93話 覚悟
校舎の中に入ると、人の姿はなかった。
「誰もいないね」
「さっきの爆発で逃げたんだろ」
「爆発の原因はなんだろうね」」
「さぁな。でも、爆発してくれたおかげで逃げることが出来たわけだし、神様にでも感謝するか」
目の前には壁が崩れた教室が見える。教室の中にはプロパンガスのボンベが大量に置いてある。その中の数本が破裂している。原因はこれが爆発したんだな。
「イザベラを探そう。きっと校舎のどこかにいるはずだ」
「なんでそんなこと言い切れるの?」
「……わかんないけど、中庭にいなかったから」
「そんな理由?」
「とりあえず、探すぞ」
校舎の教室を1つ1つしらみつぶしに探していく。1階の方の教室は使われていないみたいだ。どの部屋も、空っぽだった。ってことは2階に上がれば武装した子供達もいるかもしれないってことだ。さすがに子供を殺すのには抵抗があるな……とはいっても、軽症で済ませることも俺の射撃技術では難しい。なるべく戦闘は避けよう。
「なるべく戦闘は避けよう」
「なるべくね」
2階に上がると、話し声が聞こえてきた。
「おい!これからどうするんだよ!」
「わかんないよ!もう戦うの嫌だよ!」
「そうだな。逃げよう!」
高学年くらいの男の子と、女の子が角から飛び出してきてばったり出会った。
「う……うわぁああ」
男の子が手に持っていた拳銃をこっちに向けてきた。それと同時に中村が男の子の顔面を思いっきり蹴った。そのまま男の子は壁に叩きつけられた。手に持っていた拳銃は床に転がった。女の子の方は男の子が蹴り飛ばされた光景を見てその場で小銃を持って座り込んでしまった。
「この子みたいになりたくなかったら大人しく銃を渡してね」
女の子は無言で首を縦に振りまくって、小銃を中村に渡した。女の子は小銃を中村に渡すと、男の子の方に駆け寄った。
「拳銃は一が持ってて」
「あぁ……容赦ねぇな」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ。相手は子供だけど、全力で殺しに来るんだよ。そんな奴らに手加減できるわかないじゃない!あんたも覚悟を決めて!」
覚悟っていきなり言われても……。
そんなことを考えている間に武装した子供たちが廊下の奥の方から出てきた。
「おい!あいつ等逃げだしてるぞ!」
「なんで逃げ出してるんだよ!」
「殺せ!」
遠くから銃を構えて撃ってきた。ただ、俺と同じで射撃の腕はよくないのか手前の天井や窓に当たっている。だが、数撃てば当たる理論で、そのうち当たるだろう。中村が小銃を構えて子供たちの方に向かって撃った。
散弾銃を持っていた子供の肩を撃ち抜いた。
「うわあ!撃ってきた!」
「い……痛いよぉ!」
武装した子供たちはパニック状態になっている。今のうちに反対側から行くか。
「反対側から行くか」
「そうだね。すごいパニック状態になってるね。きっと反撃を受けたことがあまりないんだろうね」
大阪でやられた人たちも、反撃す間もなく壊滅したらしいからそんな風に襲撃ばかりしていたんだろう。だから、あんな反応何だろう。武装した子供たちに背を向けて進むが肩を撃たれた子供を手当てしている。
「残念だけど、撃たれたあの子、ちゃんと治療できないと死ぬよ」
「マジで言ってるのか?」
「マジ。でも、先に撃ってきたのは向こうの方。撃たれる覚悟がないのに撃ってくる方が悪いんだから。ここは昔の日本とは違うんだからね」
正論だ。
教室をしらみつぶしで調べていくが、1階と違って布団が敷いてあったりして生活感はあるが人の姿は見えない。みんなどこに行ってるんだろうか?
「いたぞ!」
後ろの方から子供の声が聞こえた。それと同時に付近の壁に銃弾が着弾した。慌てて俺とイザベラは近くの教室に身を隠す。教室の中には誰もいない。だが生活感はたっぷりとある。ソファーに、テレビまで置いてある。その横にはゲーム機が置いてある。
「ソファーの裏にでも隠れようか」
中村と一緒にソファーの裏に隠れる。それと同時に子供たちが教室に入ってきた。
「どこかに隠れてるはずだ!探せ!」
中村がソファーから身を乗り出して子供たちに向けて小銃を数発撃った。子供たちの小さな悲鳴と共に教室の中は静まり返った。恐る恐るソファーから子供たちの方を見ると、床に血を流しながら子供が4人ほど倒れていた。2人ほどは息があるみたいだが、残る2人ほどは頭を撃ち抜かれて即死状態だ。マジでやるしかないのか。
「早くいくよ!ほかの子供が来るかもしれないよ!」
「あ……あぁ」
中村についていく。教室をくまなく調べていくが、2階の教室にはいないようだ。残るは3階だけだ。……というか子供を尋問した方が早そうな気がする。
「誰か子供を捕まえて尋問した方が早くないか?」
「それもそうだね。生きて捕まえることが出来れば聴いてみようか」
3階に上がると、さっそく子供が2人トイレから奇襲をかけてくるかのように現れた。ただ、銃を持っていなくて包丁と木製バットで襲ってきた。
「ちょうどいいところに来たね」
中村がナイフを持った男の子の顔面に小銃をフルスイングした。相変わらず容赦ねぇな。もう一人の方はおびえてる。あ、よく見ると、漏らしてる。こいつに聞くか。おびえてる今なら何でも情報を話してくれそうだ。
「ねぇ。ボク」
「は……はい」
「金髪の人がここに連れてこられなかった?」
「3階の多目的教室で鈴村の弟と一緒にいるよ!だから……」
「わかったよ。さっさとにげな」
情報を教えてくれた男の子は階段を降りて行った。それについていくように顔面に小銃のフルスイングを食らった男の子も泣きながら階段を降りて行った。
「それにしても、思ったよりも子供の数が少ないように思うんだが」
「そうだね。思っていたよりも少ないね」
「みんな逃げだしたんじゃない?」
「そうだと……良いんだけど」
そのまま進むと、廊下の真ん中にツインテールの女の子が立っていた。