっと真面目な話をしていますので」
「来てしまった物は仕方ありません、まずは食べます」
「お待たせいたしましたクロエ様」
話の途中で料理を運んできたルーシェさんが、微笑みを浮かべながら料理を並べ始めた。
肉、野菜、肉、良く分からない揚げ物、ご飯、パン、スープなどなど。
素晴らしい、これ全部ゆっくり食べられるのか。
「食べきれなければ部屋にお持ちになって夜食にするもよし、残して頂いても怒られないので、ゆっくり食べてくださいね?」
「ありがとうございます、ルーシェさん」
「いえ、それでは」
天使はここに居た。
微笑むルーシェさんにお礼を言ってから手を合わせる。
それでは、いただきま——
「ネコさん! 本当に大事な話をしてますから真面目に!」
「聞いてますよ、でも冷えちゃったら勿体ないでしょ?」
「そうですけどね!? そうなんですけどね!?」
やたら叫ぶラニと、困った顔で笑うアイリ。
そして「これ……全部食うのか?」なんて引きつった顔でこちらを眺めるソフィー。
更にさらに、美味しそうに湯気を上げる食事達。
こればかりは仕方のない事だ、何たって人間の三大欲求の一つなんだし。
という訳で頂きます。
「だから無視して食べ始めないで下さい! 明日以降のネコさんに関わってくる大事な話なんですよ!? 聞いてます!?」
聞いてる聞いてる。
詰まる話僕がここにいる間に戦争とか起こったら強制参加させられちゃうんでしょ?
でもほら、王様も一時的な処置みたいな事言ってたし、そんなポンポン戦争とか起こる訳じゃないでしょ?
「ここは前の世界とは違うんですよ! ポンポン起きちゃうんですよ戦争!」
え、マジで?
「マジで!」
なんて脳内だけで会話を繰り広げているその時だった。
バンッ! と大きな音を立てながら食堂の扉が開かれ、ズカズカと大きな足音が聞こえる。
全く……皆食事中だと言うのに、マナーのなってない輩はどこにでもいるもんだ。
「クロエ! クロエは居るか!? クロエー!」
思わず口に含んだ唐揚げをソフィーに向かって吹っ飛ばしそうになってしまった。
どこの馬鹿だ、大声で食事中に人の名前を叫ぶ野郎は。
「お、おい……呼ばれてるぞ?」
「クロエって言ってたもんね……王子が」
今一番聞きたくない単語を耳にした僕は、大慌てで振り返った。
そこにはどっかで見た金髪が、キョロキョロと周りを見回している姿が。
そして僕と目が合うと、嬉しそうな笑顔でこちらに近づいてくる。
来るな、頼むから来るな。
殴った事は謝るから、唐揚げ一個あげるから。
「探したぞクロエ! 安心しろ、もう大丈夫だ」
何を言ってるんだろうコイツは。
お前のせいでこんな目に会っていると言うのに、慰謝料でも請求してやろうか。
「王から条件付きでクロエの事を買う許可が出た、だから安心しろ。 戦場でも最前線に立つ事は無い、常に私の隣に居られるんだ。 君ほどではないが私もそれなりに強い、そして周りには騎士たちも居る。 だから死に怯える必要なんかこれっぽっちも無いぞ!」
どうしたどうした、お前は何をトチ狂った事をベラベラ喋っている。
誰かに買われた場合戦争行かなくて良いんじゃなかったっけ?
よりによってお前に買われた上、なんで戦地に赴かなきゃならないんだ。
何がどうなってる?
「だから明日から起きる戦争、僕の隣に居てくれ! 背中は預けた、そして君の背中は僕が守る!」
「……ん? ちょっと待って下さい。 今なんて言いました?」
「背中は預けた! そして——」
そっちじゃねぇよ馬鹿、背中くらい自分で守れよ。
そんなやり取りにため息をついたラニが、隣から口を挟んだ。
「ラニもさっき知ったんですけど……戦争、明日からみたいです」
「嘘でしょ?」
「マジです」
え、その場合僕どうなるの?
準備も何もしてなければ、武器もないよ?
死ぬじゃん、異世界生活二日目で死亡確定なんですけど。
死んだらセーブポイントからやり直すスキルとか貰ってないよ?
今の所だと死ぬ間際に何かに目覚めるとか、そんな都合のいい展開期待できないよ?
「ほ、ほら鎧さえ着ていれば何とか……なるかもしれませんし?」
もう嫌だこんな世界。
動物虐待の次は人殺しを強制ですか、ふざけてるんですか。
僕は石だ……って言いながらスナイパーしている人みたいに、戦場に行って急に強くなったりしないよ僕は。
「もう少し分かりやすいネタは無かったんですかね……ラニにも何の映画なのかさっぱり分かりません」
もはやラニに突っこむ余裕もなく、絶望した顔で唐揚げを一つ口に入れる。
鶏肉よりちょっと固いが、とてもおいしい味がした。