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不在票

作者: HAL model

不在票。





帰宅すると

ポストに不在票が入っていた。


何だろう?


今週買い物した覚えがないんだけど。





パンプスを脱いで部屋に入って

両肩の買い物バッグをおろす。


ああ重かった。

やっぱりミネラルウォーターは

ネットで注文するんだった。



珈琲淹れて 一息しよう。


珈琲を飲みながら

不在票の再配達を電話から入力して⋯⋯ と

これでよし。




時計を見るともう長男君の

お迎えの時間だった。


しかも ギリギリ。





幼稚園バスの停まる 停留場所まで走らないと。

ああもう なんでいつもこうなの。

自分の時間の感覚の鈍さがホント嫌になる。






「お母さんいつも 汗だくですね」





私より若そうな保育士の先生が

長男君を幼稚園バスから降ろしながら笑ってる。



はい

確かに いつもギリギリで走って汗だくです⋯⋯ 。



「ママ はい!」


長男くんが しわくちゃのポケモンのハンカチを渡してくれた。



おおお紳士だね 長男くん。

ありがとう。


私はしわくちゃのポケモンハンカチで汗を拭いた。


手を繋いで おうちに帰ろうネ。





ピンポンが鳴り 不在票の荷物が

再配達された。


差出人が私になってる。


え?


どういう事?


私 自分に荷物送ってないし。


なんだかとってもホラーです。


なにこれ新手の送りつけ詐欺???


配達員のお兄さんに 事情を説明したけど


送り主が居て 配達先の住所が合ってて

ご本人様が受け取られるので

宅配業者としては 何も問題はございませんのでーって言って帰っちゃった。


えーちょっと〜。



開封して 高額請求とかされたら嫌だから

開けないでおこう。


捨てちゃう??

あーでも勝手に捨てて 後から

弁償しろとか難癖つけられても嫌だわ



ああもう、なにこれ 面倒くさいし怖いよー!





結局荷物を開けずに玄関に置いてその夜は寝た。





翌々日 図書館に借りた絵本を返しに行ってる間に

また不在票が挟まっていた。



え。



何も買い物してないんだけどな。



なにこれ。



住所も受取人も合ってるから

再配達の手続きを入力する。



よし。


お迎えの時間だ。

今日は余裕をもっていける。

まだ暑いんだから 大人は走らない。



そう思ったんだけど

お迎え場所まで半分くらいの距離で

鍵を閉めたのかものすごく不安になった。


自分が鍵を閉めた映像が思い出せない。


え。


鍵閉めないで出てきちゃった???



そうなると全然自分に自信が無くなる。

急いで家に引き返してドアノブ引っ張ると

鍵は閉まっていた。



結局また お迎え場所まで全力疾走。

ああもう なんで今日もなの。


保育士の先生がクスクス笑ってる。


私 汗かいてるどころじゃない。

滝のような汗だ。


ああかっこ悪い。



今日は 長男君が 戦隊モノのハンカチで

汗を拭いてくれた。

優しい。




荷物が再配達された。


差出人はまたも私。


親子二人暮らしには

この展開はちょっと怖すぎ。

配達員の人が 受取拒否も出来ますよ と

言ってくれたのだけれど

思うところあって 受け取りのサインを書いて

荷物を受け取った。


荷物は開けずに玄関に置いておこう。



週末は 長男くんと

近所の公園で遊んだ。


長男くんは全力で暴れて

エネルギーが切れると寝てしまう。

ふふふ 元気でよろしい。


私は日焼け止めを忘れて ヒリヒリする。


予想通り 暴れに暴れた長男くんは最後は電池の切れたオモチャのように動かなくなり グースカ寝てしまった。


寝顔は天使だね。


でもこれが家までおんぶするのが重いのよ。


この役目は絶対パパの役目でしょう

もう!



翌週

荷物がまた届いた。


例の如く 不在票で。



イヤホンして音楽聴きながら拭き掃除やら掃除機やらしてたら ピンポンに気づかなかったみたい。

嫌、全く聞こえなかったし。

ごめんよ宅配便の人。

ガーガー掃除機の音、聞こえてたよね。



お迎えに行くまでの間に 夕飯の下ごしらえを

と思ってやり始めたら またギリギリ。

どうしてこう時間配分が出来ないの私。



いい大人が 不自然な程の早歩きでお迎え。


脚がつりそうになった。


長男くんはバスの中で眠っちゃっていた。

保育士の先生に抱っこで引き渡されて

腕に幼稚園ランドセル そして長男くんを抱っこ。

完全に熟睡してる長男くん

ぐにゃぐにゃ。話しかけても全然起きない。


母猿が 子猿を抱っこするかのように

抱えて 家まで歩いた。


もー母は筋肉ついちゃうよー 。




再配達の荷物が届いた。




長男くんは 帰宅してしばらくソファに寝かせていたのだけれど ムクリと起き、夕飯を食べるとそのまま

また寝てしまった。


ああもう お風呂 入らないで寝ちゃった

明日の朝大変だよー。




私は独り リビングで 届いた荷物の段ボールを解いた。




最初の荷物には

何年か前のCDが入っていた

しかも新品。

すごく好きで よく聴いていた曲。

それに香水。

これ独身の時に私がつけていたやつだ。




2つ目の荷物には

結婚してから変えた香水が入ってた

長男くんが生まれてから使わなくなって

もう使わないかな?って捨てちゃったやつだ。

それに 私が欲しいなぁって思ってた財布。

ブランドのマークが小さくて上品なやつ。



3つ目の荷物には

ミュージカルのチケット

私が観てみたい!って言ってた物凄い高いチケット。

託児サービスまで付いてるやつ。

これ来月の結婚記念日の日だ。







旦那様2ヶ月間の単身赴任。


旦那様は

優しいけれど何も言わない人で

家族って感じ。




私は子育てに追われて

いつもカリカリしてた。



不器用なのに

家事も育児もお料理も

何もかも完璧を目指して

アップアップしてた

張り詰めて張り詰めて ギリギリに張った弓の様に。


旦那様は家事や子育て

手伝ってくれていたけど

私はなんだか孤独を感じていた。


旦那様の眼差しは

愛してる女性を見る眼差しでは無くなり

私自身も旦那様を愛しい人ではなく

「パパ」と呼び ウチのお父さん的な、

立ち位置で見る様になった。


自分もそうでありながら

旦那様が私に対して女性としての興味を失っている、

トキメキを欠いている

そんな風に感じてプリプリしていたように思う。




「私を見てない」


そんな想いが すごく大きくなって


単身赴任の話が出た時に私は大爆発。


言わなくてもいいような事までブチまけて

拗れに拗れ、結局 旦那様が 荷造りして単身赴任に赴くその日まで 険悪な状態のままだった。



私達、全然バラバラだ。


私が前髪を揃えても

この人は気づかないんだ。


そんな事が頭の中でループして

もうメンタルぼろぼろのまま

旦那様は単身に行ってしまい


私は長男くんと二人暮らし。

お迎えもギリギリの 余裕のない毎日を送っていた。




あ、

このCD 私達が出会った時によく流れていた曲だ。

最初にデートした時も車でかけていたんだった。

そう思うと

あの時の映像が頭の中にわぁーーっと流れ出してくる。


それにこの香水

旦那様はこの香水がとっても気に入ってた

私のイメージにピッタリだって。

付き合い始めのセリフってきゅんきゅんする事言ってるよね。


新しい香水

これは 旦那様には不評だったのに。そう顔に書いてあったけど

でも私が選んだなら 良いね って言ってた。

私の選択を肯定してくれてたね。


えーそれにこのお財布 欲しいって言ってなかったのに

どうしてわかるの????


おまけにこのミュージカルチケット!

どうしたのよ 一言漏らしただけなのに

これプラチナチケットで取れないって有名なのに。



⋯⋯ あ⋯⋯


⋯⋯

⋯⋯ 私を見てない!


わたし そう言っちゃったんだ。





見てるね旦那様。


いつも

私を見ててくれたんだね。





んもう!

メールもよこさないで

なんだよー。


今週末には帰ってこれるのかな。


ああもう

どんな顔して会えばいいの

うふふ。




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― 新着の感想 ―
[一言] け、健全だ。 愛情あふれる、この作品を見ると なんか自分が恥ずかしくなってきました(○´Д`○)ゞ 面白かったですc(>ω<)ゞ
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