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74話 関西国際空港

 関空に向かう橋を走る。


「一応、空港内は監視されてると思ってくれ。2週間前ほどに大規模な窃盗団が空港に置いてあるタンクローリーを盗もうとして銃撃戦になったんだ。それ以来、こんな感じだ」

「窃盗団?」

「周辺地域の避難所で重要な物資が盗まれる被害が多発してるんだ。どれも、同一な集団がやってるんだ」

「なんで同じってわかったんですか?」

「その窃盗団はな、全員子供なんだ」

「子供!?」

「まぁ、驚くのも無理はないわな。しかも全員武装しているんだ。一体何があったらあんな風に育つんだよ」


 そんなことを話している間に空港に着いた。


「俺らが行くのは第2ターミナルの方だ。そっちの方に汚物を貯めているタンクが置いてある」


 空港の駐車場には大量の自衛隊の車両が置いてある。戦車や、装甲車が大量に置いてある。よくもまぁ、ここまで集めたもんだ。一つの基地にある量じゃないだろ。よく見ると、対空兵器っぽいものまである。必要か?


「すごいだろ。これだけ集めるのに2週間だぞ」

「2週間で集めたんですか!?」

「米軍基地とかからも集めたからな。まぁ、ここまでいるかどうかはわからないが、海外の方では手に負えなくなって隣国に攻め込んでる国もあるらしい。そんなことする暇があるなら自分のところのゾンビを始末すればいいのにな」


 あぁ、静岡で遭遇した韓国軍か。それにしても、アメリカ軍を見かけないのが疑問だ。結構日本には駐留しているはずなのに見当たらない。しかも、この武器がアメリカ軍のものだとしたらアメリカ軍の兵士はどうした?


「アメリカ兵はいないんですか?」

「あぁ、ゾンビの騒動が起きたとたんに輸送機で逃げたよ。残された人たちはどうなったかは知らないけど。さ、ついたぞ」


 空港の目の前に大きな給水タンクらしきものが見える。その中に汚水が入ってるのか?


「あの中に糞がたまってる。さっさと汲み取れるだけ汲み取るぞ。俺がタンクに上るからホースを渡してくれ」


 大原さんがバキュームカーから降りると、タンクに備え付けてある梯子で上に上った。


「ホースをくれ」


 バキュームカーからホースを伸ばすと、タンク上の大原さんに渡す。そして、レバーを操作して吸引を開始する。


「タンクの容量に注意してくれ。満タンになったら止めていいからな」

「はい」


 タンクの容量を見ていると、空港の建物から数人の重火器を持った男たちが出てきた。こっちを一瞬見ると、目の前に止めてあった車に乗り込んでどこかに行ってしまった。


「タンクの容量大丈夫か?」

「やべっ!」


 吸引を止める。危なかった。


「ホースを受け取ってくれ」


 大原さんからホースを受け取って片づける。


「あのまま吸引してたらどうなるんですか?」

「溢れ出すか、最悪逆流だな。さ、畑まで運ぶぞ。大隅、運転してくれ。疲れた」

「わかりました」


 運転席に乗り込んでバキュームカーを発進させる。前に運転したトラックと同じ車種だから操作方法は大丈夫だな。来た道を戻る。戻っている途中で自衛隊車両がたくさん止まっている駐車場にさっき汲み取り作業中に建物から出てきた男たちがいた。何をしているんだろうか?


「あいつ等が気になるのか?」

「はい。なにしてるんですか?」

「一応、武器や弾薬のチェックをしているはずだ。まぁ、確認してどうなるんだって話だけどな。少なくなったところでもう生産してる工場もないんだ。確認する意味なんてないだろ」

「はぁ……」


 アメリカとかなら弾薬とかに困ることはないんだろうなぁ。いや、それどころか、ゾンビも駆逐されてるんじゃないか?

 そんなことを話していると、橋に着いた。こっち側には検問所はないのか。検問所を通り過ぎるときに検問所にいる男が手を振っていた。軽くクラクションを鳴らして反応しておく。


「道はわかるよな」

「自分の家に行くようにすればいいんですよね。そうだ。銭湯にはもう行ったと思うが、そのさらに奥に農場があるんだ。ほかのところにもあるが、今日はそっちに運ぶ予定になっている」

「これから運ぶところは何作ってるんですかね?」

「今が旬のトマトや、キュウリ、ナスだ」


 どれも最近食べてないな。最近食べたのは缶詰のヤツだったかな?


「生で食うトマトはうまいぞ。話をつけて1個食べれるようにしてやろうか?」

「まじっすか?」

「知り合いがいるんだ」


 車を走らせていると、テントの外でぐったりしている人がいっぱいいるのに気が付いた。そりゃそうか、車内はエアコンが聞いて涼しいかもしれないが、テントや、車内は直射日光でかなりの温度になっているはずだ。


「喉乾いたか?」

「はい。さすがに涼しい車内とはいえ、乾きました」


 大原さんがダッシュボードの物入を開けると、お茶の缶が出てきた。大原さんが栓を開けて渡してくれた。一口飲むと、車内置いてあったからか、かなり生ぬるい。


「ぬるいっすね」

「まぁ、冷たいのより常温の方が体にいらしいからな。ちょうどいいんじゃないか?」

「こんな暑い日には冷たい飲み物を飲みたいっすよ」


 しばらく走ると、昨日行った銭湯の前を通った。銭湯横の屋台には相変わらず人だかりができている。あ、横を通り過ぎたときに良い臭いがエアコンから臭ってきた。


「腹減ってきたな」

「そうですね。でも、この後に野菜を食べれるんですよね」

「そうだ。腹いっぱいとはいかないけどな」


 銭湯のテントを超えると、プレハブ小屋が並んでいた。プレハブ小屋の中が一瞬見えたが、農作業に使うような道具が大量に保管してある。ってことは、この先が畑か。


 プレハブ小屋を超えると、畑が並んでいた。大原さんが言うように夏野菜が中心的に育てられている。生い茂る緑の中には収穫作業をしている人たちが見える。この中に、イザベラと、中村がいるんだろうな。さて、お目当ての肥溜めはどこにあるんだろうか?あ、あった。


「あれですか?」

「そうだ。あれだ。まずは1個目だ」

「1個目?」

「全部で3個あるからな」

「そんな話聞いてないですよ」

「話してないから当たり前だ」


 バキュームカーから降りると、体中に熱風を浴びた。外ってこんなに暑かったのか。ホースを肥溜めのタンクの方へと引っ張っていく。肥溜めのそばに近寄ると、かなりのにおいだ。でも、容器の中の液体はかなり少なくなっている。ホースを肥溜めの中に突っ込むと、液体が流れ出てきた。


「いっぱいになる前に言えよ」

「はい」


 ホースから流れてきた液体もかなりのにおいだ。やべっ、眺めていると吐きそう。

 肥溜めの中がかなりいっぱいになってきた。そろそろ止めてもらうか。


「オッケーです」


 ホースの液体が止まった。これがあと2か所もあるのか。

 バキュームカーにホースをまとめると、助手席に乗り込んだ。あぁ、涼しい。カップホルダーにあるお茶を飲み干した。……すくないな。まぁ、飲めるだけでもありがたいのか。外を眺めていると、バキュームカーが止まった。


「次のところだ」

「はい。肥溜めはどこです?」

「あっちだ」


 バキュームカーから降りると、肥溜めのある方にホースを引っ張っていく。途中、農作業をしている人にあった。


「こんちわー」

「こんにちは。新入りかい?」

「はい。がんばらせてもらいます」

「がんばってね」


 ホースを肥溜めに突っ込むと、液体が流れてきた。液体を眺めていると、さっき飲んだお茶が込み上げてきた。


「うぇっ」


 危ない危ない。吐くとこだった。


「一じゃん。何してるの?」


 後ろから声が聞こえた。後ろを振り返ると、麦わら帽子をかぶったイザベラがいた。

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