本の終わり
「何故君はここにいるの?」
「僕は、兎を追い掛けてきたんだ」
「何故君はここにいるの?」
「何故君はここにいるの?」
「僕は、導かれるままにここへ連れてこられたんだ」
「何故君は鍵を持っているの?」
「僕は手渡されたんだ」
「君は誰?」
「僕は、……僕は、アリスだ。」
「アリスは兎である」
「アリスは猫である」
「アリスは帽子屋である」
「アリスはトランプ兵である」
「アリスは女王陛下である」
「アリスは、」
「僕は、僕は。」
「城の頂上。女王陛下の部屋の窓から飛び降りたのは誰?」
「それはきっとアリスだ」
「女王陛下であるアリスだろう」
「どうして、」
「君は何をしに此処へ?」
「何故、」
「君は何を叶えに此処へ?」
「何で、」
「君は何を抱いて、何処へ?」
「……わからない。」
「僕は分からないんだ。」
「僕はただ此処に迷い込んだだけで、」
「君は嘘吐きだね。
ワンダーランドには、嘘吐きしか来られないんだよ」
「そうやって嘘を吐く人生はどうだい?
そうやって自分を偽る人生はどうだい?
兎を殺してその皮を剥ぎ、
猫を繋いで飼い慣らして、
トランプ兵を無個性にし、
城から女王を突き落とし、
帽子屋である私のお茶会を台無しにして。
君はアリスという名前を彼女から奪い、
その掌で何がしたい?」
「何故君はここにいるの?
何故君は鍵を持っているの?
…………君は、誰だい?」
「ぼ、クわ、ッぁああ、ァりす、ありぃイ、アリス、ありす、あリスはボクだ、ボくだァ、あっ、」
「いいや、違うよ。君はアリスじゃない。
嘘吐きで、貪欲で、純粋で、残酷な。
《《私の》》アリスは、君じゃない。」
「……君はもう少し、ましな《《代用品》》を連れてこられないのかい?」
「帽子屋さんの判定が厳しいだけでしょう……」
「はは、狂ったマッドハッターは、簡単にあの子の代用品を決められないんだよ。こだわりと言って欲しいね。」
「その度に僕の皮が剥がされるのはどうかと思うんですけどね!」
「良いじゃないか。この世界は《《誰も死ぬことなんて出来ないんだから》》」
「……そう世界を作ったのはあなたでしょうが、狂ったマッドハッター。」
「ああ、そうだった気がするねえ。もう昔の事だ、覚えてなんかないんだよ」
「何が覚えてないですか。その度に僕が酷い労働を強いられているのに」
「文句を言うんじゃないよ時計ウサギ。君だって、僕のアリスが戻ってきたら愛する《《本物の》》チェシャ猫が生き返るのだからいい取引だっただろう?君の頑張りが君の幸せに繋がるのさ。」
「…本ッ当、口だけは上手いですよね、《《女王陛下》》。」
「今は《《帽子屋》》だよ。…ほうら仕事だ。早く準備を。」
「……はいはい。人遣いが荒い人だ……また皮剥がされるんだ僕……可哀想な僕……」
「私は突き落とされるんだから文句言わない」
「……へいへい」
「さあて、今度のアリスは代用品になれるだろうかね。
……早くおいで、私の可愛い、かわいい、大好きなアリス。」
「……ッ、こ、此処は……?」
「やあ、いらっしゃい。見慣れない子だね。
……君は、
君は何故、此処にいるの?」




