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88話 ロケットランチャー

 大きな爆発音と共に筋肉モリモリなゾンビが倒れた。あれで倒せればいいんだけどなぁ。


「どうやったらアイツを倒せるんだよ」

「結構銃弾叩き込んでたぞ。あれでもダメなのか」

「ごめんなさい。頭を狙おうとしたけど難しかったの」

「仕方ないよ。初めて撃ったんだろ。結構効いてみたいだしもう少しだ」

「どこかに重火器とかないんですか?」

「いや……これ以上の火器は……一番奥の門のところにロケットランチャーが置いてなかったか?」

「……それはこの前使ったって言ってなかったか?」

「結局使わなかったって聞いたぞ」

「行ってみるしかないだろ」

「人が増えてきた。歩いた方がいいかもしれないぞ」

「そうですね」


 車を見にの真ん中で停車させて、全員降りる。

 車に乗っていた全員が車から降りて歩き始めた。少し歩くと、逃げた人たちが集まっている場所にまでたどり着いた。一人の女の人がこっちに駆け寄ってきた。


「あの怪物は倒せたんですか?」

「いや……それなりのダメージは与えたはずなんですが……倒すまでにはいきませんでした」

「それじゃあなんでこっちに逃げてきてんのよ!あの怪物がこっちに来てるってことでしょ!」

「この先にもっと強力な武器があるはずなんです。それを取りに行くところなんです」

「はず!?なかったらどうすんのよ!あんたたちはここで命に代えても守りなさいよ!」


 イザベラが文句を言っている女性に小銃を押し付けた。


「そんなに戦いたいならあなたが戦えばいいじゃないですか」


 文句を言っていた女性は顔を真っ赤にして小銃をイザベラに返した。そのまま群衆の中へと消えていった。何だったんだ?


「このまま歩くとしたらかなりの距離ありますよ」

「大丈夫です。自分たちが乗っていた車があるはずです」

「急ぎましょう。みんな逃げてるから追いつかれるのには時間がかかるはず。今度は私たちが時間を稼ぎます」

「わかった。今度は俺たちが取ってこよう。もう一人ついてくれば十分だ」


 話している男性と目が合った。……あっ、これは俺が選ばれるパターンだ。


「大隅さんだっけ?ついてきてくれないか?」

「……わかちました」


 車のカギをイザベラから受け取ると、近くに停めてあった車のカギを開ける。運転席に乗ってエンジンをかけると、助手席に先ほどの男性が乗ってきた。やっぱり二人で行くのか。


「初めまして。中島なかしまって言います」

「大隅です。よろしくお願いします」

「装甲車が止まっていたところよりもさらに奥に行ったところに壁がある。この前聴いた話だと。無反動砲……ロケットランチャーって言った方がいいのか?それがあるって話を聴いたんだ。まだ、使ってはいないはず」

「はずって……」

「いちいち武器の在庫確認なんてしてないよ……もうすぐで壁が見えてくるはずだ」


 目の前に大きな壁が見えてきた。車を壁の前で停める。壁……というより廃車を積み上げただけだな。それでも。隙間になりそうなところはすべてコンクリートで固めて誰も通れないようにはなっている。これじゃあこっちからも出れないな。


「壁の手前に置いてあるプレハブ小屋が武器保管庫だ」


 壁の手前に置いてあるプレハブ小屋が置いてあって中が見れないように段ボールで目張りがされている。一緒に来た男性が扉を開けようとするが鍵がかかっていて開かない。そりゃ鍵くらいかかっているよな。


「どうして最初にこっちの方を進めなかったんですか?」

「あるかどうか確信が持てなかったんだ。でも、あとはこれにかけるしかなくなったわけなんだが」

「そうでしたか。それで鍵は?」


 中島さんが小銃の銃床でドアノブを叩き壊した。

 プレハブ小屋の扉が開いた。プレハブ小屋の中は棚が置いてあるが銃は特に置いてある様子がない。いや、プレハブ小屋の隅の方に筒状の大きなものが置いてある。あれがロケットランチャーってやつか?


「あったぞ」


 中島さんが持ち上げると、確かにアメリカの映画とかで見たことがあるやつだ。あれで戦車とかを吹き飛ばすのをよく見た。……映画の中で。


「急いで持っていくぞ」

「撃ち方わかるんですか?」

「何となく」

「マジっすか」


 急いで車に乗り込むと、イザベラのもとへと向かう。イザベラがいるであろう場所に近づくと、こっちの方に逃げている人たちが多くいる。もしかして筋肉モリモリなゾンビが来てるのか。少しだけ進むとマズルフラッシュと銃声が聞こえてきた。


「急げ!」

「急いでます」


 車を止めると、すぐに降りる。後部座席に置いた散弾銃を取り出してイザベラ達が戦っているところへと向かう。中島さんはロケットランチャーを担いでいる。でも、動いている相手に当てることできるのか?中島さんがいきなりロケットランチャーを構えて撃とうとする。


「ちょっと待って!動いてる相手に当てれるんですか!?それに手前にはまだ戦ってくれている人たちがいるんですよ!」

「そんなことはあとで考えればいいだろ」


 この人はまともだと思ってた俺がバカだった。ここで外せばあいつを止めるすべが完全に無くなる。そうなれば全員殺される。中島さんに散弾銃の銃口を向ける。


「撃つのをやめてください。じゃないと撃ちますよ」

「……わかった。やめる。でも、何か策はあるのか?」


 この先に車があれば前みたいに挟んで動きを封じればうまくいくはずだ。


「前にもあいつと遭遇して倒したんです。その時に使った方法を使いましょう」

「その方法は?」

「車2台であいつを挟んで動きが止まった時点でロケットランチャーを撃ちこんでください」

「……1台は俺たちが乗っていた車があります。もう一台は装甲車を使いましょう」

「それなら声をかけてこい。俺は撃つ準備をして待ってる。あまり遅いと勝手に撃つからな」


 なんかこの人嫌いだ。

 とりあえず戦っている人に声をかける。


「あいつを倒すために動きを止める人必要があるんです。手伝ってください!」

「わかった!何をすればいい!?」

「車2台であいつを挟みます。俺は乗ってきた車で突撃します。あなたは装甲車でお願いします」

「わかった!」


 すぐに車のところに行って運転席に乗り込んでエンジンをかける。目の前には筋肉モリモリなゾンビの手前で戦っている人たちが見える。イザベラも銃を撃ちながらも、筋肉モリモリなゾンビが投げてくるゾンビや物を避けている。というか、積極的に注目を浴びるようにしているようだ。

 筋肉モリモリなゾンビの後ろでヘッドライトが光った。あの人、ちゃんと装甲車までたどり着いたみたいだ。ヘッドライトが光ったと同時に筋肉モリモリなゾンビが振り返った。それと同時にエンジンをかけて一気に筋肉モリモリなゾンビの方に向かって車を加速させる。筋肉モリモリなゾンビが今度はこっちを向いた。装甲車が筋肉モリモリなゾンビに衝突した。少しよろけたものの倒れるまでにはいかなかった。今度は俺の番だ。アクセルを踏み込んで筋肉モリモリなゾンビの足元に突っ込む。エアバックが開いた。車内が真っ白になった。


「いってー」


 早く車から降りないとロケットランチャーを叩き込まれる。

 車から降りようとすると、筋肉モリモリなゾンビが装甲車を持ち上げ始めた。マジかよ。一体何トンあると思ってんだ。とりあえず車から降りないと。車から降りると、筋肉モリモリなゾンビが装甲車をひっくり返した。そしてこっちを向いた。


「やばっ」


 車から降りるときに一緒に持って出た散弾銃を撃つが、胸の鉄板にはじかれた。あぁ……終わった。

 筋肉モリモリなゾンビが右手を振り上げて振り下ろした。反射的に目を強く閉じた。


 ……あれ?痛くない?そっと目を開けると、イザベラが筋肉モリモリなゾンビの拳を両手で受け止めている。


「早く装甲車の中人を助けてあげて!こいつは私が止める!」

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