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8話 突然の出来事

 すでに駐車場にはSUVと、自作装甲車の軽自動車が並んで止まっている。すでに、SUVには昨日部屋に来ていた4人が乗っていた。


「遅いぞ」

「まだ5分前」


 軽自動車に乗り込んでエンジンをかけると、明らかに排気音が違う。マフラーが変わってる。しかも、吹け上がり良すぎ。一体どんな改造したんだ?


「それじゃあ、行くよ」


 ゆっくりと発進したSUVについて行く。前のSUVは普通の体格のゾンビなら跳ね飛ばしてもビクともしない。それに比べ、俺の自作装甲車は小柄なゾンビを跳ね飛ばすので精一杯だ。


「海、綺麗だね」

「そうだな。本来ならもうそろそろで海開きのはず」

「水着持ってないよ」

「いや、無理だろ」


 しばらく走ると、少しい小さな住宅街に入った。流石に住宅街に入ると、ゾンビの数が増えてきた。だが、都市部とは違ってこれ以上ゾンビが増えることもないだろう。


「あ、右に曲がったよ」

「もうすぐ到着するのか?」


 交差点を曲がって海沿いを進むと、遠くの道端に観光バス会社の看板が見えた。その下には中型のバスが止まっている。目的地に到着か。見た感じゾンビの数も、対処できるほどの数だ。

 観光バス会社の敷地に車を停めて周囲を見渡す。事務所らしきところに2体か。銃を使わずに鈍器を使ったほうが良さそうだ。銃の発砲音でゾンビが寄って来るかもしれない。


「俺と、堅田さんで事務所付近のゾンビを倒します」

「チッ……なんで俺が」


 堅田さんが悪態をついているが気にしない。

 車から、金属バットとバールを取り出すと、ゆっくりとゾンビに忍び寄って頭に向かってバールを振り下ろす。


「慣れてるねぇ」

「堅田さんこそ」


 周囲にゾンビがいないことを確認して、事務所の扉に手をかける。


「気をつけろよ。いきなり飛び出してくるかもしれない」


 馬場さんが後ろで助言をしてくれた。……でも、見てるだけじゃなくて援護ぐらいして欲しいもんだ。

扉を開けると、事務所の奥のほうで首をつっている死体があった。自殺した死体はそこまで珍しくない。一ヶ月前の東京じゃ、一体何人の人がビルから飛び降りたことか。川にも、死体が……思い出すのは止めよう。


「鍵どこかな?」

「この死体くっさ!」

「首を吊って死んだら糞尿垂れ流しになるらしいからな」

「へー」


 事務所内を手分けをして探していると、小さな金庫を見つけた。金庫の鍵は開いており、中には、車の鍵が入っていた。それぞれにはプレートがつけられていて、番号が書いてあった。バスの鍵だろう。全部で4本あった。外の駐車場に停めてあるバスの数と一緒だ。


「それでは、山崎さんとイザベラさんはSUVと、軽自動車の運転をお願いします」


 イザベラと山崎さん以外の4人にバスの鍵が渡された。バスなんて運転したこと無いからな。大丈夫かな?


「なぁ、勝手に進めているけどいつからお前がリーダーになったんだ?」

「堅田さん。こんなときに何を言ってるんですか?」

「口だけで自分は何もしないでよぉ……」


 良く見ると、堅田さんの手には拳銃が握られている。これは、撃つかもしれない。


「いい加減にしてください!今は……」


 パァン


馬場さんがその場で力を失うように倒れて、頭からは血が流れ出ている。


「いやああああ!」

「うるせぇ!騒ぐんじゃねぇ!」


 堅田が銃をこっちに向けてくる。下手に銃を取り出そうとすれば撃たれるかもしれない。まさか、こんなことになるんなんて思ってもいなかった。


「このっ!」

「待て!イザベラ!」


パァン


 イザベラが拳銃を堅田に向けたまま固まっている。しばらくすると、腹部から血が滲み出してその場に倒れた。


「てめぇ!イザベラに!」

「おっと、動くなよ。少しでも、妙な真似をすれば撃ち殺すぞ」


 ゆっくりと堅田が近寄ってくる。


「大丈夫だ。お前は殺さない。後で、ゆっくりと楽しませてもらうからな」


 残りの、山崎と中村は……ダメだ。恐怖でその場に座り込んでいる。イザベラの方は……辛うじて息はしている。まだ、治療すれば助かるかもしれない。


「どこみてんだ?」


 気が付いたときには、堅田の拳が視界いっぱいに広がっていた。次の瞬間、視界が歪んだ。しかも、鼻の奥がツーンとする。鼻血もとまらねぇ。


「銃は預かっておくぞ」


 気が付くと、腕を後ろで縛られて身動きが取れない。まだ、鼻の奥がツーンとする。事務所の広いところでは、中村さんが犯されている。その横には、山崎さんが力なく横たわっている。首には絞められた跡がある。イザベラは……事務所の端のほうで血溜りを作って倒れている。……あれはもう駄目だ。ごめんよ。イザベラの父さん。約束守れなかったよ。


「起きたか。もったいねぇな。もう少し早く起きれば混ぜてやったのによ」

「……糞野郎が」

「こんな時代だ。何をしようが罪には問われないんだ。好きなことしようぜ」


 完全に中村さんは抵抗することを諦めている。抵抗すれば殺されるからな。


「そんなことより、お前の彼女さんは死んだようだけど良いのか?」

「……正直言うと、お前を殺したい」

「……生意気言いやがって」


 堅田が拳銃をこっちに向けてきた。こいつのキレる基準が分からん。でも、こいつを殺したところでイザベラは生き返らない。どうすればいいんだよ。


「なんだ?窓に人影?」


 堅田が窓に向かって拳銃を構えている。あれは絶対にゾンビだ。これだけ銃声を響かせたんだ。ゾンビが集まってくるのも無理は無いな。


「こっちには武器もいっぱいあるんだ。ゾンビなんて怖くないぜ」

「やめろ!余計に集まってくるぞ!」

「黙れ!俺に指図するんじゃねぇ!」


 堅田が再び拳銃をこっちに向けてきた。


パンパン


 ……あれ?痛くない?もしかして痛すぎて分からないとか?堅田を見ると、胸のところが赤く染まり始めている。誰が堅田を……。


「大丈夫!?」


 声のした方向を見ると、服が血で真っ赤になっているイザベラが拳銃を構えて立っていた。

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