印加王 二首
其一
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蠻軍寡數伐王邦
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君若鏖之八表雄
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造化何令西賊克
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六千盡破散如風
【詩形】
七言絶句、平起式
【押韻】
上平3江(邦)と1東(雄、風)の通韻。
【訓読】
蛮軍 寡数 王邦を伐つ
君 若し之を鏖にせば 八表に雄たりしを
造化は何ぞ西賊をして克たしめたる
六千尽く破れて 散ること風の如し
【訳】
夷狄の軍が少数でインカ王の国を討った。
インカ王がもし彼らを皆殺しにすれば天下に覇者となったであろうに。
創造主はなぜスペインの賊徒に勝利を与えたのか。
六千人の王兵はことごとく風のように討ち取られたのである。
其二
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自長良郷過萬年
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攸遺壯麗足驚天
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東夷忽起掠其富
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痕跡猶新傷未痊
【詩形】
七言絶句、仄起式
【押韻】
下平1先(年、天、痊)
【訓読】
自ら良郷に長じて万年を過ぐ
遺す攸の壮麗 天を驚かすに足る
東夷忽ち起こりて其の富を掠む
痕跡猶ほ新たなれば傷は未だ痊えず
【訳】
気づいたらよい土地に育ち、一万年の時を過ごした。
その中で彼らが残したものの偉大さは、天を驚かすほど。
突如東の夷狄がやってきてその富を奪い去った。
傷跡はまだ新しく、いまだ癒えそうにない。