表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

その「ヒール」と違いますがな。

続続々・その「ヒール」と違い……って、もういいわ!!

作者: 上月 志希

時系列は、最初の婚約破棄騒ぎから数年後。

ちょっとした言葉遊びをしたかっただけの拙い話が、感想や予想外のポイントをいただいているうちに続いてしまいました。

3月25日に、本文に若干の修正・加筆を行いました。


「お義母さま、もう少し召し上がります?」

「そうね、いただこうかしら」


 私は、ハチミツを加えてほの甘いハーブティーをカップに注ぐ。

 穏やかな春の晴れ間、ほのかに花の香りの漂う四阿でのティータイムである。フィナンシェも美味しいけど、食べ過ぎによる体重増加には要注意。私、アイリーン・グレイス・ブルックハート改め、アイリーン・グレイス・ハースバーグは只今、妊娠5カ月だったりするのだ。だもんで、基本的にカフェインレス。

 前世では結婚も妊娠も未経験だったので、未知との遭遇進行中といったところ。

 そして、私が「お義母さま」と呼びかけた女性は王妃様。はい、まあ……そういうことです。


 思えば、3年近く前の婚約破棄騒ぎからの領地での治癒力(ヒール)修行の最中に、リチャード王子がやってきてからが今につながっているわけで。

 「また来るからな!」という捨てゼリフを残しただけあって、月に2回2泊3日ペースでやってきて、たいして文句も言わずに私を手伝ってくれるように。頻繁にうちの領地に来ていて大丈夫なのかと問えば、ここに来ると言えば王妃様が即行OKを出すと。公務サボって何やってんだというセリフを何度、飲み込んだことか。

 まあ、文句を言わないのを良いことに、ちびさんたちに某ラッコキャラの“お父さんのぼり”ならぬ“王子様のぼり”を推奨したりもしましたけれども。あれ、一度に一人ならどうってことないけど、3、4人になると割と大変なのね。見ている分には、とっても面白かったですが。護衛の皆さんだと6人ぐらい担いでたのは、さすがでした。

 ところが、思わぬ反撃が。


<おうじは 「あのころ こんなに かわいかった」こうげきを てにいれた!>

<あいりーん 500のダメージ!>


 またの名を“ホメ殺し”。


 そうなのだ。休憩中のお茶飲み話に王子が話す、私が小さかった頃の話が、とにかくこっぱずかしい!

 一緒に遊んでいる時に、王子や私の兄が擦り傷なんかを作ると、泣きそうな顔して「いたい?」と聞きながらなでなでして治していたとか、花を渡すと笑顔満開で抱きついてくれたとか。そんなの、うっすらとしか覚えてないわ!

 しかし、そういう話はメリ母さんをはじめ、孤児院の年かさの女の子たちとか、領地のおばさまたちとか、とにかく女性陣の喰いつきがすごいのよ。おまけに護衛たちの中にも、へにゃんと顔がゆるむ人がいるし!

 いや、私もね、他人の話として聞くなら、によによして「きゃーかわいい♪」とかできたよ。でも、当事者だと精神がギリギリザリザリ削られる。前世では、全く経験したことがなかった“恥ずか死ねる”とは、こういうことか!と実感できた。


 やってくる度に、そういう話でいろいろなものが削られる思いをし、ふとした時に優しいというか、柔らかな視線で見つめられているのに気づくこと数度、とうとう恥ずかしさのあまりブチ切れてしまった。


「もう……もう、いい加減にしてくださいませっ!!」


 ああもう、公爵令嬢どころか貴族として失格な態度。領地に戻ってから、猫かぶりをサボってたツケかもしれない。

 孤児院にある自分の部屋に駆け込み、ぜはぜは呼吸を整えていたら、腕を引かれて向きを変えられ、ぽふんと頬に当たるやわらかな布と上半身に回る腕の感触。え?え?え?


「アイリーンは、今もかわいかったんだな」


 思わず、ばっと顔を上げると嬉しそうな笑顔のリチャード王子のドアップ。


「涙目で真っ赤になってる顔も、すごくかわいい」


 顔中がとんでもなく熱い。「止めれ!」と叫びたいが声が出ない。取り敢えず、顔を見せまいと伏せて「うーーーーー」と唸っていると、笑い声がして、改めて抱きしめる腕に力がこもった。うう、動けん。と思ったら、頭のてっぺんにキスされた。うおおおお!何をする!!


「子どもたちと遊んでいる時や、治療をしている時は、まぶしいくらいキレイだが、照れるとかわいくなるんだな」


 テメー、そんなこっぱずかしいこと言うキャラだったんかい!! 知らんぞ!?と、頭の中はパニックのあまり真っ白。言葉が悪いのは前世の影響。実際に口には出さないけど。でも、頼むから止めて。ホントに!恥ずかしいから。

 動けないし、体に力が入らないし、また唸っていたら「早く王都に戻ってほしい」と耳元で囁かれた。

 何だよ、私が領地に居る理由の大元は、アンタの浮気?が原因だったでしょうよ。ここに来てたのだって、婚約破棄に反対の王妃様に言われたからでしょ。

 頭の中では、そんなセリフがぐるぐる回っていたけど、口から出ることは無かった。


    ◇


 結局、自分の力の限界も見えたこともあり、修業は半年余りで終了し、王都へと戻った。孤児院の子たちにも領地の皆様にも泣かれたけど、戻った後も本やお菓子、手紙を送って交流はしている。


 それにしても、かえすがえすも王子(今は夫だけど)にアドバンテージを取られたことが悔しい。私が、実はものすごい照れ屋だと思われるようになっちゃったし。だって、ヤツの前では上手くネコがかぶれなくなってしまったのだ。


 婚約破棄騒ぎの時は、私の方がアドバンテージを取れたと思ったのにー。

甘いセリフって、読む分は良いのですが、実際に自分が言われたらむずがゆくて「止めんか!」と蹴りを入れてしまいそうです……って、私だけか。


書き終わってみて、登場人物の具体的な容姿の描写がほぼ無かったなと。進行上は問題無かろうと思います。ご想像にお任せいたします。

そして、お読みいただいた皆様には心から感謝申し上げます。

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ