表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異能力軍、戦前演説

異能力軍、戦前演説~4番隊の場合~

作者: ミサキ



 





 冬、本格的に冷え込んできたある日の早朝。

 日本特殊異能力部異能課、異能力軍は集会を行っていた。


 彼らはこれより、テロ組織【パーカー】の拠点制圧に向かう。


 異能力や銃弾が入り乱れ戦場となる場所は、普段人々が往来する都市の1つだ。既に一般人は避難を終え、封鎖も完了した。


 残すはテロ組織の鎮圧、及び無効化。

 武力による制圧の許可も下っている。

 

 突撃の前に、異能力軍の隊長は演説をするのが恒例だ。


 死んだ様な瞳に窶れた表情、吸いかけの煙草を咥えた中年男性が壇上に登る。

 どうやら今回は、4番隊隊長が演説するらしい。



「諸君。ご機嫌は如何かな? 我々『死神』の4番隊は上々である。

 知らぬ人は居ないだろうが、自己紹介からさせてもらおう。


 私は、支援4番隊隊長及び支援責任者の四ツ橋(よつばし) (かなで)だ。『棺の運び屋』の愛称で親しまれているよ。


 今回の作戦を実行するにあたって、諸君等には命を掛けてもらう。先日、遺書を書かせたのはその為だ。


 まあ、諸君等の命などどうでも良い。

 

 では!


 華夜! 後の諸々は任せた!」



 トゥ! と言って壇上から飛び下り、駆け出して行く四ツ橋。

 先の死んだ瞳とはうって変わって実に生き生きした、良い目をしている。


 4番隊隊長は、何時までも少年の心を持ち続けているのだ。


 もはや同じ4番隊のメンバーから「なにしてんだ」とか「帰ってこい阿呆が!」とか「ふざけんなジジイ、殺すぞ!」とか言われても、彼の足は止まらないし止められない。


 向かう先はただ1つ。

 そう、自宅である。


 我が家へ向かって、ゴーイング・マイ・ウェェェイ!

 

 

 ……まぁ、彼の事は置いておこう。



 逃げ出した隊長、四ツ橋 奏に代わり壇上に立ったのは、華夜と呼ばれた人物だ。



「華夜ちゃーん! こっち向いてー!」


「かわいいーよー、華夜ちゃーん!」


「愛してるぞー結婚してくれー!」


「…華夜…華夜? ……猫…爆弾…う、うわあぁぁ!!! 嫌だ嫌だ嫌だ、止めてくれぇぇ!」



 隊長が立っていた時とは違い、4番隊は勿論他の隊員等も一部、異様な盛り上がりを魅せていた。


 ダン! と大きく脚を踏み鳴らすと、華夜は叫んだ。



「うるせぇぞ、行き遅れババアに独り身ジジイ共が! てめぇらは黙ってろ、殺すぞ!」



「イヤー、華夜ちゃんに殺されちゃうー」


「そんな君も大好きだー!」


「……か、解体だけは……無限解体だけはやめてくれぇぇ!!」



 止まらない野次に溜め息を吐いてから、集まっている異能力軍を見回す。

 意外にも華夜を知る人は少なく、あれは誰だ? などと言う声が此処彼処で立っている。


 実際華夜が入隊したのは2年ほど前であり、しかも微妙な時期だったために同期もいない。更に彼女は、特殊な訓練と任務が多いせいで関わる人間も限られている。


 ただし華夜の見た目や人間関係は、1度見聞きすればまず忘れない程に強烈なため、多分これで参加隊員全ての記憶に焼き付いた事だろう。


 まず見た目だが、真っ赤に染めた髪を持ち上げる白い三角の猫耳に、背後で揺れ動く尻尾。これだけで十分すぎるインパクトだが、それだけではない。

 制服なんて着ないと、彼女は私服である。ヴィジュアル系ファッションとでも言えば良いのか、運動の邪魔をしない程度に着飾っている。


 まぁ他にも色々あるのだが、長くなるので割愛。


 一言で言えば、パンクなファッションをした、スレンダーな長身美女である。なお特例が重なり、華夜は超スピード出世をしていて、未成年である。


 そんな華夜がマイクをキーンと鳴らして、改めて注目を集める。



「4番隊と7番隊、あと1番隊の一部はアタシの事を知っているだろう。知らない奴は今覚えていけ。


 アタシは4番隊所属、前線支援治療部の宮村(みやむら) 華夜(かよ)だ。4番隊の『血涙の自爆猫』とか聞いたことあるんじゃねぇの? アタシの事だ。


 まあそんな事はどうでも良い。


 アタシ等異能力軍はこれから、テロ組織【パーカー】の拠点へ武力制圧を仕掛ける。奴等は大分前から、この武力制圧作戦を察知していたらしい。それでも拠点に居座り続けてる、奴等の抵抗は非常に厳しいものだと思ってくれ。


 通達した作戦や注意事項は、頭に入ってるよな?

 バカじゃねぇなら覚えているだろうし、分かっているだろう。

 【パーカー】の武装は強力だ、特に≪人工異能力獣(キメラ)≫と≪人造異能力人間(ミラージュ)≫には気を付けてくれ。

 過去の武力抗争でも、大きく被害を出した2つだ。

 海外では、こいつらに落とされた都市だってある。

 しかも半自動式だ、【パーカー】の誰かが操っている。操ってる奴をヤっても、自動で襲ってくる。残念なことに同士討ちは起こらないから期待すんなよ。


 一応言っておくぞ、≪人工異能力獣≫は純粋な身体強化系、それに毒物系が多い。

 ≪人造異能力人間≫は主に子供の姿をして<破壊>の異能力を使かってくる。<崩壊>の劣化版とは言え、強力なのは間違いない。


 つまりだ、てめぇらが負傷をするのは確定事項って訳だ。


 たが恐れる事はない!


 その為に、アタシ等4番隊がここに居る。

 てめぇら! 特に最前線になる1番に3番隊、よーく聴いておけ!


 今回の作戦で、てめぇらが【パーカー】の攻撃で死ぬ事は、即死以外でありえねぇ。

 即死はしねぇだろう? 今までなんのために訓練してんだ、今日居るメンバーなら、そんなダセェ真似はしないはずだ。


 だったら死なねぇ、後遺症だって残さねぇ。


 致命傷だろうが、猛毒だろうが、欠損しようが何だろうが、アタシら4番隊が全部治してやる。


 その為の4番隊だ!

 

 アタシ等4番隊が、何故『死神』なのかを教えてやろう。アタシ等が居る限り、敵の攻撃で死ぬことは許さねぇ! どうせ死ぬならアタシ等が殺してやる!


 今までもそしてこれからも。

 作戦中、敵の攻撃による死人はゼロのままだ!


 どんな傷だって、死ぬ気で治してやるから、死ぬまで死ぬんじゃねぇ。

 

 てめぇらは死なねぇ。

 アタシ等、4番隊が死なせねぇ。


 ここに居る全員の首には、『死神(4番隊)』の鎌が掛かってる!

 他の、どうでも良い死神に浮気すんじゃねぇぞ。


 何度でも言うぞ。

 てめぇらは死なねぇ、死なせねぇ 。


 これがアタシ等4番隊の戦いだ。

 てめぇらはてめぇらの戦いをしろ!


 アタシ等は優しくねぇぞ!

 立ち止まるんなら、蹴飛ばしてでも進ませてやる!


 てめぇらが守るのは自分の命なんかじゃねぇ!

 アタシ等異能力軍は誰の前に立っているのか考えろ!


 大事なもんを、他人(クズ共)に奪わせるな!!」



 演説に満足した華夜は、壇上から降りようと背を向ける。

 が、直ぐに元の位置に戻り、マイクを握り直す。



「最後に、アタシ個人から言っておく。

 アタシは勝手に死ぬ奴が大っ嫌いだ、だからアタシの許可無しで死ぬ奴は許さない。


 そんな奴は、アタシがブッ殺してやる!

 アタシに殺されたくなければ、死ぬ気で生きろ!


 四ツ橋 奏に代わって、宮村 華夜。

 4番隊の演説は終了する。」



 中指を立てて、今度こそ壇上から去っていく華夜。




 実は演説中、彼女の無線に連絡があったのだ。

 曰く、四ツ橋 奏が捕まったとのこと。


 7番隊隊員の1人が趣味で設置した、対大型獣用のトラバサミに脚を噛まれていた所を保護されていた。

 無事ではないが、華夜の異能力であれば治して支援責任者の仕事を全うさせられる。

 多少の時間は掛かるが、四ツ橋 奏の異能力でも治せるレベルだろう。逃げられる前に捕まえなければいけない。


 作戦前に隊長を捕獲する仕事が入った華夜は、舌打ちをして、隊長を殴りに向かった。




 尚、この物騒で荒々しい4番隊(宮村 華夜)の演説は、かなり好評だったらしい


 












 割りと設定は細かく決めてたりします。


 いつか連載にしてみたい(夢)


 1〜9までのシリーズです、良ければ覗いてやって下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 連載読みたいです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ