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白昼夢

「おはよう。どんな気分だ?」

「…おはよう、スイ。気分は、良くないなあ。」

「それは、いけない。お医者様を、呼ぼうか」

「大丈夫だよ、王子。君こそ鱗だらけだった脚は上手く使えるようになった?」

「無理はいけないわよ。身体に祟ってしまうわ」

「ユキは心配性だなあ。本当に大丈夫だよ」


「…顔色が悪く見えるぞ。」

「君もそう言うの、獣王様。本当に大丈夫なのになあ」

「心配するのも無理ないだろう!君は僕達の…」

「その先は駄目だよ、ミハイル。君の本当の、綺麗な声でもそれは告げちゃいけない」

「…だからって、本当に貴方は、」

「大丈夫だよ、シンデレラ。ほら、笑って」


「こんな状況じゃ、笑えるわけないじゃない!」

「……君は本当にお転婆だね。だからこそ白雪姫をも追放出来たのかな?」

「そのせいで死んじゃ、元も子もないわよ……」

「あはは、だけど君の結末はああでなくちゃ駄目だったんだよ、毒林檎姫。」


「この御伽噺達は変えられない、そうだろう?」

「ああ、その通りだよ国王。君が彼処で窓から落ちるのも、そうでなくてはいけなかったんだ」

「アタシが幸せになってしまわないように、でしょう」

「……ごめんね、メイアリア。君は僕にとても似ていたのに。君を殺してしまったのは僕だ。」


「だけど知るべきだった想いも君は掛け合わせてくれたよね」

「そうだよ、ツァル。それが御伽噺の流れなら尚更だ」

「いいや、違う。君は御伽噺や流れではない理由があったはずだ」

「……ロウランド騎士隊長。何故そう言うの?」


「だって、この26の物語は、全て貴方自身だから」

「スチーチル…君達は何を知っている?」

「何も知りはしない。ただ、お前の想いは私達であることは分かっている」

「キコン様。それはどういうこと?」

「一番それを分かっているのは君だろう、」

「僕には…僕には、わからないよ、トカイ」


「違う。……貴方は知っているよ。この物語達は、等しく貴方であることを」

「……君が僕自身だっていうことも、君は知っているの、アルフ?」

「勿論。そして、君の夢や、望みや、君自身の一部が、全て物語になっていることもね」

「……どうして、君達はただの文字だったはずだろう、カルヴァ」


「文字であったはずだった。それに生命を吹き込んでしまったのはお前だ」

「……僕が気付かぬうちに、命を生み出してしまっていた?桜の男、そういう事なの?」

「ああ、そういうことだよ。そして、あんたの中でアタシ達は生き続けていた」

「リルラ姫、君も、わかっていたの?」


「疑問をぶつけるだけでは愚かですよ。自らでも考えなければ」

「おばあ様、……いや、リル姫。僕は、考えねばいけない。……君達が意志を持った理由を。」

「でも、考える必要なんてないはずだよ」

「ウル……そう、だね。考える必要なんて、ない。もう答えは分かっているから。」


「俺達が生まれた意味を、意志を持った意味を」

「私達の生みの親である貴方は知っている」

「……ふたりの優しいあくま。そうだよ、僕は知りたくなかったんだ」

「貴方は皆に似て、優しい人だわ」

「ありがとう、アクエ。君も僕に似て、優しい子だよ」


「だけど、此処じゃ優しくてもあの場所じゃそれは弱みになる。弱みは、いつしか自分を殺してしまうだろうね」

「マッドハッター。君は一番優しくて、残酷な人だったね」

「…行ってしまうの?また、私の元から、居なくなって、私は塔に居るまま。」

「大丈夫だよ、ルカ。必ず、会いに来るから。」


「おはよう。ああ、今日はいい天気だね。」

「……そうだね。」

「気分はどうだい?」

「……最悪かな。」

「君と、君の26の物語達に、僕から花を。サネカズラの花は、君にぴったりだ」

「でも、さよならだ」

「そうだよ。君とはもうさよならなんだ、僕らのストーリーテラー。僕らのルウ。」


「僕が作り出した、26の物語達は幸せだったかなあ」

「…どうだろう。僕は幸せだったよ、君の手で紡がれた物語達の中にいることが出来て」

「…それは、良かった。」

「ねえ、ルウ。きっとね、僕は此処で、君とさよならだなんて思わないんだ。君は若くで死ぬけれど、きっとそんなことはないんだ」


「それは、…僕が信じたい、嘘なんだよ」

「……うん、そうかもしれない。でも嘘は信じ続ければ真実になるんだ。嘘と真実は、それだけ曖昧だから。」

「いつか、…僕の生きたい気持ちが、いつか、…本当に命に結びついて、これからも、ずっと、ずっと生きて、君達と、生きられたら、また会えたら、」


「……大丈夫、大丈夫だよ。ルウ、僕達はまた会える。だって、君が作り出した世界じゃないか!この白い部屋に戻ってこなくたって、君の創造した世界は、いつだって君の味方で、君の傍に居るんだよ!」

「……僕の、味方」

「そう。例え、君が大きくなって、僕達を忘れても、僕達は君の味方だよ」


「……あり、がと、う」

「お礼なんて要らないよ。僕達こそ、君にお礼を言わなくちゃ。僕達を作ってくれた君に、沢山の感謝をしなくちゃ」

「そんな、僕は、」

「さあ、もう行かなくちゃ。君の大切な、外の世界の出発だよ」

「……怖いよ」

「大丈夫、心配要らないさ。僕達がついているんだから」


「……僕の事、一人にしないで、ね」

「君は一人じゃない。僕達がずっと、心の中に世界を作って、住んでいるから。ほら、行ってらっしゃい。君が大切な物を見つけられるように祈っているよ」

「……はなの、いのり。」

「え?」

「花を生み出す君の、祈りだから。はなの、いのり」


「はは、じゃあ君の作ったこの物語達は、はなのいのり、って名前にしよう」

「……うん」

「……僕達『はなのいのり』は、君をずっと見守っているよ。大切な、僕達のストーリーテラー。僕達のちっぽけで大きなルウ。君の幸せを誰よりも僕達が祈っているよ!」




「ありがとう、……ありがとう、カイ。


 ……行ってきます。」

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