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70話 阪神高速

「ようやく回復してきた。ここどこ?」

「甲賀市を越えてもうすぐで奈良県だ。今日中にはさすがにたどり着くだろ。……たどり着かないと燃料も足りなくなってきた」


 一体、たどり着くのにどれだけかかったんだろうか?弾の消費も激しかったし。大阪でもらえたりしないかな?


「これから先、何かあるってことはないですよね」

『大丈夫だ。これから先は俺たちが物資を集めに行くときに使う道ばかりだから通れるところと、通れないところは完全に把握してる。大体、パンクしたから時間がかかったのであってだな……。まぁ、無事にたどり着けるからよしとするか』


 無事ではないけどな。2人ほど帰らぬ人になったけど。中村が地図を広げ始めた。



「良いお知らせだよ。奈良はすぐに抜けるっぽいよ。そのあとにすぐ大阪に入るみたい」

「そういえば入口ってどこにあるんだろうか?」


 高田さんが運転するトレーラーが高速道路へと向かい始めた。高速道路に乗ると、名古屋周辺みたいに封鎖された高速道路になっていた。だが名古屋周辺と違って、ゾンビの数がかなり多い。こんなところでパンクでもしたら終わるな。しばらく走ると、目の前に大きな鉄の壁が現れた。よく見ると、いろいろな大きさの鉄板が溶接されている。


『今、開けるために周辺のゾンビを掃除する』


 鉄板の一部が開いて中から銃身が出てきた。そのまま壁にまとわりついているゾンビに向かって射撃を始めた。手際よくゾンビを倒していくと、鉄板の壁の一部がトレーラーが通れそうな大きさだけ開いた。


『早く通れ。後ろからほかのゾンビが来てるんだ』

『大隅、早く通れ』

「了解」


 大きな鉄板の壁を超えると、裏には廃車が大量に積み上げられている。これなら相当数のゾンビが押し寄せても大丈夫だろ。少し進むと、また大きな壁が出てきた。よくもまぁ、こんなに資材があったもんだ。そのまま進むと、戦車や装甲車が並んでいる。


「あの戦車って使えるの?」

『使えるぞ。まぁ、使ったことなんて数回だけだ。次の門が最後だ』


 今度はフェンスの壁が出てきた。これが最後か。フェンスの向こう側にはテントやプレハブ小屋が第一走行車線と路肩に所狭しと並んでいる。でも、第二、第三走行車線には全くテントと、プレハブが建っていない。ちゃんと車が通る部分は確保されてるみたいだ。


 フェンスの向こう側を見ていると、フェンスが開いた。


『この先のプレハブ小屋で検査を受けてもらう』


 またこのパターンか。少し進むと、前を走る高田さんが運転するトレーラーが止まった。それに続いて止まると、すぐ横の事務所型のプレハブ小屋から数人の男が出てきた。しかも武装している。


「おい!降りろ!」


 武装している男のうちの一人がトレーラーのドアを銃で殴ってきた。トレーラーから降りると、プレハブ小屋へと歩いていく。後ろを振り返ると、フェンスを監視していた人もこっちに向かって銃口を向けている。そこまで厳重にしなくても……。

 プレハブ小屋の中に入ると、数人の男たちと女性が散弾銃を持って立っていた。


「男はこっちにこい。女は向こうで検査する」


 散弾銃を向けられながらカーテンで仕切られた場所へと行く。


「全部脱げ」

「はいはい」


 散弾銃を向けられながら服を脱ぐのは何かやだな。全身をくまなく見られた。まぁ、噛まれた後なんてないから心配する人用なんてないんだけどな。

 検査が終わると、散弾銃の銃口がようやく下がった。


「もう行ってもいいぞ。連れの女はもう検査が終わって外で高田さんと一緒にいる」

「そうですか。ありがとうございました」


 プレハブから出ると、トレーラーは止めたままの状態で放置されていた。


「それじゃあ、トレーラーを運ぶぞ」


 もう一度トレーラーに乗り込むと、エンジンをかける。あれ?燃料メーターのメモリが少し増えてる。誰か検査している間にでも給油してくれたのかな?

 トレーラーをゆっくりと発進させる。


「かなり人がいっぱいいるね」


 第一走行車線を見ると、かなりの人が生活しているのがわかる。テントや、車が密集している。その中では人々が生活をしているのが見てもわかる。中には木材を組み立てたような小屋までたっている。そして、ところどころに仮設トイレがまとめて設置してある。


『ここを曲がるぞ。内輪差に気をつけろよ。ちなみにこのまままっすぐ行くと、関西国際空港だ。空港は燃料とか飛行機が置いてある。あと、重火器関係の資材置き場だな。今回運んでるのは発電用の燃料だから別の場所になる』


 しばらく走ると、インターの分岐地点が出てきた。インターの分岐地点はプレハブ小屋やテントが建っていない。ちゃんと車両が通れるようになってるんだな。左に曲がろうとすると、テントの影から急にボールが転がってきた。


「うわっ!」


 ブレーキをおもっきち踏み込むと、それと同時に小学校低学年くらいの男の子が飛び出してきた。男の子はびっくりした顔でこっちを見ながら立ち止まった。トレーラーが止まると、男の子の姿がフロント部分で隠れて見えなくなった。……ヤバい。

 慌てて運転席から降りてトレーラーの正面に周ると男の子が腰を抜かして座っている。よかった。怪我はないみたいだ。


「すいません!」


 母親らしき人物が駆け寄ってきた。そのまま男の子の手を引いて去っていった。ボールはいいのか?まぁ……いいや。トレーラーに戻ると、中村が無線でしゃべっていた。


「あ、戻ってきたよ」

『それじゃあ、出発するぞ』


 再びトレーラーを運転する。インターチェンジには誰も住んではいないっぽいな。インターチェンジを抜けると再び第一走行車線にテントやプレハブが並んでいる。ただ、さっきの場所と違って屋台らしきものも見える。


「あ、お好み焼きだって。あっちにはたこ焼きだって」

『トレーラーを置いた後に食べにこいよ』

「でもお金を持ってないよ」

『金なんて要らねぇよ』

「え?本当!?」

『小麦粉は腐るほど余ってるからな。野菜の方は豊中市付近で育ててるからな。まぁ、大量に収穫できるわけではないけど、必要十分は取れてるからな』


 高速道路でどうやって育ててるんだろうか?一度見てみたいもんだ。土はどうしたんだろうか?


『もうすぐ環状線だ。窓開けてみろ。音が聞こえるぞ』


 高田さんの言う通り窓を開けてみると、タイヤのスキール音や、エンジン音が聞こえてくる。それに第一走行車線に置いてあるプレハブやテントが消えて、組み立て式のガレージが増えてきた。シャッターがところどころ開いているが中には自動車部品やタイヤが詰まっている。


『ついたぞ』


 前を走る、高田さんのトレーラーが止まった。横に止めると、目の前にサーキットが現れた。

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